まだ成功するかはわからない。ただ、明らかに手応えが違う――。ノーコードで複数SaaSをつなぎ合わせ、業務を自動化する『Anyflow』の坂本蓮さん(27歳)。アイデアを得るまでに20個以上のサービスで失敗。そんな「サービスがコケまくる日々」を振り返ってもらった。
全2本立てでお届けします!
[1]業務効率化の未来は、「iPaaS」にあり。Anyflow 坂本蓮の勝算
[2]俺はマーク・ザッカーバーグじゃなかった。事業アイデアに迷走して気づいたこと|Anyflow 坂本蓮
クラウド型iPaaS「Anyflow」を手がける坂本蓮さん。
「Incubate Camp 12th」と「B Dash Camp 2019」で優勝。注目の若手起業家の一人だ。ただ、とくに2018年はどん底だったと振り返る。
「一時期、経営状況は最悪で。“社員に給料が払えないかも”というところまで追い込まれました。やめると言い出すメンバーもいて…病みましたね」
2017年4月に友人のエンジニア3名と起業、2年で20以上のプロダクトを潰してきた。
「どのサービスも覚悟が足りなかったと反省しています。“投資家の人がこう言っているから”とか“アンケート結果がこうだから”とか、言い訳ばかり。自己陶酔ばかりで解決したい課題に向き合えていませんでした」
創業3年。
「当然、Anyflowもまだ成功するかはわかりません。ただ、明らかにこれまでとは手応えが違う」
怒涛の日々を過ごしてきた坂本さんに、失敗から得た学び、そして「Anyflow」にかける思いについて聞いた。
―― Anyflowをリリースするまでに、幾多のピボットを繰り返したと。いろいろと失敗の理由はあったと思うのですが、もっとも大きな理由でいうと?
1番の失敗は、事業を決めずに起業してしまったこと…ですね。解決したい課題も、つくるべきプロダクトも、仮説もなく...とにかく「インパクトのあるサービスをつくりたい」と志だけで出資を受けてしまったんです。それでもやれると過信があったと思います。
みんなマーク・ザッカーバーグになりたいと思うんですけど…なれないですよね(笑)わかってるんですけど、憧れてしまう。
せっかく投資家の方々から期待いただいたのに、事業が全く決まらず、悩みまくっていた。その期間は本当に辛かったです。また、投資家の方のバックアップがあると、アドバイスがたくさんもらえてありがたかったのですが、自己資本率も下がり、プレッシャーも大きいと感じるようになって。
いま思うと、事業アイデアが決まるまで自己資本でどう走り抜くか。もしくはデットファイナンスでいかに乗り越えるか。考えを詰めておくべきだったな、と。仮にお金がなかったとしても、やれることはあって。ちゃんとファクトを積み上げて仮説を持った上でトライする。インパクトが見込めてから調達すべき。なんだかんだ1年半くらい模索する日々で、どん底でしたね。資金もショートしかけて、エンジェル投資家の方々からなんとか2000万円ほど出資いただき、なんとか耐え忍びました。
―― 具体的には、どんなサービスを閉じたんですか?
たとえば、3ヶ月で作って2週間で閉じたのは「ルームメイト」のマッチングサービスですね。マネタイズについて全然考えられていなくて。あとタイミングも微妙でしたね。ちょうど民泊新法が改正されるタイミングで民泊が下火になり、また、別に「ルームシェアしたい人」が増えるわけでもなく。もっといえば、チームの誰ひとり、ルームシェアの経験がなかった。「なんで僕たちが作ってるんだろ」と矛盾もありました。
いま振り返ると、僕らみたいにすぐ作ってすぐやめるって、シンプルに覚悟も足りていなかったんだと思います。本気でやるのであれば、少しずつでもピボットしたり、修正したりして、何とか続けようとするはずで。
立ち上げた3人とも、給料を極限まで下げていた。服も買わず、食費もぎりぎり。もちろんオフィスなんてないし、共同創業者の家でやっていました。どんどん気持ちが下がっていって…光が見えないのが辛かったですね。でも成功している起業家の人って大体同じようなこと言う(笑)だからまあ…乗り越えなきゃいけないよな…とは思っていました。
―― メンバーたちとの衝突はなかったのでしょうか?
めちゃくちゃありました。「やめる」と話もよく出ていて。ただ、誰か一人でも欠けたら死ぬ、みたいな状態だったんで、なんとか耐えていましたね
―― 失敗から得た学びがあれば教えて下さい。
一番の学びは「アップサイドの市場で勝負をする」ということです。それまではユーザーのインサイトありきでプロダクトをつくっていたんですけど、方針を切り替えました。
たとえば、『Anyflow』でいえば、日本の労働人口は確実に減っていきます。ここは変えられない。労働生産性を向上させないといけないので、SaaSが普及します。その先に待っているのが、多くのSaaSを使うなかで、どう一元管理するか、という課題。海外で見るとすでに同じような課題が出てきており、類似サービスが伸びている。まだ国内にはほとんどないサービスなので、「今」であればこのポジションが獲れると考えています。
参考記事:業務効率化の未来は、「iPaaS」にあり。Anyflow 坂本蓮の勝算
とくに決めたのは「売れるまでコードは書かない」ことです。toBであればなおさら。最近は、ノーコードでプロトタイプをつくって試す文脈もありますよね。なるべくエンジニアの手を動かさない。特に初期はエンジニアチームであればあるほど物が作れてしまうので、つい作り込んでしまう。コードを書いているうちは仕事してる感があり、安心できるのですが、そもそも売れないものを作っている可能性が高いです。
同時に、僕らはエンジニアだけの組織だったので、自分たちだけでプロダクトをつくることはできた。その強みを生かせる領域かどうか。ここもポイントでした。
大学1年生ぐらいの時からずっとtoCしか作ってなくて…今さらですが、たぶんあんまり向いてなかったんだと思います。センスがなかったんでしょうね(笑)
きっと、ビジネスの方がロジックが説明しやすいtoBのほうが向いていて。『Anyflow』であれば、内製で同じ仕組みを作ろうとした時、どのくらいの工数がかかるか、開発予算に置き換えるとどうか、転換できるんですよね。もともとエンジニアなので、ロジックに矛盾なくやれているのも大きいかもしれません。
―― 今回「『Anyflow』で勝負する」と決めた時、メンバーの反応はどうだったのでしょうか?
「ラストチャンスだと思って頼む。これで最後にするから」と話をした記憶があります。「お前がそこまでいうなら、いいんじゃないの」と。
じつは過去、月300万円くらい稼いでいたSaaSを個人でつくったことがあったのですが、『Anyflow』を思いついた時はその感覚に近くて「これはいけるぞ」と。
市場は大きいのに、既存サービスに100%満足している人がいない。
もちろんまだ成功していないですが、明らかにこれまでとは手応えが違う。もう後はないと思っていますし、あとは勝負をしかけていくだけですね。
>>>[1]業務効率化の未来は、「iPaaS」にあり。Anyflow 坂本蓮の勝算
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