2015.04.06
Q.オウンドメディアの成功事例に共通項はある?→「あります」@はてな

Q.オウンドメディアの成功事例に共通項はある?→「あります」@はてな

はてなで開催されたオウンドメディアマーケティングセミナーをレポート!オウンドメディアでさまざまなチャレンジに取り組むライフネットジャーナルオンライン、デサント、サイボウズ式の現場担当者のセッションとパネルディスカッションの様子をお届けします。成果を残したオウンドメディアの共通項とは!?

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オウンドメディアを成功させるために。

2015年3月26日、企業向けオウンドメディア構築プラン『はてなブログMedia(http://hatenablog.com/guide/media)』を提供するはてなの東京オフィスで『オウンドメディアの成果をどう測る?現場担当者が語るオウンドメディアマーケティングセミナー powered by はてなブログ』と銘打ったイベントが開催されました。登壇したのは、オウンドメディア運営を通じ、さまざまなチャレンジに取り組んでいる3名。彼らに学ぶ、オウンドメディアを成功させるためのポイントとは?各自のプレゼン、パネルディスカッションのなかからピックアップしてご紹介します。


【登壇者紹介】
ライフネット生命保険株式会社 マーケティング部長
ライフネットジャーナル オンライン(http://media.lifenet-seimei.co.jp/
岩田慎一 Shinichi IWATA

株式会社デサント SP部WEB推進課
株式会社デサント 公式サイト(http://www.descente.co.jp/
加勇田雄介 Yusuke KAYUDA

サイボウズ株式会社 コーポレートブランディング部
サイボウズ式(http://cybozushiki.cybozu.co.jp/) 編集長
藤村能光 Yoshimitsu FUJIMURA

【モデレーター紹介】
ジャーナリスト/法政大学准教授
藤代裕之 Hiroyuki FUJISHIRO

出口会長と岩瀬社長は、究極のコンテンツ?

まず登壇されたのが、ライフネットジャーナル オンラインの岩田さん。「なぜライフネット生命がオウンドメディアを?」というところからお話は始まりました。

じゃ、まずはなぜオウンドメディアをやるべきだったのか、というところからお話しさせてください。2008年5月に開業して、2009年くらいからデイリーポータルさんの「ハトが選んだ保険に入る」という、コンテンツマーケティングの走りみたいなところを行ないまして、これがすごく好評でした。

当時はTwitterやFacebookが今ほど普及している時代ではなく、ネットのリアクションはブログで感想を書くとか、はてブでコメントを寄せていただくやり方がメインでした。当社は開業以来なるべく少ないマーケティングコストでいかに認知度を高めていくかということに苦労していたので、こういう文脈で当社を知っていただくことの効果を実感しました。実際、4年、5年経って「ハトが選んだ~」のコンテンツをきっかけに申し込みましたというお客さまもいらしたほどで。以降、ユーザーの方に楽しみながら社名を知っていただくきっかけを提供する場としてコンテンツマーケティングを行なってきました。

なぜ2014年にオウンドメディアを?という話なんですが、スタートしたきっかけの一つが【アセットの活用】ですね。当社は出口、岩瀬の二人が開業前からブログを書いて、TwitterやFacebookをやっていたんです。“経営者が書き手である”という事実は我々にとって武器であり、究極のコンテンツだと思ったので、もっともっと活用しないともったいないな、と思って立ち上げました。

ライフネット生命保険 岩田氏

ライフネット生命保険 岩田氏

6ヶ月やってみての累計ですが、PVは47万、UUは15万くらいですね。平均の滞在時間は月によって変動しますが、2分10秒くらいです。ありがたいことに、ちゃんと読んでいただいているということが見受けられるかと思います。数の大小は比較できないんですけど、これは焦らずコツコツとやっていけたらな、と。

今後についてですが、当然継続していきます。保険はそもそも検討期間の長い商材ですので、長い期間でPDCAを回していく必要があるな、と。これからも読者のみなさまに有益な情報を提供していきたいと思います。

いいコンテンツをつくり続けたら、社長を味方にできた。

加勇田さんのパートをはさんで登壇したのが、サイボウズの藤村さん。編集長を務めるオウンドメディア・サイボウズ式は、月間平均PV15万、平均UU10万を誇っているそうです。では、どのようにして今日のような成果を残してきたのでしょうか?編集方針について語られた部分をご紹介します。

サイボウズ式のタグラインは、“「新しい価値を生み出すチーム」のための、コラボレーションとITの情報サイト”です。特徴としては、ソーシャルで記事が拡散していくことかな、と思います。僕らは一切広告を使っていません。編集部員がゼロから企画を立てて、広めて、というところを徹底していて、ようやくメディアらしくなってきたかな、と思っています。

編集方針は「製品を売り込まない」、「競合情報も(おもしろければ)OK」、「サイボウズ批判もOK」の3つ。つまり、サイボウズの企業姿勢を見せるというところが価値なんです。目的は、「サイボウズを知らない人にサイボウズを知ってもらう」。これだけです。サイボウズという会社を知ってもらわないと、製品導入を検討する土俵にも立てないので。

効果指標についてですが、ブランド認知とか、サイボウズを知ってもらうとかは、少なくともPVのようにWEB解析ツールで取得できる標準的な指標だけでは測定できない、と思っていました。また「成果指標としてのPV」を最初に決めると、メディアをスケールさせたり、継続させたり、っていうのができないと思ったので、もっともっと定性的な効果が見えないか、というところを意識しながらやってきたんですね。そこは社長の青野も寛容に受け止めてくれてるって感じですね。そもそもあまり数字にとらわれずに定性的なところをやっていこうという考え方があるから、オウンドメディアを運用できている部分も正直あると思います。

やっぱり自社メディアってしんどいですよね。この約3年間もがきながら続けてきてやっと成果が出てきたって感じなんですけど、辛抱強く継続できるかどうかっていうのは大事だと思います。

サイボウズ 藤村氏

サイボウズ 藤村氏

先日「サイボウズの青野社長が総務省のワーキンググループに参加して官僚を一喝した」というニュースがハフィントンポストで流れました。同席していたフローレンスの駒崎さんが理由を説明してくれた記事なんですが、肝心の青野が理由を語っていなかったので(笑)、サイボウズ式で私が取材して“官僚を一喝した本当の理由(http://cybozushiki.cybozu.co.jp/articles/m000893.html)”をインタビューしました。結構マジメな内容なんですが、Facebook:541、Twitter:69、はてブ:33(3/9時点)と結構広まったかな、という感覚でいます。

とにかく、いいコンテンツをつくり続けるということをシンプルにやってきました。すると大手メディアからの取材依頼や転載のお話があったり、「サイボウズ式とならおもしろいことができそう」とユルい感じで企画を持ち込んでいただいたりって機会も増えたんですよね。これは、一つの成果かな、と思っています。

また、最近は嬉しいことに社内からも「サイボウズ式で書いてほしい」という依頼が増えましたね。社長の青野から「サイボウズ式で取り上げてほしい」とか、副社長の山田から「久しぶりに書いてみたのでぜひ記事に」とか、社内から「何かやってみませんか」と声をかけてもらう機会が増えてきました。ブランディングってすぐに成果が見えないので、ともすれば部署自体がコストセンターと思われがちです。でも、徐々に仲間をつくっていって、会社全体で自社メディアを盛り上げていくという展開がやっと最近できたかな、って思うようになりました。

いかにしてオウンドメディアは社内を巻き込んでいくか。

最後に、モデレーターの藤代さんを交えた4名による対談の様子をお届けします。

藤代:
素晴らしい成功例でしたが、失敗のお話も教えてください。

モデレーター 藤代氏

モデレーター 藤代氏

岩田:
社内の反応という点ですが、コンテンツについては経営陣からもおもしろいねと声をかけてもらえるようになっています。ただ、マーケティング以外の部署からは何でやってるの?みたいな意見は出てるので、そこはコミュニケーションをとっていかなければいけないところかな、と。

当社の場合、出口と岩瀬がブログを書いていたこともあり、数値化しづらい定性的な効果への理解もあるんですよね。経営陣も理解しているからオウンドメディアを運営できているのかな、と。他の会社の方のお話と比べると、そこはポイントだと思います。

加勇田:
スポーツ用品メーカーなので、すごい体育会系だったんですね。“足で稼いでナンボ”みたいな。最初はほとんどの方が耳を傾けてくれなかったですね。

『PCスーツ』の展開の経緯をお話ししますと、こちら全部私がやりました。実はこの『PCスーツ』、ヨドバシカメラで展開させていただいています。それまでもブランドサイトで「コンプレッションウェア(ランナーが着用する黒いタイツ)はデスクワークでも使えます」ということは謳っていたんです。謳っていたんですけど、イチ消費者として見ると正直イメージつかないんですよね。ですから「JINS PCのようにIT企業も福利厚生として導入しています」という事実をつくる必要があった。その事実を武器にヨドバシカメラさんへ提案に行く、みたいなことをやりました。発端となったのがオウンドメディアです。ですから、オウンドメディアのKPIはすごくシンプルで、とにかくIT企業の人事担当者とヨドバシカメラさんの担当者、弊社のヨドバシカメラ担当営業の3人が読めばいいと思っていました。この3PVを取れれば、ヨドバシカメラやIT企業への取材、流通など、すべてが動くな、と。

まずオウンドメディアを活用して、IT企業に導入していただいて、ヨドバシカメラさんへの展開も担当営業に連絡先を聞いて…。幸いなことにヨドバシカメラの方がOKを出してくれたので、それで担当営業の方が味方についてくれて。そして一人ずつ味方を増やしていったという経緯があります。最初の一人に誰を味方につけるか、みたいのは大事だと思っていますね。特に事業会社の場合、営業の武器をどれだけつくれるか、みたいなところもあるので、私の場合は営業を味方につけようと。営業から営業部長、営業役員、マーケティングの役員…みたいな感じで味方を増やしていきました。

デサント 加勇田氏

デサント 加勇田氏

藤村:
オウンドメディアをやるにあたり、向いている会社と向いていない会社というのはあると思います。サイボウズの場合、数年間売上が横ばいだったので、これまでの製品マーケティングとは別の展開をしなければいけないという問題意識を社長の青野が持っていた、というのがあるかもしれませんね。

経営層とコミュニケーション戦略を握れているというのは重要です。なんとなく流行でやっちゃうと難しいんじゃないかな、と思いますね。なぜなら、オウンドメディアって最初は失敗の連続だからです。いきなり成果がでる施策ではないので。

でも、失敗を失敗と考えずにやり続けていくと、いつか花開くときがくるのもオウンドメディアの面白いところだと思います。短期で成果を求めるというよりも、長期的に資産を積み上げていくようなところになってくるので。アタリが出るところもまでがんばっていれば、社内からの見られ方も変わってくるんですよね。やっぱり、最初の失敗を失敗ととらえないということが重要なのかな、と思います。

藤代:
メディア運営だけではなく、社内外で汗をかいて味方を増やしていこうということですね。ところで、ネットの失敗といえば炎上だと思うのですが、オウンドメディア運営において炎上はどう対処していけばいいのでしょう?

加勇田:
私が『燃え尽きランナー』というキーワードを提案したときにやったのは、「こういうTweetされるかもしれません」みたいなことは経営陣に伝えていました。リスクを可視化して、起こった場合の対処法を経営陣と握っていたので、炎上がおきても最小限に食い止められたんじゃないかな、と思います。

藤村:
サイボウズは結構炎上しますね。社長が炎上体質なので(笑)。ただ、炎上をどのように定義するのかってところかなと思っています。

もちろん、読者を裏切ったり、釣ったり、欺いたり、そういったことをやったうえでの炎上は良くないです。でも、僕たちがコミュニケーションでやっていることって問題解決じゃなくて問題提起なんですよ。解決策は読み手に委ねます。提起した問題に対して賛否両論が起こっても、それは炎上ではないというか、真っ当なことだと思っているんですよね。僕たちはそういう議論が起きることは大歓迎ですし、そこから新しい企画とかに展開していけたらな、って思っています。

藤代:
社会に問題を提起して議論を起こしていくというのは本来報道機関がやってきたことなんです。でも、企業のオウンドメディアでもできるし、サイボウズ式の場合、サイボウズのサービスと結びついているというのはすごく意味のあることだと思いますね。


この後も熱のこもった議論は続きました。効果指標の測り方や企画の立て方、運用体制などは三者三様でしたが、共通しているのは経営層や社内がオウンドメディアを理解し、応援してくれる環境があるということではないでしょうか。「オウンドメディアを立ち上げたい」と思っている方や「オウンドメディアを運営しているけどうまくいかない」という方は、少し視野を広げて、自分の置かれている環境を変えていくというのも有効な手段だといえるのかもしれませんね。


編集 = 田中嘉人


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