2016.09.12
メタップス 佐藤航陽が予測する、AI・データノミクス時代の到来

メタップス 佐藤航陽が予測する、AI・データノミクス時代の到来

世界8拠点でスマートフォンアプリのマーケティング支援などデータを活用した事業を展開するメタップス。人工知能によるデータ分析や未来予測の領域で存在感を発揮するのが代表の佐藤航陽氏だ。「Data+Economics=DATANOMICS」データノミクス(情報経済)によって人間の役割はどう変化していく?

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データ分析の進化は、社会をどう変えていくのか

※Tech in Asia TOKYO 2016(2016年9月6日開催)で行われた佐藤航陽氏のトークセッションよりお届けします。

メタップスが強みとするのは、人工知能におけるデータ分析、ユーザー属性に適した「レコメンド」だ。代表である佐藤氏が指摘したのは、より大きなレコメンドの概念とその未来。「短期的な成果のみを追求したレコメンド」は必ずしも有効ではないという。

ユーザー自身が興味を持っているもの・コトだけレコメンドし続けても、予測できる範囲で飽きてしまう。それでは、どのような手で、適切な情報をユーザーに届けていけばいいのだろうか。

佐藤氏は、パーソナライズされたレコメンドに効果を発揮しなかった場合、マスメディアを活用していくのも手だという。それは大多数の人々に向けて発信ができ、「興味がなかったコト・モノ」に対し、興味喚起を促す効率的な手法だからだ。

そしてもうひとつ。「顕在化していないデータの可視化」について言及した。

たとえば、「意識」など今は顕在化していないデータが可視化できたら、飽きさせないレコメンドも可能かもしれません。ただ、現段階の技術で「意識」のデータを取ろうと思ったら、脳にチップでも埋め込まない限りできないのかもしれない。完全に脳波まで観測して収集して…といったところまでやる必要があると思っていて。いずれは可能になるかもしれませんが、現状だとデータが足りないため、潜在的な「意識」を集めることはできません。

いままで取得できなかったデータが可視化できれば、いままで見えてこなかった「相関」がわかるかもしれない。それはより効率的に社会を運営できるようになることだと佐藤氏は語る。

同時に「不完全なデータでの分析を信頼してしまうこと」に対して警鐘を鳴らす。

目の前にある不完全なデータだけでロジックを組んでいくと間違いが起きてしまう。つまり人工知能や機会学習そのものが世の中にデメリットを与えるのではなく、情報がないにも関わらず無理やりロジックを作り、それを実装してしまうことのほうが危険であり、デメリットが大きいということです。

たとえば、Webサービスにおいて多くの「過ち」が起こる原因をこう分析する。

ネットの自社サービスであれば、ほぼほぼ必要なデータは揃います。完全に自分が運営し、ルールまでコントロールできるのですから。ただ、クローリングなど、誰でも手に入れられるようなレベルのデータだけで答えを導き出そうとすると多くの場合は間違いが出てきてしまう。

外からでは見えない領域、あらゆるデータが取得した上での分析が欠かせないというわけだ。

データノミクス時代に求められる人材とは?

メタップス代表 佐藤さん

続いてテーマとなったのが、「データノミクス(情報経済)」について。この経済を支える基盤はデータの「量」だという。しかし、どこまでデータを取得していくのか。活用していくのか。こういった判断は技術が発達しても依然として人間に委ねられる。

これから「人間」に求められる役割は、どのようなものになってくるのだろうか。

「これ以上データを取得しても意味がない」という範囲は必ず存在します。そこを割り切って判断する人間は機械学習が進んだとしても必要になってくるでしょう。

つまり人間の価値は「データを取る範囲を判断すること」だというのだ。それは「横断的な知性」が求められるという。

これから数年ほどで、機械学習の技術を無料で使えるような基盤が整ってくると思ってます。一方で、技術を使えたとしても、その目的を考える人間の価値はとても高くなっていくでしょう。データから「課題」や「問い」を導き出し、解決までのアプローチまで導き出す。そういった、社会と技術のつなぎ役が人間の仕事になっていくのではないでしょうか。

現時点でも、社会と技術をつなぐスキルを持つ人は存在する。そのような人たちの傾向を佐藤氏はこう分析する。

彼らが優れているのは「右脳」で考える芸術性です。ロジックで物事を考えるよりも、ひらめきが大切なんです。「”あれ”と”これ”は、実は関係しているかもしれない」といったところに気づくことができる。そういった人たちは、一見関係ない領域を複数経験してきた、もしくは国をまたいで仕事をしてきた人に多い傾向があると思います。

では、どのようにすればスキルを身につけることができるのだろうか。

いろんな経験している人は、比較的気づきが多いですね。また、転職がいいかは分からないですが、色んな業種を見ることで身につくものもあると思います。私自身が行っていることとして、すでに理解している領域やコミュニティには極力触れないようにする。自分がまだ知らない領域を積極的に触るようにしています。

最近では宇宙の構造について興味をもっているという。それはまだ知らない領域であるからだ。人間の生命がデザインされているのか、それとも完全に偶然なのか。仮説が思い浮かばないからこそ、まだまだ堀りがいがある、そう楽しそうに語る佐藤氏の表情が印象的だった。

(おわり)


文 = 池田達哉
編集 = CAREER HACK


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