謎のフリークリエイターとして、Twitterで13万人ものフォロワーをもつ「@error403」。人気アカウントはいかにして成り立っているのか、氏の実践するTwitter活用術に迫った。
「@error403」というTwitterアカウントをご存知だろうか。リツイートしたくなるクスッと笑えるつぶやきや、思わずふぁぼって(favorite-お気に入り登録)しまうツイートを連日欠かさずポストしているアカウントなのだが、注目すべきはそのフォロワー数。個人アカウントとしては驚異的ともいえる「13万人以上」のフォロワーがついているのだ。
それだけの知名度ながら、WEB上での顔出しやプロフィールの公表は一切しないという謎の存在。分かっているのは、フリークリエイターであるということのみ。自身のWEBサイト上にイラストを掲載しているほか、ニュースWEBサイトでの4コマ漫画連載、「Quick Japan 101号」での漫画掲載、最近ではFacebookページを開設するなど、活動の幅を徐々に広げていっている。
error403氏はいかにして自身のTwitterアカウントを、フォロワー数13万人を超えるまでに育てていったのか。ご本人にお話を伺い、そのTwitter活用術に迫った。
― 今日はお忙しいところを取材させていただき、ありがとうございます。
いえいえ。ろくろを回しながらという形で恐縮ですが、しっかり答えたいと思います。
― はい…。ではどのようにして、13万人以上のフォロワーを得るまでにいたったんですか?
まず、Twitterを始めたのは2009年頃です。最初はアイコンも好きなギャグ漫画家さんのイラストでしたし、@error403というアカウント名も、特に考えてつけたわけではありません。
私が始めた当時のTwitterは、日本の全ユーザーのツイートをタイムラインで追えるくらいマイナーなものでしたから。フォロワー数が少なくても、利用しているだけで他のユーザーに知ってもらえる機会が多かったように思えます。
― Twitterに対する意識が変わってきたきっかけはありましたか?
意識と言えるのかはわかりませんが、アイコンを自分の描いたイラストにしてから、感触というか、心持ちが変わってきたように思えます。
アイコンを設定するようなサービスでは、知らず知らずのうちにアイコンに影響されて利用してしまうことが多々あると思うんです。それは、アイコンがそのサービスにおける自分の容姿であるからであって、サービス内ではそのイメージを介してでなければ何も発言できません。アイコンと現実の自分とでは必ず距離があります。実写アイコンで登録していても、笑顔の写真なら「あ、笑ってる人だ」という小さい印象が必ずつきますよね。そのアイコンと現実との距離感みたいなものが、"スーツで真顔のイラスト" をアイコンに使用することで、落ち着いたというか。自分らしくグッと構えることが出来るようになった気がします。
― Twitterの特徴をどのように捉えていらっしゃいますか?
TwitterはFacebookやmixiと違って、"アカウント"という言葉がかなり前に出てきている印象を受けます。有名人のアカウント、企業のアカウント、個人のアカウント。プログラミングで動作しているボットのアカウントもあります。かなり多種多様で、下手な問題を起こさない限りは現実世界のどの人間が使っているかは追求されないんです。その自由で気軽な雰囲気がTwitterの特徴なんだと思います。私はこの前、「豆腐」ってアカウントをフォローしましたよ。食卓に並ぶあの豆腐です。ツイートの内容も、それっぽい感じでとても面白い。
だからといって「このアカウントは個人」「このアカウントはキャラクター」と二分出来るほど単純なものではなくって。どのアカウントもふたつの間の、曖昧なものなんだと思います。私が「個人」と「キャラクター」の間で居心地の良いバランスを探した結果が @error403 なんだと思います。
芸人やアイドルを見ていると、「よりキャラクター性の強い個人」が求められているように感じることがあります。「リア充」「草食系男子」等の新語が出来るたびに、個人を無理矢理キャラクターに落とし込もうとする傾向があるようにも思えます。演じているのではなくて、自然体のままでキャラクター性が強い個人が、日本では目立つのかもしれませんね。私の場合、日本のそういうところが好きなのかもしれません。アイドルも大好きですし。
― Twitterをうまく活用するうえで、重要だと考えるルールを3つほどお聞かせください。
"楽しく"活用するルールなら、知っていますが。"うまく"活用するルールは正直よくわかりません。たしかに @error403 としてTwitterを利用するにあたっての決め事はいくつかありますが。読者の方々が参考に出来るものではないと思います。ちなみにTwitterを"楽しく"活用するルールは、うまく活用しようとしないことです。
― では、その決め事でいいのでお聞かせください。
1 . 『リプライをしない・フォロー返しをする』
まず基本的にリプライは返さないようにしています。プロフィールページを見た時に、なんとなくリプライが一切ないと気持ちが良いからです。
もしかすると、初めてerror403を知った人にとって、フォローしやすい理由になっているのかもわからないですね。それぐらいの距離感があったほうが良いんじゃないでしょうか。赤の他人どころか、人間かどうかもわからないものは無機質でわかりやすくないと、そばに置いておきたくないですよね。
あと、フォロー返しは出来るだけ欠かさずしています。たまに自分のタイムラインを見ると、何万人ものアカウントをフォローしているのでものすごく流れが早くて、渋谷のスクランブル交差点にいるような気分になります。それだけです。
2 . 『決まった時間にポストする』
基本的に深夜1時ごろに投稿するようにしています。Twitterの中には「何時ごろに投稿したほうが反響がある」とか分析をしている人がいますが。そういった戦略は特にありません。ただ「決まった時間に何かを発表する」ということに少し憧れがあって。例えば、大好きなテレビ番組があれば、日曜日が待ち遠しかったり、18時30分までソワソワしたりするじゃないですか。そういうのってすごく良いと思うんです。
3 . 『時事ネタ・下ネタはNG』
時事ネタとか、他の情報があって成り立つような投稿はしないようにしています。一週間後、一ヶ月後、一年後に見てもそれだけで成り立つようなものがいいと思います。下ネタや悪意のあるもので笑いをとるのも好きですし、たくさん思い付くのですが、そこで勝負はしないようにしています。
― ・・・。
すいません。ちょっと回転数が。
― いえ、大丈夫です。
粘土の水分もちょっと多かったですね。ちょっと休憩して乾燥させましょう。インタビュー中にろくろ回すのもどうかと思いますし。
― では最後に、「error403」さんにとってTwitterとはどんな存在ですか?
今まで、Twitterの他に、イラストや漫画、コラム等のお仕事をやらせてもらったことがありましたが、そのうち全く別の形態で作品を発表することがあるかもしれません。例えば突然ダンスに目覚めたり、ハーモニカを吹き始めたり。そういった時に、Twitterという場所は大きなステージになり得ると思います。これはものを作る人間にとってすごく恵まれたことなのかもしれません。
ステージは発表するものがあって初めて成り立つものなので、早く胸を張って発表出来るものをもっと作りたいですね。
一度、自分のイラストでステッカーを大量に作ったことがあって。配るあてもないので、Twitterで住所を晒して、手紙をくれた人にステッカーを送り返したことがあります。今思うと「なんて恐ろしい事をしたんだ」という感じですが。当時は一人で最高に盛り上がってました。その手紙の中に、大好きなミュージシャンの方からの手紙が混ざっていたんです。以来、その方とは親しくさせていただいて、アートワークを描かせてもらったりしました。
Twitterに限ったことではないんですが「思いもよらない、イレギュラーでリアルな出来事」が起こるのは面白いですよね。基本的に家の中にしかいないタイプの人間なので、まるで魔法のようです。他のSNSでは「既存の人間関係」をもとにしていることが多いので、Twitterならではなのかもしれません。
しかし、かといってイレギュラーな出会いを求めてTwitterばかりの生活になったり、フォロワー数やふぁぼられ数に固執したりしていても、非効率ですし、無意味だと思います。身も蓋もないかもしれませんが、Twitterに過剰な期待をしたり、無理して計画的な戦略を図ったりするのは良くないと思います。あくまで趣味の範囲に収めておきたいですね、Twitterも、陶芸も。
Twitterは、ものを作る人たちとの相性が良いサービスだと思います。例えばですが、他人のツイートに対して、その内容に沿った「挿絵」のようなものを描いているアカウントを見たことがあるのですが。そういうのも面白いですよね。何気なくポストしたツイートが、いきなりイラスト付きのものになって返ってくるんです。それで興味を持ってもらえたら、プロフィール欄のWEBページにアクセスしてもらえるかもしれませんよね。そこに本当に見せたい作品を置いておけば、ファンになってくれるかもしれない。Twitterというサービスに少し慣れるだけでこういうアイデアは浮かびそうですよね。小さな展示をこじんまりとしているよりは、ずっとワクワクしますよ。私だけかもしれませんが。
なので、Twitterで何かをしたいのであれば、無理せず期待せず、自然に湧き上がる承認欲求とかワクワクに身を任せることが大事なのだと思います。そのためには、まずTwitterに慣れることですよね。住所晒したり炎上したり黒歴史を重ねながらでも。
(おわり)
編集 = 松尾彰大
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