社内に実制作部隊を置かずにクリエイティブワークを手掛けているのが株式会社ロフトワークだ。自社のクリエイター登録サイト『loftwork.com』で適任人材を探し、プロジェクトにアサインしていると言う。では、どのような基準で人材を選ぶのか。そこには、[[DQ]]選ばれる[[DQ]]クリエイターの共通項があった。
正社員やフリーランスなどの雇用形態は関係なく、世の中には、評価されるクリエイターとそうではないクリエイターがいる。WEB制作のプロジェクトチームを結成するとなれば、"デキる"デザイナーやプログラマ、コーダーなどがアサインされるのは至極まっとうなことだ。
"デキる"クリエイターって、一体どんな人なんだろうか。技術力が高い人?アウトプットが凄い人?仕事のスピードが早い人?コミュニケーション能力が高い人?など、想像される答えも、きっと、人それぞれだろう。
そこで、今回お話を伺ったのは、株式会社ロフトワーク。日本最大級のポートフォリオサイト『loftwork.com』を運営し、クリエイティブワークを手掛けている会社だ。社内には「実制作部隊」であるクリエイターが1人もおらず、社員のほとんどがディレクターとして、プロジェクトマネジメントに専念している。
『loftwork.com』に登録している約1万7000人のクリエイターを中心にメンバーをアサインし、クライアントの課題を解決するクリエイティブワークを発揮しているのだ。
はたして、同社のディレクターは、大勢のクリエイターの中から、どのようにしてプロジェクトメンバーを決めているのだろうか。クリエイティブ部門のチーフディレクターである滝澤耕平さんに、"仕事がしたくなるクリエイター"とは、どんな人かを伺ってみた。
― ポートフォリオサイト『loftwork.com』は、クラウドソーシングサービスにすることもできたと思うのですが、課金化しなかったのでしょうか?
はい。その答えはとてもシンプルで、サイトの原点には、「クリエイティブを流通させたい」という想いがあるからなんです。クリエイターの方であれば分かると思うのですが、やっぱり都心部と地方都市とでは、仕事の量やチャンスが違います。しかし、インターネットの普及で、そんな場所の垣根なんて軽々と越えていけるようになった。日本全国でそして世界中でクリエイティブが自由に流通できるようになったんです。
だから紹介料や手数料などは一切いただきませんし、クリエイターがポートフォリオを登録する際に、検閲などもしていません。誰でも自由に自分のページを持って、作品をアピールできますし、登録者同士が活発にコミュニケーションを交わせるように、コメント送信機能も設けています。そして、企業が直接クリエイターに仕事を依頼することも許可しています。これらすべてが、クリエイティブ業界を活性化させたいという想いからやっていること。地域なんて関係ナシに、才能あるクリエイターが活躍できるようにしたかったのです。
― 社内に1人もクリエイターが居ないのも、クリエイティブを流通させることが理由なんですか?
そうですね。自社内で完結して、クリエイティブを高めても意味がないんです。あと、もう1つの理由でもあるのですが、クリエイティブのコストを"見える化"するというのもあります。
クリエイティブの仕事って、コストがどれだけ掛かっているのかが見えにくい仕事じゃないですか。特に社内にクリエイターを置いて仕事を進めていると、修正などが発生したときに、「これやっといて!」と簡単に頼めてしまう。また、社員全員で徹夜をすれば、何案でもデザインを作れてしまうかもしれない。しかし、それではプロジェクトの品質は上がらないと思うのです。
外部のクリエイターに仕事をお願いすることで、1案のデザインにつき費用は幾らかかる、修正回数が多いと追加料金になる、と、コストの意識が芽生えてくると思うのです。だからディレクターもコストを抑えるために、効率的に仕事を進めるようになるし、1回のコミュニケーションの質も自然と高くなる。より高いクリエイティブが生まれるんです。
― 沢山のクリエイターをプロジェクトにアサインしてこられて一緒に仕事をしたいと思うクリエイターとは、どんな人ですか?
"プロセス"をちゃんと説明してくれる人ですね。
例えば、デザイナーさんにデザインの仕事をお願いした時、複数案出していただけたり、付加価値を付けた提案をしてくださる人もいます。しかし、その付加価値が稀に、こちらの意図に反した過剰なものになっていることも少なくないと思うのです。
仮に、クライアントが「先進的なデザインがほしい」と言っていたとき、私たちディレクターは、まず、クライアントが意図する’先進的’という言葉の意味を探すことに取り組みます。言葉やビジュアルや参考サイトを使って、クライアントとのイメージをすり合わせるんですね。しかし、この過程に参加していなかった場合、デザイナーさんが’先進的’というイメージを、独自で解釈してしまうことが大いにあるんです。確かに、このデザインは’先進的’なんだけど、先方が意図しているものとは大きく異なる。どこで間違えちゃったのかなぁ、困ったなぁ、と。
― WEBデザインの世界では、結構よくあることですよね。
だからこそ、出来上がったデザインだけをプレゼンするのではなく、なぜ、そのデザインが生まれるに至ったかという、プロセスを説明することが大事になってくるのです。
最終的に出したデザインが仮にA案だとしても、そのデザインに行きつく過程の中には、A案になる前のα案も、まったく異なるB案もC案もある。それらをすべて一緒に見せてくれて、「B案やC案の方向性も探ったのですが、~~な理由でα案の方向性になって、結果A案になりました。」という思考のプロセスをしっかりと説明をされると、こちらも仕事がとてもしやすいですね。
仮にデザインの方向性が間違っていたとしても、そのデザイナーさんがB案とC案ではないという判断したポイントが分かれば、「B案の方向性でもう少し考えてみて!」と、こちらも指示がしやすくなる。その方が、お互いにとって仕事がしやすいと思うんです。
― なるほど。実際のところ、プロセスを説明できるクリエイターは多いのでしょうか?
いいえ。少ないというのが、私の実感値です。その理由を考えてみたのですが、やはりデザインの意図などを説明するのは、一定のコミュニケーションスキルが必要になります。
相手に対して的確に分かりやすく説明するためには、日々のトレーニングが欠かせない。しかし、デザイナーがディレクターへデザインの意図やプロセスなどを説明したことに関して、「この説明はもっとこうしたほうがいいですよ」と、ディレクター側からフィードバックすることなんてほとんどできていないのが残念ながら制作現場の現実だと思います。
もちろんディレクターもデザイナーに配慮して説明へのフィードバックを心がけるべきですが、同じようにデザイナーも日々の仕事をトレーニングと思って、積極的にプロセスを説明するようにしていかないと、スキルアップすることができないんだと思います。
― 案件を重ねていくこと、日々の努力が大事ということなんですね。
(つづく)
▼株式会社ロフトワーク 滝澤耕平氏へのインタビュー第2弾
クリエイティブの世界で、どう生き抜くのか。| ロフトワーク 滝澤氏が語るクリエイター処世術。
[取材・構成] 梁取義宣 [文]白井秀幸
編集 = CAREER HACK
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