2013.05.31
ドワンゴを辞めた高校生エンジニア・山中勇成氏は、なぜ最年少未踏スーパークリエータに選ばれたのか。

ドワンゴを辞めた高校生エンジニア・山中勇成氏は、なぜ最年少未踏スーパークリエータに選ばれたのか。

高校1年生でドワンゴにスカウトされ、エンジニアとして1年半活躍した山中勇成さんが次の挑戦の場に選んだのは国の未踏人材事業だった。彼はいかにして採択を勝ち取り、最年少のスーパークリエータに選ばれたのか。そして大学生になった彼の、今後の展望とは―。

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▼最年少未踏スーパークリエータ・山中勇成氏の取材レポート第1弾
高校生でドワンゴのエンジニアに!?山中勇成氏の人生を変えた、14歳でのプログラミングとの出会い。  から読む

17歳で個人開発・企業エンジニアを経て未踏に挑戦する男。

中学2年生の時に見たテレビドラマ「ブラッディ・マンデイ」の主人公に憧れたのをきっかけにプログラミングを学びはじめ、数々のWEBサービスを開発してきた山中勇成さん。

ニコニコ動画を運営するドワンゴで1年半エンジニアとして活躍した後に選んだ舞台は、国の未踏プロジェクトだった。

無事に「リアルタイムな生放送検索技術の開発」というプロジェクトでの採用が決まり研究開発に没頭した山中さん。

弱冠17歳という若さで史上最年少スーパークリエータとなった彼は、未踏プロジェクトでどんなことを成し遂げ、そこから何を学んだのか。

自分が好きな分野の課題を見つけてテーマにする。

― 未踏プロジェクトに応募するきっかけは?


自分の実績になるようなものをイチから作ってみたかった時期でしたし、自ら企画書を出して、選考を通過すれば補助金が出てやりたいことができるということで応募を決めました。


― 「リアルタイムな生放送検索技術の開発」というテーマでの採用ですが、どうしてこのテーマを設定されたんですか?


自分でWEBサービスを作ったり、ドワンゴに入ったり、受託で開発した経験を通して、やっぱり自分が好きな分野の研究と開発がしたいという思いが強まったんです。

そこで、「インターネット」と「生放送」という切り口から、自分が課題だと思ってる点を解決するテーマを設定しました。いまって、どんな人でも簡単に生放送の発信者になれる時代で、多くの人がその放送を楽しんでいます。

僕自身も生放送の発信・受信どちらも楽しんできたのですが、ネットの生放送って、テレビやラジオのように番組表がきちんとあって放送されてるものがすべてじゃないんですね。



ニコニコ生放送だと、多い時には6,000番組くらいが同じ時間にリアルタイム配信されています。ただ、視聴者はいまどんな生放送が行われているのか、きちんと知る術がなかったんです。

現状ではタイトルやタグの検索、もしくはレコメンドなどを使って視聴者に番組を見つけてもらう仕組みになっています。

でも実は、生放送ってタグが付けにくいんです。例えば“爆笑”というタグのついた生放送を視聴し始めたとしても、“爆笑”する場面はもう終わっているかもしれない。リアルタイムで変化する生放送というコンテンツを、アーカイブされた録画放送と同じ検索軸で探すのは非常に難しい。

そうしたタイムラグをなくし、視聴者が生放送の内容をリアルタイムに検索できるようなサービスを作ってみたいと思い、「リアルタイムな生放送検索技術の開発」というテーマで研究開発を行ないました。

研究開発に右往左往しながら見つけた、問題をもっとも解決できるサービス。

未踏の成果物として出したのは《ソムリエちゃん》というサービスです。まずニコニコ動画のAPIを活用して、放映されている生放送の情報をすべて取得しています。

ニコニコ生放送に代表されるライブストリーミングの特徴の一つにリアルタイムに反映される視聴者のコメントがありますよね。《ソムリエちゃん》は生放送されている番組のコメントをリアルタイムで取得し、ユーザー自身がアルゴリズムを書くことで、ランキングが作成されるWEBサービスです。

例えば『player_increment * comment_match_count(かわいい)』で検索すると、“かわいい”とコメントされているほど上位にランキングされます。



― 研究した成果をすんなりサービス開発に落とし込めたんですか?


いえ、全く(笑)未踏プロジェクトは、1週間・1ヵ月とプロジェクトマネージャーの先生に細かい進捗と見込みを報告しながら進めていくのですが、スムーズに進んだとは言えません。

音声認識技術を使った、放送者の発言による検索の実用可能性を探ったり、ユーザーの嗜好にあった検索サジェストのようなサービスなど、5~6個のプロトタイピングも行ないました。でも思った検索結果を得ることができなかったんです。実は、《ソムリエちゃん》を開発すると決めたのは発表1か月前。ユーザーにとって最も精度の高い検索結果を得られるのが大量のリアルタイムコメントの取得と、瞬時に検索をかける技術を使ったサービスだと分かった時点から駆け足で開発しました。

未踏を通じて分かった自分のやりたいこと。

― 未踏プロジェクトを通じて、学べた点は?


未踏という名の通り、これまでになかった技術の研究、もしくはあってもサービスに活用されなかった技術を使って開発できたのは素晴らしい経験でした。

実は《ソムリエちゃん》に使った技術の中には、これまでの個人で開発したサービスで実装経験があるものだったり、ドワンゴでの経験がすごく活かせたものがたくさんあるんです。これまでの経験をフルに活かす場にもできましたし、何より自分の大好きなインターネットと生放送の分野で新しい技術を研究し、それを使って一つ新しいサービス開発できた。

やっぱり自分がやりたいと心から思ってるものはやり遂げられるんだと改めて実感できましたね。



― 今後どんなことをやっていく予定ですか?


何なんでしょう…。こうやってお話しすると常に何かやってきたように聞こえるかもしれませんが、僕、だらけるときは徹底的にだらけきって、やりたいことが見つかるまで何もしないんですよ。 その分やりたいことが見つかったら、すぐに取りかかるんですが…。

以前、「とりあえず起業しとくか…!」と思い立って、企業名を決めて、ハンコまで用意したことがあるんです。でも、届ける前に熱が冷めてしまってうやむやになりました(笑)将来どうなるかはわかりませんが、いろんな形で自分の可能性を探ってみたいですね。

あーそうそう、やってみたいのと思ってるのはいま通っているSFC(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)のサーバーを一度乗っ取ることくらい(笑)これまで、やりたいことをやってきたら楽しいことに巡りあえてきたので、自分が好きなインターネットと生放送にはずっと関わっていたいですね。


― 今後の活躍も楽しみにしています。ありがとうございました!


(おわり)


編集 = 松尾彰大


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