1~3ヶ月待たなければならなかった報酬の振り込みが即日に!『yup先払い』は、フリーランスの強い味方だ。立ち上げたのは、普通の会社員だった阪井優さん。とにかく周囲の人を頼りまくって走る!オフィスも仲間もゼロからはじまった、初めての起業奮闘記に迫る。
[1]請求書が即日お金に?全フリーランスの味方、『yup先払い』の衝撃
[2]ドタンバで共同創業者にフラれた!普通の会社員だったぼくが、初めての起業で学んだこと
――『yup先払い』のリリース、おめでとうございます!まず最初に、阪井さんがフリーランスの課題に目をつけ、起業した経緯は何だったんでしょう。
じつは、計画的に起業を進めていた、というわけではないんです。もともと何か事業をやってみたいとは思っていたのですが、昨年2018年の11月頃ですかね。「もうこれはやるしかないぞ!」って思えた出来事があって。
当時僕は、コイニーというクレジット決済サービスの会社で営業をしていました。そこでユーザーの方から、「クレジットカードの支払いが翌月で資金繰りが厳しい」という声をよく聞いていて。
そういった現況を何とかできるサービスがあったらいいな、なんて思っていたときに、ちょうどNewsPicksが主催する「起業家道場」に参加する機会があったんです。
そこで『yup先払い』のベースとなるビジネスモデルを投資家さんたちの前でプレゼンしたら、予想以上に様々なフィードバックをいただけて。翌月12月には、インキュベイトファンドさんから出資のオファーももらえたんです。
「資金繰りに悩む人のための事業をやろう」と、一気に火がつきましたね。そこからバタバタと会社の退職交渉や引き継ぎをして、翌年4月に独立しました。
――すごい行動力ですね……!
そうなんです。ただ、いざ独立したものの、オフィスもなければ仲間もいない。とりあえず毎日けやき坂にあるスタバに通って、2Fの奥の席で朝から晩までプロダクトの構想を練っていました(笑)。
予期せぬハプニングもあって……。じつは、共同創業するはずだったエンジニアの友人が、起業直前に「やっぱりやめる」と言い出したんです。彼、ちょうど結婚や出産のライフイベントを迎えていて。大企業に勤めていたこともあって、「ごめん、このタイミングでスタートアップには行けない」と、急きょ断られてしまった。
もちろん彼はまったく悪くないし、幸いすぐに他のエンジニアの方が見つかったので大丈夫だったのですが(笑)。いま思えば、結構行き当たりばったりというか……ドタバタな起業だったなって思います。
――開発において、特に力を入れたことは?
まずはユーザーヒアリングを徹底的にやりましたね。そもそも僕とエンジニアの2人しかいなかったので、もうユーザーさんに仲間になってもらうしかなかったというか。
友だちのフリーランスの方から紹介してもらったり、ビジネスマッチングアプリ『yenta』を使ったり。正式な数は覚えていないのですが、20代から50代までのフリーランスの方50人以上からヒアリングをしたと思います。
資金繰りに困ったとき、親や友だちからお金を借りていること。それがものすごく心苦しいこと。実際の声に触れて、自分がフリーランスの実態をいかに理解していなかったかを思い知りました。
また、ひと口にフリーランスといっても職種によってお仕事内容が全然違うので、コワーキングスペースや勉強会などに顔を出して、実際に働いている様子もチェックして。
そこで、彼ら彼女らの「忙しさ」をまざまざと感じましたね。皆さん、休む暇もなく働いている。話してみても、「なるべく多くの案件を受けたいから、煩雑な事務処理に時間をかけたくない」という人が多くいらっしゃったんです。
開発に入ってからも、1週間に2〜3人のペースでユーザーさんに会ってヒアリングをしました。まず簡単なモックアップを数週間でつくって、できたものを触ってもらう。「ここが使いづらいね」「もっと手数料が安いほうがいいね」といろんな意見をもらいながら、ブラッシュアップしていきました。
フィードバックをもらうだけでなく、実際に触っているところを動画で撮影して確認したりもして。「この人はどこからクリックするのか」「視線の動きはどうなっているか」って、すごくアナログな方法ですけど動画を見ながら徹底的に研究したんです。
いま『yup先払い』では、請求額の全部でなく一部だけを受け取ることもできる仕組みになっています。最初は10万円の請求書をアップロードしたら10万円一括でしか受け取りができなかったんですが、ユーザーさんの声を聞いて、すぐに改善しました。
もう一つ、これは良いか悪いかわからないのですが、先輩からのアドバイスは全部取り入れるようにしていました。
というのも、初めての起業で本当にわからないことだらけで。経営、プロダクト開発、資金調達、法律……知識もスキルも圧倒的に追いついていなかったんです。
自分一人でできることなんて何一つもない。だからこそ、変なプライドは捨ててわからないことはすぐに聞き、アドバイスを受けたらすべて取り入れるようにしていました。幸いなことに僕は周りの人たちに恵まれていて。エンジェル投資家や起業家、デザイナーの友人にとにかく質問しまくっていましたね。
たとえば、いま会社HPのトップに「ヤップ応援団」という項目があるのですが。これは、アカツキのCEO塩田元規さんからいただいたアドバイスなんです。
リリース前日、僕らのサイトを見てもらったときに「会社概要がありきたりだから、もっと面白い要素を入れた方がいいよ。例えば、yupを応援してくれる人たちを紹介したらどう?」と助言をいただいて。
大急ぎでyupをサポートしてくれる人たち全員にメッセージを送りました。「写真と簡単なプロフィールをください」ってお願いして。結局、寝ずに仕上げてリリース当日の朝を迎えました(笑)。
塩田さんがどのくらい本気でおっしゃったのかはわかりませんが、結果としてすごく温かみのあるページになりましたし、やって良かったなと。
こだわりを持つことも大事ですが、まずは周囲の声を素直に聞いてみる。経営やサービスのあり方を洗練していくのは、これからでいいと思ったんです。でも、そういった姿勢でいることで協力してくださる人も増えたように感じますね。
――壁にぶつかりながらも、周囲の人の力を借りて真っ直ぐ突き進む。阪井さんを突き動かしているものは、何なのでしょう。
単純かもしれないですけど、やっぱり、自分の仕事で「困っている人を助けたい」という思いが強くあって。今回の場合、それがピタッとはまったんです。
もともと大学でプログラミングを勉強していたので、アプリやWebサービスづくりには昔から興味がありました。会社員になってからも、土日や平日の仕事終わりにサービスをつくっては潰し、つくっては潰し……をひたすら繰り返していて。
映画や漫画に関連するものなど、30〜40くらいはアイデアを出したと思います。でも全部、事業としてやろうとは思えなかった。
それってきっと、自分の中の「動機」が弱かったからなんです。いくら市場が大きかったり商機があったりしても、心からやりたいと思えなかった。
フリーランスの方が大きな課題を抱えていることを知ったときは、居ても立っても居られなくなったんです。あぁ、自分は誰かの「負」を解消することに大きなやりがいを感じるんだなって、そこで初めて気づいて。
いま僕たちが向き合っているのは、「スモールビジネスを営む人たちの資金繰りの問題」という、とても根深いもの。生涯をかけても解決できるかわからないような大きな課題だからこそ、立ち向かう力が湧いてくる。
「動機」をエンジンにして、フリーランスの方がもっと商売を楽しめるようなサービスをどんどん仕掛けていければと思います。
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