2019.02.27
『トリクル』立て直しの舞台裏|依頼殺到でオーバーヒート…!

『トリクル』立て直しの舞台裏|依頼殺到でオーバーヒート…!

フリマアプリへの出品代行サービス「トリクル」。少しずつサービスが軌道にのってきた。サービス開始時、あまりの反響に問い合わせが殺到。そのとき何が起こったのか。その経験からの学びとは?

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フリマ出品代行サービス『トリクル』。2019年1月にはフリマアプリの「ラクマ」、家事代行サービス「ベアーズ」との連携を発表。さらに便利になるような連携を進めている。2月にはさらなる資金調達を発表するなど、これからの成長に向けて着実に準備を進めている。

問い合わせ集中でオーバーヒート

満を持しての再スタート。着実にユーザー満足度向上につなげている『トリクル』を取材した。

2018年5月にリリースされた『トリクル』。公開2週間で累計問い合わせが約800件。集荷枠に対して依頼が殺到。サービスは一瞬でパンク、一時受付をストップしていた。

徳泉さんは事前にニーズは検証していたが、ここまでの勢いは想定外だったと振り返る。

「予想の10倍以上の依頼量でした。正直、最初は依頼はそんなに来ないだろうなって思っていたんです。とりあえずプレスリリースを出すかっていうくらいの軽い気持ちでいた。でも、思いのほか拡散されていき、社内は一気に慌ただしくなっていきました」

発想のきっかけはTwitter

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出品に伴う面倒くささを取り除いてくれる。

そんな『トリクル』は、フリマアプリを利用する人々にとって「待望」だったともいえる。サービス着想のキッカケは、Twitterにあった。

「Twitterでフリマアプリの名前を検索すれば、「出品が面倒」という投稿が多くて。リアルな声がありました。たしかに買い物をするとき、売る前提で商品を見る傾向は強くなっていて。ただ、実際にフリマアプリで売るというアクションに至る人はまだまだ少ない。売れると知ってはいるけど、実際の行動には移せてない人々のためのサービスを作ろうと思いました」

その後、市場調査とヒアリングを重ねていく。

「どうやって物を購入するのか、そもそも何を買うことが多いのか。一週間の中でどんな生活をしているのか、直近買ったものはどんな背景でどこで買ったのか。ひたすら日常的な購買についての質問を投げ続けました。そんな中で、少しずつ『フリマアプリに対する疲れ』が浮き彫りになりました。誰かの代わりに物を売るというサービスは多くの人に刺さる、と」

Twitterの声を重視した背景をこう語る。

「SNSにはリアルな声が転がっているので、適切に見極められれば良いインサイトになると考えています。また、ここ数年でユーザーが自分たちの身の回りの情報を信頼するようになりましたよね。本当に自分にとって必要な情報なのか、ということの重要性が数年で一気に上がっていて。SNSでの口コミがマーケティングチャネルとしてかなり大きくなっていると感じています。SEOのチューニングももちろん欠かせませんが、検索エンジンの中央集権的な情報とは異なる、ユーザーそれぞれに最適化された情報が重要だと捉えています」

口コミやユーザー満足度がサービスの成功を左右する。だからこそ、マーケティングチャネルとしてSNSを最大限に活用する方向へ舵を切った。

「人に何かを依頼するっていう文化って日本ではまだまだ未発達で、そこまで進んでいない印象を受けるんですよね。海外ではベビーシッターも日本に比べて一般的な選択肢ではない。ただ、面倒なことを人に頼みたいというニーズは必ずあると踏みました」

サービス拡大だけが正解じゃない

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面倒くさがりな人ほど使ってほしい…そう考え、できるだけ予約も簡単に。集荷量の見積もなし。ユーザーのストレスをなくす。確かにこの狙いはハマった。同時に想定外の反響を経て。いかにビジネスとして成立させ、かつユーザー体験を向上させるか、模索は続く。

「集荷依頼に対応できる数が、稼働できる人の数に左右されるのがサービス運営の難しさです。現在はユーザーの審査を行い、特定の方のみが利用出来る状態にしています。良いユーザーとしっかりと良い関係を築くために、初期のmixiのようなユーザーの広がりを模索したい。ユーザー1人あたりのライフタイムバリューを上げられるようなしくみを作っていきたいですね」

「本当はブランド品ならブランド品だけ、本なら本だけと商材ごとに区切ってサービスを展開したほうが良い。でも…それはぼくたちが目指すサービスにならないと考えています。ユーザーの課題は、”不要な物が売れるのか、売れないのか。捨てる場合はどうすれば良いのか”など、意思決定をすること。その頭の中のノイズを取り除くことに集中したい」

オペレーションの難易度は高いが、良い体験を届け続ければ結果的に競合他社を寄せ付けない信頼へつながると徳泉さんは考える。投資家をはじめ、さまざまな人たちから、

「手数料を価格帯ごとに設定するのはどうか」
「もっと高く手数料を設定しても良いのでは?」
「良い商品を依頼されるのか?売れない商品ばかりが集まってしまうのでは?」

こういった“率直な声”も届くという。これらのアドバイスを受け止めつつ、まさにこれから『トリクル』の真価が問われていく。

「大変だけど、ちゃんと仕組み化し、圧倒的に良い体験を提供しつづける。そうすれば使われつづけるはずです。実際に数値にも現れています」

まだまだサービスを運営するマンパワーは限られている。自分たちのキャパシティに対して、市場のニーズがはるかに大きい。そのギャップを埋める、彼らの挑戦は続いていくー。


文 = 千葉雄登
編集 = 大塚康平


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