Web業界のサウナ好きが集結!『サウナイキタイ』は有志で開発したサウナ情報検索サイトだ。個人活動なのに本気すぎ?わずか半年で5000施設も掲載?開発者の「ありさん」から伝わってきたのは「損得よりもサウナ愛!」だった。
ここ最近、本業とは別に有志で活動を始める人たちが増えています。
実は、サウナ情報検索サイト『サウナイキタイ』も有志の個人活動で生まれたサービスのひとつ。4名のサウナー(サウナ好きの意)たちが中心となり、本業の傍らつくりあげました。
驚くべきは、サイトのクオリティがとにかく高いこと。
データベースとしての情報量、デザイン性、検索条件の細かさ、口コミ投稿機能やマガジン、オリジナルグッズなどなど、有志の活動のレベルを超えているといえるでしょう。
今回はサウナイキタイメンバーのなかから、発案者の1人でバックエンドを担当したありさんにお話を聞きました。
なぜサウナイキタイをつくることになったのか?本気で取り組んだからこそ見えてきた新しい景色とは?そして、ありさんが語ったサウナの「理由を求めない悦び」とは?
ー 『サウナイキタイ』はサウナーにとって”かゆいところに手がとどく”的なサービスだと思うんですが、そもそもなぜ制作することに?
「サウナが良すぎるから」のひと言に尽きますね(笑)。
原体験としては、新卒入社した今の会社でガムシャラに働きすぎて体調を崩してしまったことがあって。そのときたまたま目にしたのが、Webライターのヨッピーさんが書いた銭湯の記事でした。
もともと銭湯が大好きだったのですが、熱い湯船と水風呂を繰り返す「温冷交互浴(おんれいこうごよく)」を試してみるとマジで気持ちよかった。水風呂をもっと楽しむためにサウナに入ったのが、ハマったきっかけです。
ー そのとき感じたサウナの魅力とは?
サウナと水風呂を繰り返していると頭がものすごくリラックスできるんですよね。
「あの資料どう作成しよう?」や「今度入社する新卒メンバーをどう教育しよう?」といった普段頭の中にある細々としたことが一旦吹っ飛んで、かわりに「そもそも自分は社会のために何がしたいのか」というベーシックな気持ちが湧いてくる。
たぶん、PCに向かって仕事したり、満員電車に揺られたりして失われている自分の五感とか気持ちとかが復活するんでしょうね。「自分が好きで、社会の役に立つことだけをやっていきたい」と思うようになって、仕事も集中すると同時に「サウナを広めていきたい」という気持ちが自然と芽生えていました。
ー なぜWebサイトをつくることに?
なんとなくデータベースはつくっていたんですが、サイト開発を始めたきっかけは後に開発パートナーとなるかぼちゃさんとの出会いです。
2017年8月、サウナが好きすぎてフィンランドで本場の空間を体感してきたんですが、すごく良くて。フィンランドで撮影した写真や感想をTwitterに上げていたら、かぼちゃさんから「一度話を聞かせてほしい」と連絡をもらいました。
実はかぼちゃさんも似たようなサイトをつくっていたんですよね。一緒に鶯谷にある『萩の湯』へ行って「実は今、こんなサイトをつくってます」って見せたら、「実は僕も」みたいな感じで(笑)。
最初は「ライバル登場か!?」と思いましたが、よくよく話を聞いてみるとお互い得意分野が違った。僕はバックエンド、かぼちゃさんはデザイン周りが得意で、さらにサイトを通じて目指すところもかなり近かったので、一緒にやることになりました。
翌週から横浜の『スカイスパYOKOHAMA』で開発スタート。途中で、もともと僕の知り合いだったサウナ好きエンジニアのゆかりちゃんとひぎつねくんが仲間入りしてくれて、最終的に4人でリリースまでこぎつけました。
ー それにしても、個人活動としては本気すぎますよね。特にサウナ登録件数。5000件あまりということですが、全国の網羅率は……。
おそらく全国の銭湯やサウナ施設みたいなところは、ほとんど網羅していると思います。
でも、僕らが一件一件調べたわけではないんです。Googleマップにサウナ施設情報をまとめた『全国サウナマップ』をつくったひろぽんさんというサウナーに、約4000件のリストを提供していただきました。僕らがやろうとしていることに共感していただけて。
ー 情報量と並んで検索軸もすごいですよね。とても細かい。
これでも削った方なんですよ。
たとえば「サウナ室の段数」や「天井の高さ」、「照明の明るさ」、「サウナ室に設置された時計の種類」……あと、僕はサウナのあとに雪印のフルーツ牛乳を一気飲みするのが好きなので「牛乳製品のラインナップ」とかも検討しました(笑)。
削ったとはいえ、ボリュームがボリュームなのでサウナーの方がちゃんと入力してくるかは不安でしたね。入力してもらえなかったら、自分たちが旅行するときに施設情報を調べてやっていこうと思っていたほどです。
ところが蓋を開けてみたら、全国のサウナーの方たちが入力してくれていて。もともとTwitterなどでサウナ情報を交換する文化があるので違和感なく……むしろ熱量高くやってもらっている感覚はあります。
ー なぜそれほどまでに多くの人を巻き込めるのでしょう?
もしかしたら、デザインの良さみたいなところはあるかもしれません。僕らの「サウナ情報をシェアしたい」という気持ちに共感してもらえている場合もあるでしょう。
しかし、それ以上にサウナの素晴らしさがあると思います。だから、これからはまだサウナにハマっていない人たちにアプローチしていきたい。サウナは熱くてただ我慢するものっていうイメージで固まっている人が多いので、サウナイキタイのグッズやステッカーだったり、サ活やトントゥみたいな試みを見て、ちょっとサウナ面白そうだなって興味をもってもらえたら嬉しいですね。
ー ちなみに、これまで頓挫しかけたことってなかったんですか?
それがないんですよね。忙しい時期は開発の手がストップしてしまったことはありましたが、それでも少しずつはやってきましたし……。
たぶん、最初の段階でかぼちゃさんと僕で、『サウナイキタイ』がどこを目指すのかを一致させていたところがよかったのかもしれません。「サウナ好きをサポートしたい」と「サウナの良さを広めていきたい」という二軸がしっかりしていたので、新機能開発やイベントの企画などもスムーズにできました。
ー 「志」、みたいなものですか?
そうですね。少なくとも僕は、日本社会にサウナが必要だと思っていますから。
ー 新機能「トントゥ」の開発経緯についても教えてください。
大きく分けて2つあります。
1つは、これまで2300件の施設情報や口コミを入力してくれたサウナーのみなさんへの感謝です。サウナーにとってはサウナが盛り上がることって必ずしもいいことばかりじゃないんですよね。行きつけのサウナが混み合ってしまう可能性もあるから。それでも入力してくれる人たちに恩返ししたいという気持ちでつくりました。
もう1つは、サウナを一時期のブームで終わらせたくないから。生活に根付かせていくためにも、たとえばサウナに行けばトントゥがもらえてグッズや入場券と交換できる……といった仕組みができればサウナー側もサウナ施設側もみんなハッピーですからね。
ー 正直、技術的なハードルは高そうです。
そうですね、でもそれも含めてやりがいはあります。
もともと本職はデータサイエンティストなのでWebサイト自体つくったことがなかったんですが、「サウナに貢献したい」というモチベーションがあったので学ぶことは全然苦にならなかった。そういう意味でトントゥの開発も新しいことをいろいろ学べるので面白いですね。
なので、なるべくはやくリリースしたいな……と。サイトでは2018年9月リリース予定と記載してしまっているので……(苦笑)。
ー 『サウナイキタイ』を始めて、ありさんの仕事観や人生観に変化ってありましたか?
サウナにハマって、単純に楽しくなりましたよ。出会いも増えたし。いろんな職業の方と知り合いましたが、素っ裸になってサウナに入ればみんな同じですからね。ものすごくフラットな関係が築けました。
あと『サウナイキタイ』の話をすると、自分の好きなことをやっていくことの大切さを感じています。ビジネス社会で競争するのもいいけど、自分の価値観に従ってやっていくこと。いろいろあるかもしれないけれど、僕にとってはサウナが一番だった。まだまだ僕の知らないサウナの魅力はあると思うので、人生かけてコミットしたいですね。
ー ありさんがサウナを語っているときの表情って、すごくイキイキしているんですよね。ありさんにとって「人生の豊かさ」って何だと思いますか?
はっきりとした答えではないんですが「doing」と「being」の2軸があると思っていて。
「doing」はやる目的が明確なもの。会社の仕事とかもそうだし、『サウナイキタイ』にも目的はあります。目的を整理して突き詰めていくことは大事なことだと思うんですね。
もうひとつが「being」。これは損得関係ないものです。たとえば子育てがそうですよね。「子育ては何のため」みたいなことって説明不要じゃないですか。
サウナにも似たところがあって、100度前後の部屋に裸で入る明確な理由なんてないんですよね。単純に水風呂が気持ちよかったり、心臓の鼓動を感じられて幸せな気持ちになったりするから入るだけ。僕はその「being」の時間を楽しみ、貢献していくことが豊かさにつながるんじゃないかと思っています。
ー 変にトレンドを意識して「個人活動をしたい」という動機で始めるのではなく、もっとシンプルな「何か好きなものに関わりたい」欲求で始める個人活動のほうが情熱を注げるのかもしれませんね。熱いお話、ありがとうございました。サウナだけに!
[取材協力] 金春湯
文 = 田中嘉人
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