元LINEのPM 吉村創一朗(24)さんが出張撮影サービス「ラブグラフ」に転職。リニューアルを率いた。最も大きな変更はターゲットセグメント。これまで学生カップルに支持されてきたが、ファミリー・フレンド・カップル・ウェディング向けに。その意思決定のプロセスに迫る。
【プロフィール】
吉村創一朗/Lovegraph CPO(Chief Product Officer)
学生時代から、カンボジアでカービジネス事業立ち上げ、アプリ制作会社立ち上げを経験。インターンとしてLINE株式会社へ。2015年そのまま新卒入社。役員直下のチームに所属し、iOSのメッセンジャーアプリの「セキュリティ」プロジェクトを率いた。メンバーは(直属の上司を除く)全員外国人で年上、コミュニケーションスキルが大幅にアップした。2017年11月にラブグラフへジョイン。
24歳という若さで、LINEのプロジェクトマネージャー(PM)として活躍してきた吉村創一朗さん。LINE海外ユーザー向けの「認証」や「セキュリティ」などのプロジェクトに携わってきた。
そんな彼がLINEの次に選んだフィールドが、出張撮影サービス『ラブグラフ』だ。
「いつか自分でLINEのように多くの人が当たり前に使うサービスをつくりたいと思っていました。そんな時に代表である駒下純兵さんに出会って。ビジョンにすごく共感したし、ラブグラフに大きなポテンシャルを感じました。写真って絶対になくならないし、写真によって自分たちの幸せに気づけることもある。もしかしたらデジタルネイティブ世代にとって写真ってアートに近いものになるかもしれない。美意識や価値観に大きな影響を与えていくものになると思ったんです」
そして3ヶ月間でリニューアルを率い、グロースの軌道へと乗せた。社内では『ラブグラフ1.0』から『ラブグラフ2.0』への進化と位置づけているという。
とくに大きな変更がサービスのターゲットセグメント。学生カップルに支持されてきたが、今回「カップル、フレンド、ファミリー、ウェディング」とカテゴリ分けを明確にした。その意思決定のプロセスについて伺えた。
ー これまで学生カップルたちから圧倒的に支持されてきたラブグラフですが、今回大きくシフトしましたよね。どういったプロセスでリニューアルに至ったのでしょう。
まず一番大きくあったのが、学生カップル向けに絞ったままでは、ビジネスとして天井が見えていたということ。特に若いカップルって別れてしまうことも多いし、リピーターになってもらいづらい。そもそもお金をあまり持っていない。そういった中、ひとつの方向性として家族向けや友人同士向けにターゲットを広げるという選択肢がありました。
ただ、おっしゃっていただいた通り、既存の学生ユーザーさんたちもたくさんついてきてくれていた。本当に振っていいのか。どこまで振るのか。ここを見定める必要がありました。
ー 具体的には何を?
まず入社してすぐにやったのは創業者である駒下純兵さん、村田あつみさんをはじめ、メンバーたちとコミュニケーションを取りまくること。どんな思いでつくってきたのか。なぜ今の形になっているのか。知りつくそう、と。あとは意見をさせてもらう上でも普通にみんなと仲良くなりたかったんですよね(笑)
で、特に気になっていたのが、「なぜ、カップルに絞ることになったのか」ということ。掘りさげていくとラブクラフを立ち上げた駒下さんの思い、原体験がコンセプトに色濃く反映されていました。もちろん事業を続けていく上で、つくった人たちの「愛」や「こだわり」は重要です。同時に、次なるフェーズに事業を移行させていく時はエゴにもなりかねない。なので、これまでつくってきたみんなの思いを受け取り、背負った上でサービスコンセプト、ターゲットの見直しを提案させてもらいました。
誰にどんな価値を届けたいのか。創業当初と状況も変わっていたのもあったんですよね。依然として学生カップルがユーザーの多くを占めていましたが、一部、ご家族だったり、友だち同士、ウェディングでもつかってもらえるようになっていた。ラブグラフって「幸せな瞬間を、もっと世界に。」を掲げている。それをサービスで体現するタイミングだというのもありましたね。
ー 「変える」という意思決定、その後にやったこととは?
どこをどう変えるのか、まずは全体の画を描いた上で「出張撮影サービス」が他の層にもニーズがあるか、少ない時間ながらも徹底して検証をしていきました。
たとえば、定量的なところだと、MySQLとGoogle Analyticsで行動分析とファネル分析をして。立てた仮説をもとに、ユーザービリティテストとデプスインタビューで検証しました。
結果として、かなり可能性を見出すことができた。ラブグラフって一度使ってもらえたらNPS(ネット・プロモーター・スコア)が異常なくらい高い。データを見せたいくらい。これはリピーターだけでなく、リファラルも狙うべきだと確信しました。
たとえば、ファミリー層を狙った場合、子供を撮影する機会って七五三や入学・卒業など育っていくにつれて何度もありますよね。これまではスタジオ撮影が主流でしたが、あれってフィクションじゃないですか。セットや衣装がしっかりと用意されていて。もちろんそれもいいのですが、大切なモノと子供のありのままをキレイな写真に残したいといったニーズもあって。そこにも応えられる。こんな風にそれぞれターゲットセグメントについて妥当性を検証していきました。
リニューアルにおける5つの変更点(2018年3月2日時点)
― もうひとつ、CPOという役職もユニークですよね。どんな役割を担うポジションなのでしょう?
代表が掲げるビジョンをどうプロダクトに落とし込んでいくか。その話を、具体的にどの機能をどう改善すればいいのか、ブレイクダウンしてチームに伝える役割を担っていきました。
代表が現場レベルの意思決定まですべてを見通す必要ってないんですよね。プロダクトに関する細かい意思決定は僕に聞いてくれればいい。理想は代表にとってもチームにとっても、迷っても大丈夫な「羅針盤」のような存在になることだと思っています。
で、やっていくことも明確で。とにかくUXを徹底的に磨き上げていくということ。ラブグラフのUXが面白いのは、Webで完結しないこと。たとえば、寒い日の撮影でフォトグラファーさんがユーザーさんにホッカイロをプレゼントしたとしますよね。「カメラマンさんがやさしかった」とグッと満足度がアップする。こういうところまでがUXだよなって。
お金を出せばモノは買える時代ですし、どんどん体験に価値がシフトしています。そういう意味で、ぼくらが参考にしているUXって「ディズニーランド」なんですよね。ディズニーっていう単語だけでもワクワクさせることができる。ラブグラフでも同じようなワクワクを醸成していきたいし、できると信じています。
文 = まっさん
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