2017.10.25
東大受験とデザイン習得は同じ!?東大生デザイナー、豊田恵二郎が『PinQul』を創るCCOになるまで

東大受験とデザイン習得は同じ!?東大生デザイナー、豊田恵二郎が『PinQul』を創るCCOになるまで

突如現れた「PinQul」が話題だ。ミレニアム世代、東大チーム発のライブコマースアプリ。佐藤裕介氏、中川綾太郎氏などが投資している。今回訪ねたのは同アプリのデザイン責任者、豊田恵二郎さん。彼は東大工学部に現役合格。そして1年でWebやUIのデザインスキルを磨いた強者。その学習メソッドとは?

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この21歳に注目!『PinQul』をデザインした豊田恵二郎とは何者?


「もしかすると東大入学のための受験勉強と、デザインスキル習得のために実践したことには、共通点があるかもしれません」


こんな独自の学習メソッドについて語ってくれたのが、豊田恵二郎さん。21歳になる彼は、東京大学理科I類に現役合格し、工学部のなかでも難易度の高い航空宇宙工学科に進学(現在休学中)。

仲間たちと立ち上げた東大発スタートアップ「Flatt」ではCCOとしてデザイン責任者を担う。(同社は佐藤裕介氏、中川綾太郎氏などが名だたる投資家が投資したとして注目のチーム)

最近ではライブコマースアプリ『PinQul』をリリース。ライブコマース戦国時代ともいえる今、マーケットに打って出る。

じつは彼、つい1年前までWebデザインは素人だったというから驚きだ。東大で宇宙工学を専攻しながら、どのようにWebデザインを学んだのか?

東大受験の考え方と共通する「短期集中・爆速スキル習得」の極意に迫った。


PinQul Flatt

中国の若者のあいだで大ブームとなっているライブコマースアプリ。今年の春頃から日本国内でも次々と新しいサービスが登場。盛りあがりをみせている。今月初旬、東大発スタートアップ「Flatt」がライブコマースアプリ『PinQul』をリリースした。


[プロフィール] 豊田恵二郎 @toyojuni|株式会社Flatt CCO
大学2年次より株式会社ラブグラフでデザイナーとして勤務。その後大学の3年次を休学し、株式会社Flattの立ち上げに参画、CCOに就任。2017年10月、ライブコマースアプリ「PinQul」をリリース。東京大学工学部航空宇宙工学科在籍。1996年生。

東大合格のための勉強も、デザインも、特別なものではない

Flatt 豊田恵二郎


― ライブコマースアプリ『PinQul』が話題ですね。デザインも若い世代向けという感じがします。洗練されていて。


ありがとうございます!


― 本日は、なぜ、豊田さんがデザイン責任者になれたか、根掘り葉掘り伺おうかと…。


ぼくがデザインについて語るなんて…デザインを教えてくれた先輩たちが見たらなんて言うだろう(笑)おこがましいというか…恐縮です。


― ぜひざっくばらんにお話してもらえたらと! 聞けば、つい1年前までデザインは素人だったとか。どうデザイン学んでいったのでしょう?


そうですね。東大受験のときにやった勉強と、デザインスキルを習得するまでのプロセスは似ていたかもしれません。特別なものではなく、努力の方向性を定め、適切な努力していけば伸ばしていけると思います。

じつは東大合格も1年の短期集中型で学んだんですよね。高校2年生まで、模試の合格判定はD判定とか。そこから勉強して高校3年生の夏にはA判定が出せるようになりました。

今でも「やり方さえ掴めばできる」という成功体験が自信になっていますし、学習を効率化するためのコツは、デザインスキル向上にも活きています。

たとえば、「教科書やテキストを読む」などインプットはそこまで重視しない。とっとと演習問題にチャレンジしていくんです。デザインも同じで、基礎知識や手順が書かれている本やサイトはサッと読む程度。どんどん実際に作ってみるようにしました。

インプットってただ頭に入れただけではすぐ忘れてしまうもの。だから手を動かし、アウトプットできて初めて「インプット」とする。セットだと思っています。この考え方はあらゆる学習において共通する。

ぼくが偉そうに語ることでもないですが、「優秀」だと呼ばれる人たちは特に意識せず、このインプットとアウトプットの実践を繰り返していますよね。

もちろん基礎を固めておくことは必要ですし、応用とのバランスを考えることは大事だと思います。でも、個人的には、あまり深く考えず、アウトプットに振り切るほうが習得効率が良かった。…まあ、あとは単純に実践やる方が楽しいですもんね(笑)


― 逆に「受験勉強」と「デザイン習得」で異なった点は?


デザインのほうは、いいものを見極められるデザイナーの先輩方からのフィードバックが欠かせないと思います。そのフィードバックをどれだけ増やせるか。アウトプットしまくって改善ポイントを大量にもらっていく。ここはインターン先で得られたこと。ぼくにとってインターンが貴重な経験となりました。

「OUTPUT or DIE」アウトプットせざる得ない過酷な状況に身を置く

Flatt 豊田恵二郎


― とにかくアウトプットを増やすことが大切?


そうですね。ただ、アウトプットし続けるって簡単じゃない。人間は怠ける生き物ですし、自分を甘やかしてしまうもの。なので、常にアウトプットを出さざるを得ない状況をつくって、自分を追い込んでいました。

具体的には、2016年8月から2017年4月まで、学生をしながら、カップルフォトサービス「ラブグラフ」でインターンをしていて。

当然、はじめはWEBデザインの知識はゼロ。「とりあえず作ってみよう」ということでLPのデザインをいきなり任せてもらえた。フィードバックをもらっては作り直す…その繰り返し。コーディング、gitの使い方…すべて手探りでしたね。

なんとか合格点がもらえた時…純粋にめちゃくちゃうれしかったんです。成長できた実感があった。成功体験を重ねていこうとしていました。


― その他、自己学習でやっていたこととは?


習慣的なところだと、dribbbleやPinterestやmuuuuu.orgなどを見ていました。他にはTwitterで有益な情報をシェアしている人をフォローして記事を読んだり。デザインをやっている友人とのSlackチャンネルで共有された情報をインプットしたり…普通ですね(笑)

あまり自分から検索をかけて情報を追うタイプではなかったので、受動的にインプットができる環境をつくるよう心がけていました。

あとはインターンだけでは経験の「総量」が足りないと思ったので、フリーランスとしてデザインの受託仕事も受けていて。この環境を作れたことが、1年間で成長を実感できた要因だと思います。


― めちゃくちゃ忙しそうですね。いつ遊んでいるんですか(笑)大学生とは思えない。


たしかに忙しかったですね…昼間は東大の授業に出て、終わったらインターンへ。インターンが終わった夜中にフリーとして受託仕事を詰め込む。もちろん土日もデザインを受託する。とにかくデザイン漬けの生活を半年くらい続けていました。

2017年の春休みは、集中して学べる絶好の機会だと思い、ラブグラフに週5フルコミットで働けた。これもプラスに働いたと思います。


― ちなみにWebデザインをはじめて、どのくらいで手応えがありましたか?


はじめて半年くらいの時、「Webデザインができます」と自分から言ってもいいレベルになってきたと思います。もちろん先輩たちに比べたらまだまだのレベルですが…一通りはこなせるようになって。週5日で働けると、社員の皆さんとも同じスケジュールで開発に参加ができます。早いサイクルでフィードバックをもらえたので、一気に成長スピードが上がりましたね。


― インターンとフリーランス、同時にやったことで得られたメリットとは?


インターンではとにかく優秀な先輩からのフィードバックを得られること。受託案件のほうは自分の市場価値を数字としてきちんとして把握できたことですね。

いずれにしても、やっぱり報酬をもらって仕事するってめっちゃ重要だと思います。納品先であるクライアント、社内の人に成果物が認められて、報酬が得られたとき、大きなモチベーションになっていく。同時に責任感も生まれていきます。クオリティの低いアウトプットに対し、報酬をもらうわけにはいかないですよね。シビアにクオリティが求められつづける、クオリティを求めて苦しみもがく。そんな環境に身を置くことでプロ意識が芽生えたと思います。

図々しくいこう! まわりの目を気にしている暇はない

― ちなみにインターンは…誰かのツテがあって見つけたのでしょうか?


いえいえ、まったく無かったですね。ラブグラフCCOの村田さんに「雇ってくれ!」とTwitterでDMを送りつけました。全くデザイナーの募集なんてしていなかったのに(笑)

ぼくが思うのは…必要だと思う環境や仕事があるなら多少図々しくとも掴み取りに行くべきだということ。大学の教授にもTwitterでDMして「特別講義に参加させてくれ」って交渉し、潜り込ませてもらったことがあります。後日、別のイベントで教授に会ったとき「あの時の君か!」と覚えてくださっていて、笑い話になりましたね。

…たしかに若さゆえに許されている部分もあると思いますが、直接コンタクトをとって損することはほとんどない。

いま、ぼくは「事業」にもコミットしています。Flattでの肩書きは「デザイナー」ではなく「CCO」と名乗っています。つまり「チーフクリエティブオフィサー」として、事業についても語っていけるようになりたい。事業とデザインの掛け算で見ていきたい。そのためにも、どんどんスタートアップやビジネス、デザイン界隈の人たちに…TwitterのDMを送りつけていこうと思うので、どうか無視しないでほしいです(笑)


― 圧倒的なアウトプットの総量、そして行動力…多くの方が参考になる話だったと思います。これからのご活躍、楽しみです。ありがとうございました!


Flatt 豊田恵二郎


文 = 大塚康平


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