北海道日本ハムファイターズの「家族向け転職プレゼンツール」が大ヒット!その裏側には、限られた時間で、転職者の家族への配慮と、ギリギリのユーモアにこだわった仕掛け人の想いがあった。
「アスパラガスが、太い!」「スギ花粉が少ない!」
そう書かれた、北海道日本ハムファイターズの「転職者の家族向けプレゼン資料」がネットを賑わしてから早1ヶ月。Twitterでは、2万リツイートを超えて大拡散。ファイターズファンに留まらず、スタートアップ界隈の人事担当者や、クリエイター、はたまた家族を持つ社会人もプレゼン資料を絶賛。目にした方も多いのではないでしょうか。
その企画の裏側を、株式会社北海道ボールパークの倉田さん、株式会社北海道日本ハムファイターズのトランさんに伺いました。
ー「家族向け転職プレゼンツール」、正式には「ご家族円満転職サポートテンプレート」が、ものすごく話題になりましたね。
倉田:
ありがとうございます(笑)。今回のプロジェクトは、2023年に完成予定の『北海道ボールパーク』を共に実現していくための人材募集だったのですが、おかげさまで5000名以上の方々にご応募いただくことができました。
今回の求人プロモーションでは、『北海道ボールパーク』プロジェクト全体に魅力を感じ、理解してもらうことを第一にしていて、そのための特設サイトやコンテンツの一つとして、おっしゃっていただいた「家族向け転職プレゼンツール」を制作しました。
じつは『北海道ボールパーク』の認知度は、東京エリアで30%弱(2018年末調査)。北海道内だと90%を超す認知率だったのですが、都心では感度の高いビジネスマンを除いてまだまだ認知が低い状況でした。
業界内では話題になっているんですが、世の中一般にもちゃんと知ってもらうところからやっていこうと、立ち上がった企画でした。
トラン:
企画がスタートしたのは2019年の7月頃で。
倉田:
上長からの「デジタル広告をつかって採用活動をしたらどうか」といった発案がきっかけです。
トラン:
…けっこう「思いつき」みたいな感じだったかもしれません(笑)
倉田:
そうそう。「できるでしょ」といったニュアンスでしたね(笑)
トラン:
しかもはじめは「8月あたまからやろう!」という無謀なスケジュールだったんですよ!
倉田:
さすがにそれだとコンテンツの作り込みが難しいので、スケジュール調整を行いながらなんとか8月中旬のサイト公開にまでこぎつけた…という経緯でした(笑)
ーそれでも1ヶ月半ほど。すごいスピード感ですね。
倉田:
そうですね。決まると早い。かなり自由度高くやらせてもらったという感覚がありますね。もともと案としてあがっていたのは、求人サイト、SNS、バナー広告を組み合わせた求人告知だけでした。それなら短期間でも出来るだろう、と。
ただ、それでは「そもそもプロジェクトの認知度が低い」という課題は解消されない。これだけ情報が溢れかえっている世の中でバナー広告を展開したところで、砂浜の中で一つの砂を見つけるようなものだと思ったんですよね。
私なりにどうすれば『北海道ボールパーク』の認知度があげられるか、考えもあって。ただただ露出するだけではダメだ、と社内の会議でもきちんと説明をして進めることになりました。
同時にこの時点で7月中旬。リリースまで1ヶ月しかない状況。とにかく時間がなかったので、すぐに動きました。
ー「家族向け転職プレゼンツール」は、家族の反対が意識されていて、かつユーモアもあってステキだなと思いました。
倉田:
ありがとうございます。お察しのとおり、最初のアイデアは、御社がレポートを公開されていた「嫁ブロック※」から来ています。
※(参考)「44%の方が、嫁ブロックを理由に内定を辞退!」嫁ブロック実態調査
エン・ジャパン「ミドルの転職」ユーザーアンケート集計結果
https://corp.en-japan.com/newsrelease/2016/3243.html
もともと私も東京で働いていたのですが、北海道に転居することになって。当然、家族に相談をしまして(笑)。また、球団職員と話をしていると、同様の経験をしている人が多かった。
なので、「家族に転職をプレゼンテーション」するというアイデアは面白いだけでなく、とても実用的だとも思ったのです。
今回の求人プロモーションでは、他にもタイアップ記事とかブランドムービーも用意していますが、一連のストーリーとして、応募者に腹落ちしてもらうには、こういうプレゼンテーションの形をとった方が、一つ一つ順序立てて納得して頂けるかな、とも。
さらに、できたらそこでバズらせるじゃないですけど、少しでも広げたい。そのために、何かユニークな表現が欲しい。そこの部分を東京のクリエイティブチームに相談して、形にしていきました。
ーそもそも1ヶ月で突貫なうえにバズを狙っていった、と……!
倉田:
正直、死ぬかと思いました(笑)
ーとくにSNSでも話題になっていたのが「アスパラガスが、太い!」の話ですよね。めちゃくちゃオモシロかったです。どうやって北海道ならではの「良さ」を決めていったのでしょうか?
倉田:
シンプルに私自身の体験、球団職員の体験が大きいですね。あとは東京のクリエイティブチームの人たちの客観的な立場での視点もいれて、ブレストをしながら決めていきました。
ポイントにしたのは、実用的かつ面白いところを拾うということ。
道内・道外の人両方からツッコミを得られるように……とか、かなりここはもめましたね(笑)。こういうカタチに落ち着きましたけど、正直ボツ案もたくさんありました。
トラン:
そもそも「北海道=遠い」というイメージがあるので、イメージを損なうことなく、魅力的につたえる方法は苦心しました。
倉田:
イラストを使ったり、表現のトーンのバランスも難しかったところですね。世の中に興味をもってもらうためにフックのある表現にはしたかったのですが、ファイターズが今まで培ってきたスマートでスタイリッシュなブランドイメージがある。
トラン:
当然イメージを壊すわけにはいかない。
倉田:
同時に、くだけた表現にもしたい……。なんとか真面目さと面白さのハイブリッドできないか。資料を面白おかしくカスタマイズした上で、ちゃんと実際にご家族を説得する時につかってもらうことも期待していました。
ーその結果、狙ったとおりの拡散になりましたね。
トラン:
それでいうと、想定を遥かに超えて拡散されましたね。Twitterを中心に多くの方にいじってもらえて、リツイート数は2万3000くらいまでに伸びたりもして。
その結果、テレビ番組に取り上げてもらったり、新聞社からの取材オファーもあったり。普段ならスポーツ紙からしかオファーがないのですが、全国紙でも取り上げてもらいました(笑)
ーあらためて求人でありながら企画としても成功ですよね。最後に今後について教えて下さい。
トラン:
今回は、ありがたいことにバズりましたが、これは一過性のもの。『北海道ボールパーク』の計画はまだスタートラインに立ったにすぎないんですよね。2023年に開業し、どんどん進化していくプロジェクト。人材募集もフェーズが変わってさらに重要になると捉えています。
倉田:
実際、北海道ボールパークの開業に先立ち、新たに飲食事業やファシリティマネジメントといった今までに無いポジションの人材ニーズが出てきそうです。そのため、また新たな企画とともに求人を行う可能性もあるので、楽しみにしていただければと思います。次回はもう少し余裕のあるスケジュールでやれることを願っています(笑)
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