2019.11.18
「プロダクトを創るように組織をつくる」|エン・ジャパン 岡田康豊

「プロダクトを創るように組織をつくる」|エン・ジャパン 岡田康豊

PM(プロダクトマネージャー)のエンゲージメントをいかに向上させるか。「HEX」なるPMスキルチャートを独自で作成し、活用したという岡田康豊さん(エン・ジャパン)。『プロダクトマネージャーカンファレンス2019』登壇の様子をお届けする。

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2019年11月12日に開催された【 Product Manager Conference 2019 】よりレポート記事をお届けします。

【プロフィール】岡田康豊
エン・ジャパン株式会社 デジタルプロダクト開発本部長・プロダクトマネージャー。制作会社でのWebデザイナー経験、CCC、DeNAでのプロダクトマネジメント経験を経て、2012年にエンジャパンに入社。エン転職を始め、「エン転職」「engage」「HR On Board」など複数のHR Techプロダクトのプロダクトマネジメントに従事。2014年にデジタルプロダクト開発本部 部長に就任。HRの知見を活かし、プロダクトマネージャーの育成や組織開発、組織マネジメントもおこなう。
twitter:@middleOkada

PMが自身の役割・スキルが説明できない組織だった

「私がデジタルプロダクト開発本部長に就任したのは2014年のこと。当時、自組織の状況は散々たる状況で、1年足らずで退職してしまうPMが続出していました」

組織課題について、赤裸々に語ってくれた岡田さん。「メンバーのテクニカルスキルは高いとは言えず、開発は外部パートナー1社にお任せしており、開発スピードも遅かったんです。優秀なPMに仕事が集中し、リソースが逼迫していた。なかなか、新プロダクトが生まれないという悪循環に陥っていました」

こうした課題を解決するために、社内のPMメンバーにヒアリングを実施。辛辣な声も聞こえてきたそうだ。

こうした声から見えてきた自組織の課題は3つ。

「これは一般的なPMが抱えやすい不安だと感じました。解決策を模索していくなかで出会った本が『インスパイアド(*)』です」その本には以下のような一節があったそうだ。

ダメな製品が無駄に世に送り出される一番の原因は、ほとんどの場合、会社の中でプロダクトマネージャーの役割が明確にされていないことと、プロダクトマネージャーとなる人に対する教育が不十分なことにある

(*)引用:マーティ・ケイガンの著書『インスパイアド〜顧客の心を捉える製品の創り方』)

「PMの役割の明確化と教育が不十分であると改めて気づかされました。よい製品をこの組織から生み出していけなくなるのではないか。危機感がありました。そういった経緯もあり、2年前から及川卓也さんにプロダクトのテクニカルアドバイザーをしていただくことになりました。

及川さんが常におっしゃるのが、“組織づくりはプロダクトづくりと同じ”ということ。結局、組織が磐石でなければ、社会に対して最適なプロダクトを送り出すことができない。組織づくりにも情熱を注ぐ。その重要性に気づかされました」

PMの役割を明確にする

まず取り組んだのが、役割の明確化だ。

「Facebookなど他の会社ではどんなPMがどういった仕事をしているのか調べ上げ、その上で自社のPMの役割を定義することから始めました」

最終的にこういった役割として一旦定義された。

“プロダクトの価値を最大化し、ユーザーに届ける”“関係者をつなぎながら、そのプロセスを先導する”

PMが持つべきスキルを特定するために次に行なったのが、PMに必要なスキルの定義だ。

「PMはプロダクトをつくるだけではダメで、プロダクトの成長と成功のために広める能力も必要です。プロダクトをつくるプロダクトマネジメント、Dev、デザインに加えて、プロダクトを広めるグロース、ビジネス、ドメインナレッジも必要だと思い、この6つのスキルを定義しました」

さらに、それぞれの領域で5段階のレベルを設け、各レベルに対する目安スキルも設定した。

理念・ビジョンを共有したマトリックス型の組織へ

最後に、自分たちがどんな集団になりたいか、改めて定義をしていったという。

「上司がどうとか、メンバーがどうとかではなく、あくまで“プロダクトとユーザーが一番”という理念を共有し、現在はマトリックス型の組織として運営をしています。もちろんまだまだ途上ですが、ここ数年、退職者の数は以前よりも減りました。いくつかのプロダクトで内製化が進み、外部パートナー10社とも連携しています」

特に変化が大きかったのが、テクニカルスキルに対するメンバーの習得意識だという。

「スキルチャートのおかげで自分は何が強くて弱いのか、誰と協力すべきなのか、を話し合う風土ができました。結果、メンバーが自走するようになり、自主的にSQLに関する勉強会も開催されています。相互に教えあう文化も根付き、いまでは95%以上のPMが自分でSQLを書いて、データ抽出して、分析ができるレベルです。いずれにせよPMのスキルアップが欠かせなかったと思っています」

参考:プロダクトマネージャーに必要なテクニカルスキルを定義してみた話

HEXの6領域は、大きく2つの能力に分けて考えることができます。それは、プロダクトを「創る能力」と「拡める能力」です。つまり、プロダクトマネージャーは「プロダクトを創り、拡める」ためのスキル獲得が必要だという解釈を私はしています。

PMが変われば、社会が変わる

 最後に語ってくれたのは、PMにかける想いについて。

「先ほどスキルチャートを紹介しましたが、うちの組織で5点満点の人がどれだけいるのかというと、そんな人間はほとんどいません。PMはスーパーヒーローである必要はないと考えています。ただ、PMは誰よりもプロダクトの成功と成長にコミットし、プロジェクトを推進しなければいけない。

これまでたくさん失敗してきましたが、私はエン・ジャパンでのPMを通じ、日本の未来を担っていることを強く認識できました。これからもプロダクトの成功と成長にコミットし続けていきたいですし、みなさんにもそうなってほしい。それが、日本や社会がよくなっていくことにもつながっていくはずです」


取材 / 文 = 田尻亨太


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