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〆切さえ守れなかったデザイナーが、『BAKE』を手がけるアートディレクターになるまで

2018-12-26

〆切さえ守れなかったデザイナーが、『BAKE』を手がけるアートディレクターになるまで

BAKE CHEESE TARTで知られる BAKE Inc.。人気の秘密はパッケージをはじめとする「BAKEらしさ」を追求したブランディングにある。クリエイティブを担当しているのが井手口直也さん。彼の根幹にあるのは新人時代に学んだ「ものごとを鳥の目でみる」姿勢だった。

【連載】ぼくらの新人時代
「新人時代をどう過ごしていましたか?」テック業界のトップランナーたちに、こんな質問を投げかけてみる新企画がスタート。その名も、「ぼくらの新人時代」。知識もスキルも経験も、なにもない新人時代。彼ら彼女らは”何者でもない自分”とどう向き合い、いかにして自分の現状と未来を定め、どんなスタンスで学んできたのか。そこには私たちにとって重要な学びが詰まっていた。

+++井手口さんが手がけたデザイン。BAKE CHEESE TARTのリブランディングにおける、パッケージ、ポスター、ウェブサイト、トータルでクリエイティブディレクションを担当。

先輩 に「全然違う」と言われるのが怖かった|BAKE Inc. 井手口直也

BAKE Inc.(以下BAKE)といえば、おいしさはもちろん、統一された世界観にも定評がある。その中でアートディレクターとして活躍しているのが井手口直也さん。商品のパッケージやポスターをはじめ、ウェブサイトから自社の工場のデザインまで。売れ行きを左右するブランドを形作る。まさにブランドの根幹を支える存在だ。

キャリアのスタートは、制作会社のFICC Inc.。はじめて担当した仕事は、カミソリや化粧品など外資系消費財メーカーの商品。アシスタントとして、サイトデザインやキャンペーンの立案をしていた。


いま振り返ると、本当にダメな新人だったと思います。全く先輩たちに相談ができなかったんです。

デザインの制作に1週間時間をもらったときに、クライアントに提案する当日になるまでデザインのラフを先輩に見せられず、ひとりで勝手に思い悩んでしまうんですよね。それで、直前になって、デザインの方向性やイメージが全く違うことに気づいて、結局先輩たちに作り直しをしてもらうことが何度もありました。

先輩にフィードバックをもらうことから逃げていたんだと思います。自分がつくったものに対して、「全然違うよ」とか「深く考えられてないね」と言われてしまうのが、自分の人格までも否定されたような気がして怖かった。

だから、先輩にダメ出しされないようにするためにも、自分のなかで「ちゃんとつくらなきゃ」ってこだわってしまっていたんだと思います。

でも、最初から完璧なアウトプットなんて求められていなかったんですよね。そもそも、クライアントの要望はなにか、どんな方向性がいいのか、先輩とすり合わせなければ、アウトプットがずれてしまうのは当然ですよね。

+++[プロフィール]井手口直也|アートディレクター BAKE Inc.にてグラフィックデザイン担当。BAKE CHEESE TARTブランドのリブランディングを担当。FICC Inc.、BALCOLONY.を経て現職。

いつもスケジュールが守れなかった

最終納品日から逆算し、デザインの方向性をすり合わせて、いつまでになにをやるのかを明確にする。全体を俯瞰してみることは、新人だった当初はなかなか実践できていなかったという。


いつも見積もったスケジュールを守れていませんでした。サイトのLPひとつ作成をするにしても、制作前になにを準備するべきなのかを確認できていなかったんです。文章は誰に依頼するのか、画像はどうやって準備するのか、デザインのトンマナはどうするのか。何も考えずに、手を動かしてしまって。いつも先輩に「手を動かす前に、まずプロジェクトの全体像を把握したほうがいい」と指摘されていました。

また、自分から欲しい情報を取りにいくことの大切さも学びました。最初の打ち合わせでアートディレクターやマーケティング担当から共有される情報だけで制作を進めるのではなく、積極的に質問していく。

クライアントは何をしたくて依頼してくれているのか、プロジェクトメンバーはデザイナーにどんな期待をして仕事を振ってくれているのか。明らかにすることで、いろんな人たちの課題や思いが見えてきて、一歩引いた視点で自分の役割を知ることができる。

どんなことも、全体を俯瞰して見る。つまり「鳥の目」を持つことが大切だと気づきました。

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ファンになるまで調べつくす。先輩たちに教わったものづくりの姿勢

制作会社でデザインの基礎を身につけた井手口さんは社会人3年目に転職。漫画や映画などエンタメに強い制作会社BALCOLONY.に入社した。そこでは、先輩の「担当商品にファンになるまでのめり込む」姿勢にとても感銘を受けたという。


先輩方はリサーチに対するのめり込み方がハンパじゃないんですよね。コミックスの装丁を頼まれたら、その作家のコミックスは全部読む。読んだことがあったとしても、もう一回読み直す。ファンイベントがあったら、必ず足を運ぶ。担当する商品に対して自分が一番のファンになる。

そこまで調べつくすと、ファンが欲しいものがリアルな感覚として分かってくるようになるんですよね。上司に提案をするときにも、自分が一番のファンであれば、絶対ナシな提案はできない。

彼らの姿勢にすごく感銘を受けて。僕自身も、ストリートブランドのデザインをする時は、自分でストリートブランドのデザインを着て仕事をしてみたり、働き方もペルソナにあわせてカフェにいって仕事をしたり。ペルソナに憑依するみたいな感じのイメージですね。パソコンでターゲットのことを調べることができるけど、それだけではなく、実際どう心を動かされるのか、温度のある感触を探りにいくことが、提案の精度を上げていくのだと学びました。

他セクションと対話しながら、「BAKEらしさ」を体現する

現在、BAKEでデザイナーとしてブランド作りに1から携わる井手口さん。新人時代に学んだ、「鳥の目を持つ」視点は、ブランドをデザインする上でも糧になっている。


BAKEは「おいしさの次にデザインを大事にする」というのが社風としてあり、デザイナーやアートディレクターの意見が尊重される環境です。様々な部署ととても近い距離で意見交換しながら、ブランドをつくることができています。

パッケージや紙袋、ウェブサイトはもちろん、自社工場の内装のデザインや配送のダンボール、オフィスも。お客さまが目にする機会のないところも含めて、全てがデザインの対象です。

BAKEとして何をめざしているのか、どうしたら「BAKEらしさ」を体現できるのか。まさに鳥の目の視点で考えることがインハウスデザイナーにとしての今の自分の役割だと捉えています。

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