2000通り以上もの組み合わせから、自分に近いセクシュアリティが分析できる『anone,』。このサービスを企画し、つくりあげた中西高大さん(23歳)。じつはWEBサービス開発は初挑戦。ユーザーに寄り添う。そこには「やさしい言葉選び」があった。
全2本立てでお届けします!
[1]いつか「多様性」を死語に。セクシュアリティ分析ツール『anone,』に込めた思い
[2]その言葉で、ユーザーを傷つけないか? セクシャリティ分析『anone,』のやさしい言葉の選び
ー『anone,』を使ってみてとくに分析結果が、やさしい文章だと感じました。
ありがとうございます。言葉選びは、とても慎重になった部分なので、そういっていただけるのは、すごくうれしいです。
ー 書かれる時に、とくに意識されたことなどはあったのでしょうか?
もちろん細かいところはいろいろあるのですが、文章やコンテンツで大切なのは、どれだけ該当する人のことを思いやれているか、知れているか。ここが全てだと思うんです。
僕の場合は、元からいろんなセクシュアリティの人が身近にいました。そのほかにも、セクシュアリティに悩みを抱える方々の個人ブログ、Twitterも見ました。文章に書いてる時も、その人の声が聞こえるじゃないですけど、「この人だったらどう言うか」「どう言われたらイヤじゃないか」を考えながら書きました。
また、セクシャリティに関する用語を初めて見る方も想定して、何も知らない人が見ても理解できるか?不快に感じないか?という点は意識しています。
もちろん、論文を読んだり、ジェンダーセクシュアリティの研究者の方々にもアドバイスももらっていて。ただ、どうしても研究者向けに書かれたものだと、どこか現実味がない。なので、より身近に感じられるように気をつけています。
ー プロジェクトのメンバーとしては、何名体制で行なったのでしょうか?
4名ですね。文章を書くなどコンテンツをつくっているのが僕を含めて2人、あとエンジニアとデザイナーです。そのほかにも、フルコミットではないけれど、時折アドバイスや協力してくれる人はたくさんいます。
実はWebサービスを作るのは全員が初めて。本当に手探りでした。開発をしていったプロセスとしては、
「ヒアリングをはじめとした情報収集・分類」
「アルゴリズムを組む」
「文章をかく」
この3つでした。
まずはじめにおこなったのが、ヒアリングです。『anone,』は、無自覚的にも「自分はセクシュアリティについて悩んでいない」と思っている人に使ってもらいたいと考えていました。
2ヶ月くらいかけて大学の友人、インターンで知り合った人、とにかく人に会うたびに話を聞いてまわる。たぶん300人くらいはお話を聞いたと思います。インタビュー形式でセクシュアリティに関連するトピックを出して意見し合ってもらったり、お酒の席で何気ない会話の中にスッと話題を出したり。方法もいろいろでしたね。
ー ヒアリングを通じて見えてきたことはありますか?
とくにやってみて気づいたのが、「差別的になりたいわけでもなく、偏見を持ちたいわけでもないけど、どうしたらいいかわからない」という人が多くいたことでした。多少なりとも関心は持ちつつ、戸惑っていて。
私たちが持っていた仮説でもあるのですが、その人自身が思ってることが表面化されていない。これはすごくもったいないな、と。
もうひとつ、悩んでいる人からすると、打ち明けたくなったらできた方がいい、ここも間違いないことだとわかりました。「この人には言いたいな」という時、伝えられたらいいですよね。
ところが「相手の本音、胸のうちがわからないから伝えられない」が障壁になっていた。悩んでいる子たちは、いろいろ会話のなかでジャブ打ち、もし、ネガティブな反応返ってきたら「もうダメだな」となっちゃう。ここを解決したいね、とメンバーたちで話し合っていきました。
ー はじめの1年間はクローズドで限られた人に使ってもらっていたと伺いました。その理由とは?
まず、サービスを通し、じっくり対話して作り上げたいと考えていました。関わっている人たち、身近に悩んでいる人たち、全員ができるだけ妥協点を見出し、納得できる形で最終的には出したい、と。また、センシティブなテーマなので、いきなり公開してしまうと、多くの人を傷つけてしまう可能性もありました。
もうひとつ、シンプルな課題としてアルゴリズムの精度をもっと向上させてから公開したかったんです。そもそも、あまり「セクシュアリティ分析」って前例がなくて。試行錯誤しながら、イチから自分たちでつくっていきました。
具体的には、いろんな人にオフラインで「セクシュアリティ分析コンサル」みたいなことを始めました。過去にどんな経験をしたのか、男女への考え方、人との関わり方や距離感、どんな恋愛がしたいのか、コンプレックスに感じていることなど、あらゆる角度の質問を投げていって。
最終的にこれ当てはまってると思う?と確認し、当てはまらない場合にはどの辺りが違うと思うのかを深ぼっていく…めちゃくちゃ地道な作業を繰り返しながら、分岐をつくっていきました。
ー『anone,』をきっかけに、どういう世の中にしていきたいですか?
僕は「多様性」という言葉を死語にすることが、自分の大きなミッションだと思っています。
どういうことかというと、いろんな人種や国籍、宗教の人達やバックグラウンドを持った人達がいて、その「多様性」を受け入れる動きは世界中で起きている。ただ、僕は、「みんな違ってみんないい」で終わりにしてはだめだと思っているんです。
違いを受け入れた先に、お互いがもっとコミュニケーションをとって、分かり合えるポイントを見つけていくことが本当は大事なんじゃないかと。まずは『anone,』を通して、もっとコミュニケーションが生まれてほしい。ここをスタートラインにしていきたいですね。
>>>いつか「多様性」を死語に。セクシュアリティ分析ツール『anone,』に込めた思い
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