2017.10.26
新サービス『メルカリ カウル』誕生のウラ側!デザイナーとPOがタッグを組んだ、激動の日々|大杉健太

新サービス『メルカリ カウル』誕生のウラ側!デザイナーとPOがタッグを組んだ、激動の日々|大杉健太

ソウゾウで働くデザイナー、大杉健太さんのキャリアがおもしろい。個人活動で撮影した写真が、Mr.ChildrenのCDジャケットに採用された驚きの実績も。もともとは受託制作のデザイナーとして経験を積み、インハウスへ。彼が大切にするデザインのスタンスとは?『メルカリ カウル』誕生までの物語と共に伺った。

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『メルカリ カウル』開発でデザイナーが果たした役割とは?

『メルカリ カウル』の開発プロセスがユニークだ。

デザイン先行で企画され、約半年でローンチへ。もともとのプロジェクトは3名という最小チームでスタート。事業として正式なGoが出る前にモックを制作。プロトタイプができてから正式にエンジニアがアサインされ、実装へ。スピーディーに0→1を実現した。

もちろんメルカリの姉妹アプリという前提はあるが、それにしてもかなりスムーズなプロダクト開発だったといっていいはずだ。

同プロジェクトを指揮したのは、ソウゾウの執行役員である藤崎研一朗さん。そしてもう一人のキーマンが、UX設計・デザイン全般を担ったデザイナーの大杉健太さん(32)だ。

大杉さんは『メルカリ カウル』リリースまでをこう振り返る。


「じつは毎朝、プロダクトオーナー(PO)である藤崎と定例でミーティングを入れていたんですよね。UIを描きまくり、モックをつくる。ブラッシュアップする。〆切の連続で…けっこう大変でした(笑)」


同時にこの繰り返しによって得られた発見もあったそうだ。『メルカリ カウル』誕生までの物語、そしてインハウスデザイナーとして彼が大切にしていることに迫ってみよう。

カウルの写真

2017年5月にリリースされた、メルカリの姉妹アプリ「メルカリ カウル」。本・CD・DVD・ゲームに特化したフリマアプリだ。ユニークな機能として「バーコード読み取りですぐに出品」が可能であったり、新品との価格比較ができたり、痒いところに手が届くUXが話題に。わずか半年で出品数280万超と好調だ。

プロトタイプをかためてから開発。その利点とは?

― 『メルカリ カウル』は大杉さんがUIをかため、プロトタイプをつくり、その後、本格的に開発を進めていったと伺いました。そんな風に開発を進める利点とは?


デザイナーの大事な役割の一つに「見えるもの」でチームをリードするというのがあると思っています。

「こういうアプリを作ります」とエンジニアに伝えたとき、もう「見えるもの」になっているから、一瞬で「お、使ってみたい!良さそう!」とプロダクトの目指すものがすぐに伝わり、チームの意識を統一できたのが良かったと思っています。

かなり前段階からエンジニアとコミュニケーションを取っていたので、大きな出戻りもなく、スピード感をもって開発を進められました。

大杉さんの写真

― デザイナーとしては実現したいデザインがあり、エンジニアとしては実装がむずかしくて戻しが…というのは現場の「あるある」かと思います。


そういった衝突はほとんどありませんでした。当然、デザインしたもの、全てが全て実装できたわけではありません。ただ、わからないことがあったら素直にすぐ近くにいるエンジニアに相談するようにしています。

「これ、できるかな?」って。「ちょっとむずかしいかもしれないです」と言われた時も「どうしてもやりたいとなったら…どのくらい大変?」と笑顔で聞く(笑)。デザインと並行しながら、何を実装していくべきか。優先順位をつけ、進めていきました。


― 実装における難易度や工数を理解・把握し、その上でデザインも考えていく。なかなかカンタンでは無いようにも感じます。


それでいうと、前職のサマリーで得られた経験は大きいかもしれません。デザイナーとエンジニアの距離がすごく近くて。いつもみんなで「これってどうすればつくれるかな?」というやり取りが前提にあったんですよね。

そこは『メルカリ カウル』のプロセスにしても同じ。出品の仕組み、データのつなぎ合わせも必須で。エンジニアとの連携無しには実現しないものだったんですよね。

インハウスのいいところだと思うのですが、「思い入れのあるひとつのプロダクトをみんなでつくっていく仲間」という前提が共有されているし、そのマインドが強い。なので、デザインとエンジニアリングをどう両立させていくか。もし、デザイナー自身が見ていくことができたら、開発もスムーズですよね。

一瞬で出品!「バーコード出品」機能の誕生秘話とは?

― もうひとつ『メルカリ カウル』が面白いのが、売りたい本やCDのバーコードを読み取るだけで情報が自動入力され、わずか10秒で出品できる機能ですよね。


手前味噌ですが…超便利ですよね(笑)プロダクトのオーナーである藤崎からアイデアを聞いたとき、「いや、もう早く使いたいっす」っていちユーザーとしてものすごくほしかったんですよ。だから自分のためにも一刻も早く作りたいと思っていました(笑)

このバーコードの読み取りが気持ちいいのって、けっこうみんなに共通する体験なんじゃないかと思うんです。QRコードもそうですが、「かざす」「読み取る」「情報がスマホに入ってくる」という一連の流れにタップはいらないし、気持ちがいい。

大杉さんの写真

― 伺っていて思ったのが、理屈というより、直感的にいいと思えるかどうか。パッとわかりやすいか。いちユーザーとしてほしいか。純粋な気持ちも大切なのかな、と。


それはあるかもしれないですね。説明しないと伝わらない、説得しないと納得してもらえない機能は、たぶん説得力もない。多くの人には受け入れられないのかもしれません。


― …ちょっと余談になるのですが、大杉さんは写真の腕前もプロレベルと聞いています。Mr.ChildrenのCDジャケットに撮影した写真が採用されたりもして。写真も「一瞬の説得力」が大事なのかな、と。


いやぁ…どうなんでしょうか。その共通点は考えたことがないですね。あまり関係がないのかも(笑)


写真

大杉さんの個人フォトサイト『Ordinary Days』

― いち生活者の視点というか、ユーザーが何に喜んでくれるのか。感覚としても身近に捉えていらっしゃるのかなと感じました。


思うのは、大前提として「人」がすごく好きなんですよね。その中でも、あの人は何をしているんだろう?とか想像したり、観察したりするのは、すごく好きですね。

たとえば、晴れた日なのに、傘を持って歩いている人がいて。なんで傘を持っているんだろう?と、ふと気になってしまう。会社に忘れていたのかなとか、誰かにプレゼントするために買ったのかなとか。そういった想像力を掻き立てられるシーンは、すごく好きですし、写真に撮りたくなることが多いですね。

寝ても覚めても「メルカリ カウル」のことばかり...

エモ

ロゴ案を検討したときのメモノート。


― 最後に『メルカリ カウル』のロゴに関しても伺わせてください。どのようなプロセスで生まれたのでしょうか。


実は最初に直感的に思いついたロゴなんですよね。もっとちゃんとしたロジックが先にあったって言いたいところなんですが ...(笑)

「楽しさ」と「物で人がつながる」というコンセプトのようなものは無意識に考えていたとは思います。

*写真

「●」2つと「U」は「笑顔」をモチーフにしている。本、CD、DVD、ゲームなど「エンタメ=楽しい」を表現。また「オレンジの人」と「ブルーの人」がモノを手渡ししている「物の売り買いを通じて人とつながる」という世界観が表現されている。キーカラーは「オレンジ」。「盛り上がり」や「楽しさ」が伝わる暖色系に。「メルカリ アッテ」や「メルカリ」など既存サービスとスマホホーム画面に並んだときに違和感がないように考慮している。


最初のアイディアを形にしてから、競合アプリのロゴであったり、デザイントレンドであったりのリサーチもしました。その上で、何案か作成して社内の人からフィードバックをもらうようなプロセスも踏んでいます。

その他に、いつも朝会をやっているホワイトボードに、考えた仮ロゴをしれっと貼っておいたりしました。「これ何?ロゴを作ったの?」とか「これ何を表現しているの?」とか「かわいいね」とか、そういう自然なリアクションを見たかったんです。

ずっと頭のどこかで『メルカリ カウル』のことばかり考え続けている状態があったんですよね。ここまで濃く、プロダクトについて考えつづけたことはなかったので、すごく貴重な経験をしています。

リリースしてから5ヶ月。どんどん進化させていくので、ぜひ楽しみにしてほしいです。


― 毎日『メルカリ カウル』のことばかり考えたことで、ひらめきやアイデアのタネに直結し、アウトプットにつながったのですね。プロダクト開発のカギをデザイナーが握る。そんな貴重なお話を伺うことができました。これからの『メルカリ カウル』の展開も楽しみにしています。ありがとうございました!


文 = 野村愛
編集 = 白石勝也


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