『Lang-8』 CEO 喜洋洋さんへのインタビュー第2弾。ユーザーも順調に増える中、深刻な人手不足に陥った喜さんは、自分自身がゼロからWEB開発について学び、スキルを手に入れたという。自らのキャリアはもちろん、生き方・サービスへのスタンスさえ変える決断の末、彼が手に入れたものとは。
▼Lang-8 CEO 喜洋洋さんへのインタビュー第1弾
WEBのシロウトが生んだグローバルサービス|「Lang-8」創業者に学ぶDIYスピリット。[前編]
人間は臆病だ。
新しい道に進むとき、人は迷う。大きな決断を下すとき、人は怖がる。ある人はそこであきらめてしまうだろうし、ある人は少しの妥協をしてしまうだろう。現実にはよくある話だ。
しかし、勇気を持ってそれを乗り越えて、新しい道を拓く人もいる。それもまた現実。
「Lang-8(ランゲイト)」創業者である喜洋洋氏も、そんな決断をしたひとり。「Lang-8」というサービスを開発し、ユーザーも順調に増え、サイトの知名度も上がり…。順調な日々に訪れたのは深刻な人手不足という問題。
サービスの質を維持するためにはどうしたらいいのか?
自問自答するなかで彼が選んだ道は、自分自身がゼロからWEB開発について学び、スキルを手に入れようというもの。自らのキャリアはもちろん、生き方さえ変えるような決断。その結果、彼が手に入れたものとは何だろうか。
― 2010年からの2年間、毎日寝る間も惜しんでWEB開発について学んでいたとのことですが…。正直、しんどくなかったですか?
それはもちろん、体力的にはしんどいですよ。
サービスを立ち上げて間もない、多忙な時期ですし。収益の仕組みがきちんと確立しているような状態でもない。
そういったなかでモチベーションを維持できていたのは、やっぱり新しいものを生みだしたい!という気持ちが強かったし、ユーザーさんから好意的な反応がたくさん返ってきたからでしょうね。
― 逆に「自分でやろう」と決断したことで、良かったことはありますか?
気持ちの面で言うと、「人のせいや外部のせいにしてても何も変わらない」と認識できたことが一番大きいです。自分を変えることが唯一、道を切り開く術だと学べました。
また、具体的な仕事の進め方でいうと、“優先順位”が明確になりましたね。
なにはなくとも、まずはサービスを維持すること。そのために捨てるべきことは捨ててしまう。注力すべきところに全神経を集中させる。
そういった切り替えが、明確にスピーディーにできるようになったのは、自分で何でもできるようになろうと決断したおかげだと思っています。思わぬ副産物というか、技術以外で自身のレベルアップができた部分です。
― 苦しいぶん、手に入るものもあると。
たとえば、エンジニアを採用するにあたって何を重視するべきなのか。そういった人選の目も養われたと思います。これまでは、やはり自分の専門外の分野ということもあり、エンジニアに対して求める要件などがどこか明確ではない部分があったんです。
ただ、自分でサービスに触れるようになったり、ユーザーからのご要望にお応えするようになったり。そういった経験を重ねていくうちに、より良いサービスに成長させていくためには、どんなスキルや志を持った人材が必要なのか、だんだん分かるようになっていったと思います。
― “人を見る目”が養われたということでしょうか。
どんなサービスが求められているのかや、それを生みだすためにはどんな人が必要なのか。自然に見えてきたという感じですね。
自分自身がサービスの前線に立ち、ユーザーさんの声を聞いて、新しい要望を自分の手で実現していく。そうすると、人任せの状態ではなかなか気づけないことが見えてくるんですよね。サービスの責任者として視野が広がったというか。
― ただ、やはり専門外の分野にゼロから挑戦するというのは勇気のいることですよね。喜さんが一歩踏み出せた理由って何なのでしょう?
「Lang-8」を立ち上げた当初から、絶対にグローバルスタンダードなサービスにしたいと思い、周囲にもそう話していました。
それなのに、このぐらいのことであきらめてしまうなんて、あまりにも情けないじゃないですか。周りのせいにしたりするのもイヤでしたし、「今の自分にできること」を考えたら、自然にこの選択をしてました。
誰もいないなら、自分でやろう。前に一歩進むときに大切なことって、そんな実行力がすべてなんじゃないかと思います。
― そんな苦労も経て、今では世界219ヶ国にユーザーさんを持つサービスになっていますが…。ユーザーさんからはどんな反応が多いんでしょう。
どの国にいらっしゃる方からも、好意的な反応が多くて。
「こんなサービスを待ってた!」なんてTwitterでつぶやいてくれる方や、手紙をくださるユーザーさんもいます。オーストラリアのユーザーさんが日本に来たときに、手土産にワインを送ってくださったこともありました。
そういったユーザーさんの反応を見るたび、やっぱり心が動かされますし、あきらめずに続けて良かったと思います。一番の原動力は、ユーザーさんに対する責任感かもしれませんね。
2013年には、エンジニアとデザイナーも入社してくれ、新たなサービスを生みだす体制も整ってきました。あ、いまも絶賛iOSエンジニアを募集してます!
ローンチから6年経過して、スタートアップというには少々時間が経ってますが(笑)。ようやく、やりたかったことや実現したかったことに挑戦できる段階だと思ってます。これからが、本当のスタートアップかもしれませんね。
― あきらめずに、自分自身が実行者になること。それが、良い結果に繋がったのだと感じました。起業を志している方や、多くのスタートアップの企業にも示唆のあるお話をありがとうございました!
(おわり)
[取材] 松尾彰大 [文] 白濱久史
編集 = 松尾彰大
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