《SPEEDA》・《NewsPicks》を手掛けるユーザベース社は、「自由主義でいこう」という企業指針のもと「働き方」の裁量を個人・チーム単位に委ねている。自由な働き方は、いかに成果に結びつき、事業にどんな影響をあたえるのか?COOを務める稲垣裕介氏に話を伺った。
▼ユーザベースCOO 稲垣裕介氏へのインタビュー第一弾
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世界最大級のSaaS型ビジネス情報サービス《SPEEDA》と経済情報に特化したニュースアプリ《NewsPicks》を手掛けるユーザベース社は、「7つのルール」という企業指針を明文化している。
その中でも特筆すべきルールが「自由主義でいこう(Think beyond the norm and take your own initiatives.)」というものだ。
このルールに基づき、ユーザベース社ではエンジニアを含む多くのプロフェッショナル職に、コアタイムなしのフレックス&在宅勤務制度を適用し、「働き方」の裁量を個人・チーム単位に委ねている。
様々な働き方が許容され始めている時代ではあるが、まだまだ一般的には、決まった時間に一箇所の場所に集まり、仕事をするのが大勢を占めているだろう。
ユーザベース社はいかなる考えで自由な働き方を実践し、成果に結びつけているのか?自由であることは、事業にどんな影響をあたえるのか?創業メンバーでありCOOを務める稲垣裕介氏に話を伺った。
― ユーザベースではかなり柔軟な働き方を許容しているそうですね。
「自由主義でいこう」という理念のもと、例えばエンジニアであれば、コアタイムなしのフレックス制度&在宅勤務OKとしています。
しかし、自由であるということは当然、個人個人に責任を要求します。その責任と密接に結びつく、会社から期待される役割や実績をしっかり共通認識としてメンバーそれぞれと握ること、つまりゴールセッティングが非常に大切です。
― 評価者と被評価者の間で期待値がズレ、「こんなに働いているのになぜ評価されないんだ」という不満を生む可能性もありますしね。
仰るとおりですね。
双方の認識を合わせるために、ユーザーベースではより具体的な目標を明文化しています。今期目標である“短期”、2-3年後の“中期”、5年以降の“長期”という3軸に加え、プライベートの夢もシートに書いてもらい共有しています。
例えば、「週3回は17時に帰宅して、妻と子どもにご飯を作りたい」という希望を書いてくれたエンジニアに対しては、MTGの時間やプロジェクトのアサインを配慮したりしています。
しかし、仕事の絶対量は変えません。そして評価は、結果で行ないます。つまり、結果を出すためのプロセスまで自ら考えてくれ、ということ。自由を与えることが、仕事に対するオーナーシップの醸成につながるんですね。
― 自由である対価として、徹底的に成果にこだわると。
たったひとつだけ配慮しなければいけないのが労働時間です。働く時間も場所も決まりがないので、労働時間はすべて申告に基づいて管理しています。
そこでメンバーみんなと約束したことは、“誰にとってもフェアであろう”ということ。規定の残業時間をオーバーしたり、休日深夜に働くと追加の残業代が発生しますよね。それに、労働時間が多ければ評価につながるということではありません。皆で稼いだ利益を分配するのですから、他メンバーに対して、その残業は必要だったのかという「必然性」と、他の社員と比べてムダに残業代を使っていないかという「公平性」をメンバー自らが判断するように意識してもらっています。
あと、自由さが軸になってると、気兼ねなく休めるんですよ。例えば子どもを幼稚園に送ってから出社したいとか、夜一度帰りたいとか、結婚記念日は休みたいとか。そういう報告とか確認がもうほんとに嫌なんです(笑)。そんな不毛な申請はないと思っていて、そんなの自分たちで自由に決めて、最後の成果だけはフェアに評価すれば十分だと。
だから、なにをもってフェアが保たれるのかの軸、前提だけを決めて、自ら考え個々人で最高のパフォーマンスを発揮することを目指しています。
― 具体的に、エンジニアはどんな働き方をされているのでしょうか?
運営自体はチーム単位で任せています。集中したいから今日一日は家でやりますとか、サーバー監視したいから夕方から出社しますとか。チームでシフト組んだりしていますね。
実はなんだかんだ、朝出社しているチームも多いんです。あるエンジニアチームは、毎朝まずラジオ体操してます(笑)。それからMTGで体調を天気に例えて報告して…「今日は雪です」とかよくわからないこと言ってますね。次にペアでタスクを割り振るんです。で、組んだペアで「家でやりたいね」となったら二人で行くんですよ。片方の家に。どんだけ仲良しなんだって(笑)。
いかに成果を出すかだけでなく、いかに楽しんでやるか。現場レベルで考えて動けているのが強いし、いいなと思いますね。
― 働き方が自由であることで生まれる弊害はありますか?
うーん。なんとなくスカイプで連絡とってしまうとかですね。それ続けるとやっぱりうまくコミュニケーションができないんです。実際に顔を合わせることの大切さを再認識しています。話し合うときは面と向かって話しあうと。
これだけ在宅勤務をOKにしてるんですけど、終日在宅勤務をするのはひとり週1回とかです。顔を合わせたほうが楽しいし、パワフルだってみんな実感してるんじゃないかな。
― 一般的な会社ではなかなかここまで自由にできませんよね。一方でエンジニアは、自由な環境で働いたほうが生産性が高いとよく言われています。どうすればここまでうまく回る仕組みができるんでしょうか?
まず、自由がない方が統率は間違いなくラクなんです。苦難もないし、あれやこれや考えなくていい。統率の選択肢は一つの答えだし、いいコトだらけ。
でも僕たちがなぜチャレンジするかというと、自由である方が楽しいし、経営側もメンバーも皆それを望んでいるからなんですね。自由であることを実践するための、魔法のタネなんてないんです。
そして、楽しいがゆえにイノベーションは生まれると信じているんです。企業の成長キャップが、経営者の能力なら高が知れていますよね。でも、経営者のキャップを軽く超えて外すのは、自由に楽しく、そして自らが考えて能力を存分に発揮するメンバーなんですよ。
正直、いまの自由な働き方をある程度確立するまで、本当にいろんな苦難がありました。でも途中で諦めたら「自由の敗北だ」って(笑)とにかく継続してきてやっと文化になりかけているんです。
ユーザベースは、SPEEDAとNewsPicksを一層進化させ、これら海外に打って出ていくフェーズ。一気にアクセルを踏むために、これからも「自由主義でいこう」を体現し、会社もメンバーも成果とともに成長し続けていきたいですね。
(おわり)
[取材] 梁取義宣 [文] 松尾彰大
編集 = 松尾彰大
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