中小企業向けのバックオフィス支援を強化するfreee。クラウド会計ソフトの提供に加えてマイナンバー管理、統合基幹システムにあたるサービスなどカバー領域を拡大する。彼らが目指す先とは?そしてバックオフィス効率化の先に待つ未来とは?代表である佐々木大輔氏が語った。
※Tech in Asia TOKYO 2016(2016年9月7日開催)で行われた佐々木大輔氏のトークセッションよりお届けします。
もともと個人事業主向けにクラウド会計を提供してきたfreee。佐々木氏によれば、2016年は法人にフォーカスし、さまざまなサービスの開発を進めてきたそうだ。
その背景にあったのは法人から出てきたニーズ。必ずしも「会計」だけではなかったという。
最近は、数百人規模の企業さんに使っていただくケースも増えてきました。ユーザーの声を聞く中で一部満たせていないニーズがあることがわかりました。そこをチャンスと捉えて、そのような中規模法人向けのプランを用意することになりました。
freeeでは、この6月に「ビジネスプラン」としてERP(統合基幹システム)にあたるものをリリース。財務会計や人事労務に関連した各業務システムの統合的な運用をスタートした。
中規模法人向けに提供している他社製品はほとんどないですし、あったとしても利用料金が高い。ここを我々がカバーすることで、とても意味のあるソリューションになるのではないかと考えています。
そして佐々木氏は、freeeがサービス領域を拡大させていくなかで、「ゆくゆくはバックオフィスに関連する業務すべてフォローしたい」と語った。その中でも「効率化」にフォーカスするという。
徹底的な効率化に私たちの強みがあります。バックオフィス業務にはクリエイティブを発揮する分野もあります。会計や経理の分野は効率化していくことが可能です。また、分析をする仕組みを提供することは効率化に繋がるので、やっていきたいです。給与計算や労務周りの業務も効率化できる余地が大きいと思っています
一方で、採用や人事評価については、各企業がクリエイティブに行っていくべきだと思っているので、あらゆる事業者が同じサービスを使うべきではないと思っています。
どの企業にも共通する、プラットフォームとしての効率化が可能な領域がある。そこに対するソリューションを提供していきたいと考えています。
近年、最もホットな話題になっている人工知能。freeeでの取り組みが紹介された。
銀行の通帳やカード明細などから会計帳簿を自動で作成するようなことも、既に人工知能技術を用いて実現させていますが、今後はよりブラッシュアップしていきたいと考えています。もちろんはじめから完璧ではなく、間違うこともあるでしょう。そこはユーザーに修正をしてもらった上で、修正履歴を機械に学習させ、サービスを向上させようと考えています。そうすることで利便性が高まり、さらにユーザーが増えていく。
その次には、freeeに蓄積されたデータを使った新しい提案ができるようなります。資金繰りのアドバイスなど、新しい形の支援ができるかもしれないと思っています。
人工知能とそれによってなくなる職業についても、佐々木氏の考えが語られた。
会計をただ入力する人はなくなるかもしれません。ただいろんなデータが見れるようになっていくので、データを理解する人、今何が起こっているのかを分析する人が必要になるので、増えていくと思います。
同時に「いたちごっこ」が続くというのが佐々木氏の考え。つまりは分析さえも進化した人工知能にとって変わられ、さらに上流の仕事を人間が担うという考えだ。
ゆくゆくは分析を行う人さえいなくなるかもしれません。さらに突き詰めていった時、人間がすべきことは「何かに情熱を持って取り組む」ということ。情熱があるからこそ人がついてくる。こういったところが人の強みになってくるのだと思います。
セッションの最後は、アントレプレナーに向けたメッセージで締めくくられた。創業時にあった否定的な意見を例に、あえて「受け入れられないかもしれない領域」にチャレンジしていく重要性が語られた。
僕がfreeeを設立した4年前は、会計ソフトをクラウド化するなんてクレイジーなアイディアだと思われていました。自分たちが作ったクラウド会計サービスのプロトタイプ見せても「今までのやり方で十分だ」と。しかし、freeeをリリースしてみると、徐々に受け入れられるようになり、またそこから新しいサービスに広がっています。今となっては多くの人がクラウド化は避けれないと認識しています。
以前は最も保守的だと思われていた会計事務所の界隈でさえ、クライアントに対して「freeeを活用した経理の効率化」を提案することが当たり前になっている。「クラウド化なんてありえない」と今まで動かないと思われていた方向に世の中はしっかり動いています。こういうのは「日本ではウケないんじゃないの?」と思われているようなことにも積極的に挑戦していくべきだと思っています。
(おわり)
文 = 大塚康平
編集 = CAREER HACK
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