コネクトフリーへのインタビュー後編。「これからはIoTの領域にフォーカスしていく」と語るのはt.freeの開発者として知られるテイト氏とエバンジェリストの篠原氏。「IoTの本質はグラスやウォッチではない」と語る彼らの真意とは?
▼コネクトフリー株式会社 クリストファー・テイト氏へのインタビュー第一弾
常に『HACK FIRST』の精神を|t.free開発者、クリストファー・テイトのキャリア
― コネクトフリーは今夏、East Venturesから資金調達を実施した際、「モノのインターネット通信チップ開発を目指す」とアナウンスされました。まずはどうして、IoT(Internet of Things)の領域に進出されようと思ったのか、その背景を伺えますか?
テイト:
コネクトフリーとして数々のプロジェクトに参加してきたのですが、その中でも莫大な数のセンサーを使って、効率よくエネルギーを使ったり、相互にコミュニケーションできる実験的な取り組みをしてきたんですね。
前述したように、僕のバックグラウンドには「コミュニケーション」というキーワードがあるので、「モノ同士が相互に会話」というテーマは比較的自然な流れで、IoTにフォーカスしていくようになったんです。
篠原:
そこで、様々なメーカーにヒアリングしてみたんです。僕たちもわからないことだらけだし、どんなニーズがあるんだろうかと。すると、メーカーからは完成形であるプロダクトではなく、汎用性のある部品「通信チップ」が強く求められたんです。そしてより深く調べてみると、将来的に莫大な規模にまで成長予測できる市場があるとわかって。
もちろんいま話題のウォッチやグラスなどの多くはアメリカから来ていますが、それがヒットするかは今の段階で分からない。そもそもIoTのポテンシャルはそういったものにとどまらないんです。
まだ未成熟で先の読めない市場の中で、唯一確かなものはInternet of Thingsの文脈の中では眼鏡だろうが時計だろうが何だろうが、その通信を担う部品は必ずあるということ。繋がるための部品が必ず必要なわけです。その部品=チップを我々は提供していこうというところに、まずはフォーカスした形です。
― なるほど。とはいえ、ハードウェアに関わる部分までいくと、これまで通りに、とはいかなかったのでは?
テイト:
そうですね(笑)。普通だったらなかなか手がでないと思います。もう必死にハードのことを勉強しましたよ。単なるモジュールではなく広範な利用が可能なチップをプロトタイピングを重ねて開発していきました。
― ウェブとは異なり、モノになると「生産」というのも大きなポイントですよね。
篠原:
私たちも各国様々な生産拠点に交渉しに行ったんですが、確かな生産能力を持ち、最も感触が良かったのは台湾でした。プロダクトの概要やコネクトフリーのプロジェクトを伝えると、製造側も「ぜひ一緒にやろう!」とすごく盛り上がったんです。
テイト:
そして出会った人がどんどん重要な方々を紹介してくれるんですね。李登輝 元台湾総統にお会いした時には、我々のプロジェクトを待望しており、後押ししていただける事を確認しました。
この背景をお伝えすると、台湾はPCを中心とした製造で経済成長をしてきました。ところがスマートフォンがデジタルデバイスの主役となった近年は中国や韓国に押されている状況があります。また、台湾と日本は深い友好関係があるため、台湾も日本と組むことで新しい市場を取ろうと意気込んで、非常に手厚い協力体制をひいているんです。
― それはすごい。ということはコネクトフリーは部品メーカーということになるかと思います。開発するチップの思想を伺える範囲で教えてもらえますか?
篠原:
コネクトフリーが作っているチップは有機的に繋がった社会、つまりモノとモノが会話することを実現させるものです。
少し話がそれるかもしれませんが、いまメインストリームになっているクラウドムーブメントってある意味、「中央集権的」な仕組みなんですね。この問題点ていうのはあんまり真剣に考えられていないのではないかと思っているんです。
先ほどご提示したように、今後爆発的にネットに繋がるデバイスが増えてくるなかで、中央集権的なサーバーコントロールで果たして世界が回るのかという問題があります。そのリスクを誰が担保するのか、維持費を誰が負担するのか?
コネクトフリーのチップは、そういう安定性や課金、セキュリティを含めた問題をはらんでいるクラウドの仕組みではなく、端末同士が会話をして自律的に制御し、有機的な社会を築いていく。そんなメッシュ状の「インフラ」を作ることによって、新たな方向性を提示していこうというのが我々のアプローチです。
そんな未来を考えてみると、僕たちが部品メーカーにとどまらず、チップで実現できる未来やプロダクトを啓蒙することで、世界は一歩先に進めるのではないかと思っています。
そして強調したいことの一つが、「日本メーカーの復活」がそのきっかけになりうるということ。
日本には「この分野では世界一です」と言い切れる職人魂をもったメーカーが世界で一番多くあります。それがInternet of Thingsの有機的な社会の中でどう役立つのか。例えば災害の時にこうなる、こんなシチュエーションではこんな通信ができて…、など色んなアイディア出てくると思います。そういったアイデアをどんどん形にして、じゃあこういう製品を作っていきましょうっていうような、製品開発提案といった役割もコネクトフリーが担っていかなくてはならない使命の一つだと思っています。
― コネクトフリーのチップはいま認知されているのIoTという概念の枠を大きく変えてしまうのではないかとも思いました。今後の成長も楽しみにしています。ありがとうございました!
[取材・文] 松尾彰大
編集 = 松尾彰大
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