2016.12.15
ある日突然、サンフランシスコからオファーが!英語が苦手なiOSエンジニア、堤修一の渡米体験談

ある日突然、サンフランシスコからオファーが!英語が苦手なiOSエンジニア、堤修一の渡米体験談

世界で活躍するiOSアプリ開発者、堤修一さん。フリーランスとして実績を重ねていたある日、サンフランシスコのスタートアップから声が掛かる。今やスターエンジニアとして注目を集める堤さんだが、31歳までプログラミング経験はなく、英語も得意ではなかった。堤さんは、いかにしてキャリアを広げていったのか?

0 0 62 0

世界で戦うスターエンジニア、堤修一

テクノロジーが発達し、リモートワークを認める企業も増えている昨今、エンジニアが活躍するフィールドは日本に留まることはない。過去CAREER HACKで取材させていただいた堤修一さんのワークスタイルは、そのことを証明していると言えるだろう。

▼iOSアプリ開発者・堤修一氏へのインタビュー第1弾
失敗続きの窓際エンジニアが掴んだ最後のチャンス|iOSアプリ開発者 堤修一に訊く

▼iOSアプリ開発者・堤修一氏へのインタビュー第2弾
友だちが減っても、とにかく手を動かし続けた|iOSアプリ開発者 堤修一のスキルアップ術

今や日本と海外を行き来する堤さんだが、もともとは国内最大手のシステムインテグレーターの研究員だった。31歳でカヤックに転職するも、入社当初はなかなか成果が出せず、若手エンジニアが横で活躍している中、プログラミングの入門書を渡されて、窓際に追いやられた時期もあったそうだ。そんな堤さんに転機は訪れたのは、カヤックを退職しフリーで活躍している頃。

GitHubでの活動がFyusion社CEOの目に留まり、オファーが届く。英語が話せないまま渡米した堤さんは、いかにして世界で通用するエンジニアとしてのキャリアを切り開いたのか。

彼がスターエンジニアになるまでの道のり、そして海外での挑戦から、エンジニアが世界と戦うためのヒントが見えてきた。

※2016年11月に開催された「dotFes(ドットフェス)」における講演よりお届けします。


<プロフィール>
堤 修一 / iOSアプリ開発者

フリーiOSエンジニアを経てサンフランシスコに本社を置くFyusion社へ。フリーランス時代に、ウェアラブルおもちゃ「Moff」、次世代車いす「WHILL」、ウェアラブルトランシーバー「BONX」などハードウェアと連携するiOSアプリを数多く手がける。オープンソース活動も行っており、GitHubでの累計スター数は世界トップ50にランクイン。著書に「iOSxBLE Core Bluetoothプログラミング」「iOSアプリ開発 達人のレシピ100」がある。

一度海外を志すも断念。スキル磨きと実績づくりのフリー時代。

堤さんの写真

2013年、海外で働きたいという想いが抑えられなくなり、カヤックを退職した堤さん。その後、一度は海外でのキャリアを志すも、選んだキャリアはフリーランス。いったい何があったのだろうか?


一度は海外でのキャリアを目指したんですけど、少しの間海外に行ってみて、今の英語力のまま海外の会社に滑り込めたとしても、あまりいい仕事はできないだろうし、そうすると自分の実績が先細っていくだろうな、と思ってしまって。まずはちゃんとスキルを磨き、実績をつくろうと思って、国内でフリーランスとして働くことを決めたんです。


そこから、WHILLやMoffといった魅力的なハードウェアプロダクトと連携したiOSアプリを開発したり、憧れていたライゾマティクスの真鍋さんと仕事をしたり、Bluetoothの本も出版することができて。ここまでハードウェアのプロダクトに関わったiOSエンジニアはまだあまりいないんじゃないかと思い、海外で活動する自信が芽生えてきました。フリーランスとして働くこと自体はとても楽しかったのですが、これ以上日本で実績を重ねても横ばいな気もしてきて、次のステップにいくタイミングが訪れたんだ、と思いましたね。


海外での活動を志す際、多くの人が英語力を身につけることをまず考えるだろう。しかし堤さんの場合、英語が苦手だったにも関わらず、スキル磨きと実績づくりを優先して行動していたという。

そんな堤さんに、ある日転機が訪れる。サンフランシスコに本社を構えるFyusion社のCEOが堤さんのGitHubでの実績を見つけ、投資家経由で同社へのジョインを打診してきたのだ。


今回のFyusion社への就職は、僕が応募したのではなくて、Fyusion社のCEOが僕を見つけてくれて、同社に投資をしている日本のベンチャーキャピタルを通じて、お話をいただきました。それで実際に話をしてみて、「ここでなら学びたい技術が身につく」と思って、迷わず入社を決めました。


同社のプロダクト開発を通じて、学びたいスキルが身につくと感じた堤さんは二つ返事でオファーを承諾。こうして念願だった海外でのキャリアを実現することになる。Fyusion社にはリモートで働く社員も多く、堤さん自身も日本で働くという選択もできたそうだが、せっかくなのでということで、2016年10月から満を持して渡米。日本とサンフランシスコでのデュアルライフがスタートした。

英語に苦手意識があっても、実力を信じて挑戦してみる

堤さんの写真

念願だった海外での生活がはじまった堤さん。初日、早速参加した定例ミーティングでは、開発メンバーが話してることの9割が聞き取れなかったのだそう。言葉が通じないもどかしさを感じながらもどのように立ち向かっているのだろうか。


英語はある程度できるんですけど、やっぱりコミュニケーションで不安を感じることがありましたね。みんながどういう会話をしているのかもわからないので、「あいつ、ちょっと英語喋れなさすぎじゃない」って思われていたらどうしようとか、心配になることもあります。仕事自体は問題なくできているんですけど・・・もっとプロダクトとか、UI・UXについてチームで議論したいなと、もどかしさを感じている真っ最中です。


そんな堤さんは最近、週末職場のエンジニアに声をかけ、日本のエンジニアの間で流行っている「もくもく会」もはじめたとのこと。


職場には話の合うiOSエンジニアの人もいて、彼とたまたまキッチンで二人きりになる機会があったので、「次会ったら誘おう」と1週間くらい様子を伺っていたんです。そしたら、またキッチンで二人きりになるチャンスがあったので、思い切って「週末一緒に勉強しよう」って英語で誘ったんです。そしたら快く承諾してくれて、すごく嬉しかったですね。なかには言葉が通じなくて心を閉ざしてしまう人もいるんですけど、彼はいつも前のめりに僕が言いたいことを理解しようとしてくれるので、安心して身を預けることができました。

仕事の報酬はお金だけじゃない。周囲に成果をアピールすることが大切

堤さんの写真

紆余曲折を経ながらも理想のキャリアを実現した堤さん。グローバル化が加速しボーダレスに活躍するエンジニアが増えていく中で、堤さんのようなワークスタイルやキャリアアップを目指す方も多いだろう。では、次のステージを目指す方が堤さんのように大きなチャンスを引き寄せるには、何を心がけ実践すればいいのだろうか。堤さんは、自身の体験から次のように述べている。


フリーランスの頃は、他の仕事を断ってでも、優先的にGitHubやブログ活動をしていました。やっぱり外の人には、「自分はこれができます」というのを言わないとわかってもらえませんからね。僕が考える仕事の報酬とは何もお金だけではありません。GitHubやブログを通じて、自分のことを外の人が発見してくれることも仕事の報酬だと思っています。だからどんなに忙しくても、お金にならなくても、「これは書くぞ」っていうテーマは、優先的にブログに書いていました。


今回、堤さんのお話から、「何ができて、何に興味があるのか」をアウトプットする大切さを改めて実感した。SNSやインターネットなど、テクノロジーが発達し、個人が自由に発信できる時代だからこそ、“自分を見つけてもらう”という仕事の報酬に目を向けることが、チャンスをつかむ近道かもしれない。

(おわり)


文 = 田尻亨太
編集 = 野村愛


特集記事

お問い合わせ
取材のご依頼やサイトに関する
お問い合わせはこちらから