2014.03.19
ユーザベースに学ぶプロフェッショナルの採用・評価指標[1]|超優秀人材でも、雇わない選択ができるワケ

ユーザベースに学ぶプロフェッショナルの採用・評価指標[1]|超優秀人材でも、雇わない選択ができるワケ

《SPEEDA》《NewsPicks》を手がけるユーザベース社はエンジニアだけでなく、アナリストやセールスデベロップメントなどの数多くのプロフェッショナルを抱えてる。「優秀だからといって即採用の判断をするわけではない」と語る同社COO稲垣氏に、事業を急成長させる採用・評価指標のあり方を伺った。

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特殊スキルを持つプロの評価が事業成長の鍵。

圧倒的に使いやすいUI、そして専属アナリストによる分析レポートで高い評価を得ている世界最大級のSaaS型ビジネス情報サービス《SPEEDA》。注目を集めるキュレーション型ニュースサービス領域で、経済情報に特化し存在感を高めるアプリ《NewsPicks》。これらサービスを自社開発しているのが、2008年に創業した ユーザベース社だ。

勢いにのるこのスタートアップは、他のいわゆる“WEB系スタートアップ”とはちょっと趣が異なる。在籍するメンバー約100人のうちエンジニア職は30名以上、アナリストなどを含む職種数は10以上にのぼるという。

代表取締役共同経営者である梅田優祐氏・新野良介氏と共に、創業メンバーとしてCOOの任に付いているのが、今回お話を伺った稲垣裕介氏。

アビームコンサルティング社テクノロジーインテグレーション事業部にて、大規模プロジェクトの立案・構築に携わった後、ユーザベース社を共同設立。SPEEDAの立ち上げを担当し、技術部門・人事関連部門の業務執行を統括している人物だ。

エンジニアだけでなく、アナリストやセールスデベロップメントなど、特殊スキルが求められるプロフェッショナルを抱えるユーザベース社は、いかなる基準でメンバーを集め、評価し、事業を急成長させているのだろうか。「優秀だからといって即採用の判断をするわけではない」と語る稲垣氏に話を伺った。

会社の《ミッション》と《バリュー》がメンバーのキャリアに合致するか

― 100名規模の企業でありながら、ユーザベースには専門スキルを持ったチームが数多くあると伺っています。さっそくですが、メンバーをどのように採用し、評価しているのでしょうか?


どんな職種の仲間でも、採用時に一番重要視しているのは、会社の《ミッション》と《バリュー》が本当に合うのかというところです。

稲垣裕介氏

ユーザベース社COO 稲垣裕介氏

嬉しい事に、すごく優秀で素晴らしい経歴の方も受けていただくんです。でもちょっと嫌な言い方になるかもしれませんが、その中で本当にミッションとバリューに合致して、一緒にやろうと思える人はとても少ないんですね。

ミッションとはユーザベースという会社の方向性。昨年の10月に「世界一の経済メディアを作る」と再定義したんです。

あらゆる経済情報を調べる際に、ユーザベースの何らかのプロダクトをアクセスするであったり、朝起きたらユーザベースのプロダクトにアクセスする習慣を創りだすとか。そんな世界を実現したいと。

ミッションが明確にある中、まずその人にとって、「ユーザベースに身を置くことが本当に幸せなのか?」、その人が「本質的に何がしたいのか?」という点を非常に重要視しています。

エンジニアの例で言えば、とにかくtoC向けのゲーム作りたいといっても、うちじゃないほうがいいよねって率直に言うんです。

経済という領域で、インフラになっていくプロダクトを作ることに共感してもらえるかというところは、何より大きなポイントかなと思います。

そしてバリューとは、会社の価値観である「7つのルール」(自由主義でいこう・創造性がなければ意味がない・ユーザーの理想から始める・スピードで驚かす・迷ったら挑戦する道を選ぶ・渦中の友を助ける・異能は才能)のこと。このルールに、心から共感してもらえるのかということです。

これらは僕らが頭を捻ってつくったものではなく、これまでの取り組みを改めて整理したもの。つまり僕たちが常に考えて実践してきたあるべき姿・考えの集大成みたいなものなんですね。だから業務の中でごく自然に「ユーザーにとって本当に理想かな?」とか「迷ったら挑戦でしょ!」という言葉が普通に出てくるんです(笑)。

全ては7つのルールに集約される

― 入社前からそこまで精査されるとなると、入社してからの活躍確度がかなり高そうですね。


それが正直、いくら確認しても実際はそんなにうまくいかなくてですね(笑)

いろんな想定外の事柄、ミスコミュニケーションがどうしても発生するんです。これはもう伝え続けるしかないのですが、「みんなわかっているけど起こる問題」ってあるんですね。「お互いの見えてる景色が違う」といいますか。


― その原因とは?


持っている情報の質と量の違い、現場とマネジメント側の立場の違いですね。

その情報量や状況の違いから、ミッションやバリューの方向性が同じであっても意思決定が異なり、意識のギャップが生まれて時には喧嘩も起こることがあります。

7つのルールのひとつに「異能は才能」とあるように、私は「違いがあること」自体はむしろいいことだと思います。問題は、その摩擦から逃げて放置することで、リスクが増加してしまうことです。

みんながいろんな視点で自由に対話することで、その人なりの視点や意識が明確に伝わってきます。視点を交差させると景色が広がり、イメージがつきやすくなると思うんですね。コミュニケーションから逃げては、事業も個人も成長はありえません。


― 評価というところで言うと、どのようなオペレーションで行なっているのでしょうか?


バリュー【Value】・エッジ【Edge】・エグゼキューション【Execution】という3つで整理して評価しています。

VEE

主に評価としてみているところがバリューです。各タイトル(アソシエイト~マネジメントディレクター、ボードメンバー)に応じて、7つのルールに対してどんな行動がとれるのかを定めています。

エッジとは、その人独自の際立った能力を評価することです。エンジニアなどの職だとわかりやすいですね。ユーザベースでは、ひたすらエッジを磨くキャリアをよしとしています。

その最たる例が、イノベーション担当 執行役員である竹内でしょうか。彼に求められているのは、技術一本。マネジメントは一切しなくていいというスタイルです。彼がR&D的に生み出すものが、イノベーションにつながるはずだという考えのもと実践されています。

そして最後に、エグゼキューション。「ひとつの業務領域を、PDCAを回しながら、いかに高速回転させ、自身の責任下でお客様に価値を提供できるのか。」いかにミッションを履行・達成したかという点です。

さらに複眼で見ることを重要視していて、360度評価も勘案しています。


― 360度評価は多くの企業で採用されていますが、名ばかりというか、それをどう評価に組み込むかの運用が難しいという話をよく聞きます。


ユーザベースでは質問事項をものすごく単純にしているんです。

質問項目はたった3つだけ。良い点と改善点、そして「その人のランクを自分で決めるとしたらどれですか」と。

周りくどいことをせず、直球で他者の評価を聞けることはすごく発見が多いです。

あ、あとエンジニアチームはすべてその結果を氏名付きで共有しています。普段の業務で言い合える仲なんだから、評価の時だけ恥ずかしがってもしょうがないでしょって(笑)。エンジニアは技術という、わかりやすい指標があるので、裏も表もないし、それ以上でも以下でもない。そういうところにも自由さというかオープンなコミュニケーションが根付いているのかもしれません。



後編はこちら
成長の臨界点を突破させる組織運営術|ユーザーベースの掲げる自由主義の裏側[2]

[取材] 梁取義宣 [文] 松尾彰大



編集 = 松尾彰大


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