PMとして一人前になりたい。そんな駆け出しPMに向けてスタートした新連載「PM1年目の教科書」。今回お話を伺ったのは、 メルペイ PdM 山本久智さん。創業期のメルカリにジョインし、PMとして「メルペイ」の立ち上げをリード。彼の成長を支えたのは、新人時代に徹底した「ひとり反省会」だった。
「メルペイ」をはじめ、「メルカリ」のプロダクト企画・開発に携わってきた山本さん。順風満帆にキャリアを歩んできた...かと思いきや、新人時代は力不足を痛感したという。
プロダクトマネージャーとして、プロジェクトを滞り無く進めるプロジェクトマネジメントって必須スキルのひとつですよね。
じつは、はじめて担当した大きな案件が、2015年にリリースした「らくらくメルカリ便」だったのですが、かなり苦労しました。
仕様の定義もスケジュールも自らつくったのですが、その粒度が甘くて大幅な軌道修正が必要になって。進捗が悪いときにも、ちゃんとアラートを出して解決に向けて動けなかったり...。
そもそもプロジェクトマネジメントって何をするのか。どう進めるべきなのか。全然理解しないまま、なんとなくの自己流でやってしまった。がむしゃらにプロジェクトを前に進めようと思っても、次から次へと課題が出てきてしまいました。
なんとか無事にリリースできたものの、当時のプロジェクトメンバーにはかなり負荷をかけてしまったと思います。たくさんフォローをしてもらって…。当時の経験は、プロジェクトマネジメントの基本を学ぶ貴重な経験となりました。
駆け出しPdMだった彼は、徹底して続けていたことがある。
やっておいて本当によかったなと思うのは、プロジェクト後の「ひとり反省会」です。本を読んだり、勉強会やイベントに参加したり、インプットも心がけていましたが、一番自分の糧になっているのは「自分の体験」から学ぶこと。
プロジェクトって終わっても振り返らずに、そのまますぐ次のプロジェクトの担当に...ってやってしまいがち。忙しい、時間がない...とはいえ、それって学ぶ大きなチャンスを逃していて、すごくもったいないことだと思うんです。また、やっていても、「形式だけ」の振り返りになってしまうこともある。
僕の場合、むしろ無理やりにでも時間を確保して、優先順位高く「振り返り」に取り組んでいました。
今回のプロジェクトは、なにがよかったのか。なにが課題だったのか。もっとスムーズに進めるには、次にどうしたらいいのか。ひとつひとつのプロセスと意思決定を細かく洗い出し、自分自身の行動を徹底的に見つめ直していました。イメージとしてはKPTに近いです。
そして、もし同じようなシチュエーションになったとき、自分の中で「このときはこうすれば良い」という教訓を導き出しておく。記憶はどんどん薄れてしまうので、僕はプロジェクトが終わるたびに時間を必ず確保するように習慣づけていました。
ひとり反省会で、教訓が自力で導き出せないときもあります。そんなときは、自分よりも経験豊富な先輩に「どうするとよかったのか?」を聞いて、アドバイスをもらうようにしていました。
PdMとして身につけるべきスキルは多岐に渡るので、個人的には「目の前の仕事で成果を出す」ことに注力するのが一番の近道なんじゃないかと思っています。多様なプロジェクトのなかで、必ず自分の足りないところにぶちあたる。その部分を埋めるためにどうしたらよかったのかを振り返る。
とにかく担当しているプロジェクトを成功に導くこと。ここに注力してきたので、結果的に満遍なくPdMとしてとしてのスキルを身につけてこれたと思いますね。
大学時代にデータ分析を学び、もともと自身の得意領域としていた山本さん。ただ「グロース」という観点で、抜けていた大切な視点に気づいたという。
データを見たり、集計したり。分析結果をベースに打ち手を考えてみるもののなかなか数字を伸ばせなかったことがありました。
その中で気づいたのは、価値ある分析というのは、次のアクションにつながること。なにを改善するべきなのか。そういったアウトプットを見越した分析でなければ、ただ時間の無駄遣いになってしまう。
今でもデータをさわるとき、「その分析は、改善につながるのか?」という問いに立ち返るようにしています。プロダクトの改善につながる分析が、グロースの出発点になると信じています。
「メルペイ」の構想段階から、企画・開発に携わってきた山本さん。金融領域のプロダクトだからこそ、PdMとして心がけていることがある。
金融領域ではプロダクトの性質上、「攻めと守り」のバランスをとることを常に心がけています。
まず、攻めという観点では、プロダクトの「わかりやすさ」ですね。決済というサービスは、広範なお客さまにわかりやすく・便利に使っていただけるプロダクトになっているか。決済・金融という領域は非常に難しい分野ですが、お客さまが当たり前のように接することができるものでなければ普及しません。その中でメルペイならではの新しい体験をどのように提供していくかというところを大事にしています。
その一方で複雑なシステムや、法律は絶対に守らなくてはいけない。「守り」の部分も非常に重要です。
お客様の利便性をどんどん上げようとするあまり、法律とか、コンプライアンスが一線を越えるということは絶対にあってはいけません。メルカリには既存の金融機関出身の人やコンプラやリスク面での知見をもったスペシャリストも多いので、彼らと連携しながら最適なプロダクトづくりを進めています。
最後に伺ったのは、PdMとしていつも大事にしている心構えについて。
「メルペイのPdM」といっても業務内容は多岐に渡るのですが、共通して求められるのは難易度の高い課題に対してワクワクできる力。言い換えれば、「カオス」な環境を楽しめるという能力だと思います。
とくに決済・金融領域は複雑で制約条件も多いですが、その中での変化が激しいため、昨日言ってたことを、今日変えなきゃいけないということも起こってくる。戦略を立ててもかなりの頻度でアップデートをする必要があります。
「カオス」な環境に対して、解決に向けて動き出せるかどうか。そうした状況を「つらい」というよりも、むしろ楽しめる人のほうが活躍できると思います。
僕自身、基本的には「しんどい」と感じたことが実はあまりありません。平常運転な状況よりも、この「カオスな状態」が楽しいですね。
取材 / 文 = 野村愛
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