2014.01.09
WEBのシロウトが生んだグローバルサービス|「Lang-8」創業者に学ぶDIYスピリット。[前編]

WEBのシロウトが生んだグローバルサービス|「Lang-8」創業者に学ぶDIYスピリット。[前編]

219の国と地域で利用されている国産WEBサービス『Lang-8』 CEO 喜洋洋さんへのインタビュー第1弾。ローンチから6年の間に、乗り越えてきた困難の数々。そして、ユーザーから支持を集めるサービスを生みだすために必要なスタンスを探る。

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ユーザーから支持を集めるサービスが持つべきスタンスとは?

219の国と地域で利用されている国産WEBサービス。

そう聞いても、なかなか規模を想像するのは難しいかもしれない。では、こう言ってみたらどうか。

「このサービスの利用者がいないのは、全世界で3ヶ所だけ」。


lang-8_アクセスマップ

直近1ヶ月で、アクセスがないのは西サハラ・ギニアビサウ共和国・北朝鮮のみだという。(2013年12月時点)


どうだろう。このサービスに対する世界的な関心の高さを感じないだろうか。ローンチから6年の時間をかけて、正真正銘のグローバルサービスに成長した「Lang-8(ランゲイト)」。同社のCEOを務める喜洋洋さんにお話を伺った。

サービス誕生のきっかけ。乗り越えてきた困難。そして、ユーザーから支持を集めるサービスを生みだすために必要な、エンジニア・クリエイターが持つべきスタンスとはなんだろうか。

留学先で知った、語学の「相互添削」という学習法。

― まず、どうして「Lang-8」というサービスを思い付かれたのでしょう。


きっかけは大学時代の留学経験です。私は中国人の両親のもとに生まれたのですが、4歳で日本に移住したんです。そのため母国語は日本語で、中国語はほとんど話せなかったんですね。

けれど、やっぱり中国は自分のルーツじゃないですか。しっかり中国語を勉強し直したくて、上海へ留学することにしました。

そのとき勉強になるかなと思い、自分の書いた中国語の文章を中国人の友人に添削してもらってたんです。

代わりに、私はその友達が書いた日本語の文章を添削してあげて。彼も日本語を勉強している最中だったので、ちょうどギブ&テイクの関係になれたんですよね。


― そこから、相互添削というアイデアが浮かんだと。


WEBを介して相互添削をするということですね。「Language Exchange」というこの取り組み自体は珍しくなくて、語学を勉強している人同士では普通にやることなんです。

ただ、WEBを使ってこれを幅広く展開したらどうなるだろう?そう思ったのが開発のきっかけでしたね。

WEBのシロウト、WEBで起業を志す。

― ビジネスとして、WEBサービスにしてみようというきっかけは?


2007年ごろに、株式会社ドリコムの内藤社長の講演を拝見したんです。当時、ドリコムさんはじめ新興のWEBサービスが次々と生まれ、若手の起業家もたくさん登場していて。

その一人である内藤さんが「WEBの世界にはまだまだビジネスチャンスが眠っている」と仰っていたことがとても印象に残ったんです。

ただ私自身は、WEBサービスの仕組みもプログラミングも何も知らない。そこで大学4年生の夏にスキルのある友人に声をかけて、一緒にサービスを立ち上げたんです。


― てっきり、WEBに関して造詣が深い方だと思っていました。不安はなかったんですか?


いや、もう不安だらけです(笑)

そもそも社会に出たことのない学生で、当然ながらお金もない。アイデアはあるけど、カタチにする技術も持っていない。友人頼みになっている現状でしたからね。


喜洋洋さん


ユーザーは順調に増えたけれど…。

― そして、大学卒業と同じくらいのタイミングで「Lang-8」をローンチされたんですね。どのようにサービスを認知させていったんですか?


クチコミでユーザーを増やしていきました。日本語を学んでいる外国人向けのSNSや、海外にいる日本のアニメファンのサイトでサービスの告知をしたり。

それで、オープンした年のユーザー数は2千名くらい。翌年には1万。その後さらに加速していきました。

2009年には「WISH」というWEB関連のイベントでITmedia賞などもいただいて。メディアへの露出も増え、ユーザー獲得は順調でした。


― 滑り出しは上々だったんですね。


うーん。それが実はそうでもなくて。

最初の1年間はエンジニアがおらず、開発もアルバイトのスタッフまかせ。そのアルバイトさんもなかなか長続きせず、サイトの改善などに向けてもスピーディーに動けない。だましだまし、サービスを維持している状態でした。

その後の1年半の開発を担当してくれたエンジニアとは関係性が上手くいかず、2009年の年末に辞めることになり、実質、運営側は僕ひとりという状態になってしまったんです。

綱渡りのサイト運営。そこで手に入れたDIYのスピリット。

― すぐに限界が来てしまいそうですが…。


ええ。このままじゃいずれ破綻が来る。だったらいっそのこと、自分でプログラミングを学び、クライアントサイド・サーバーサイドについてもまかなえるようにしよう。そう思って、ゼロからRubyなどの勉強を始めたんです。

手当たり次第に専門書を読み漁って、人に聞いて、実際に試して…。サーバーまわりのことから、開発言語についても独学で学びました。最初はほんの小さなトラブルがサイトに起こっても目の前が真っ暗になるような状態でした(笑)。

それでも、とにかく自分が手を動かさなくてはサイトが止まってしまう。ユーザーの皆さんに迷惑はかけられない、その一心で。

一人になった最初の数ヶ月は不安で3時間以上寝られませんでした。


― 大胆な決断をされたんですね。どうしてそのような決断ができたかなど、もう少し詳しくお聞かせください。


(つづく)
▼Lang-8 CEO 喜洋洋さんへのインタビュー第2弾
WEBのシロウトが生んだグローバルサービス|「Lang-8」創業者に学ぶDIYスピリット。[後編]


[取材] 松尾彰大 [文] 白濱久史



編集 = 松尾彰大


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