2020.02.19
業務効率化の未来は、「iPaaS」にあり。Anyflow 坂本蓮の勝算

業務効率化の未来は、「iPaaS」にあり。Anyflow 坂本蓮の勝算

Anyflowは多岐にわたるアプリケーションを連携できる「業務の自動化プラットフォーム」だ。たとえば、Slackでコマンドを打ち込むと、freeeに勤怠情報が打刻されるなど。iPaaS(アイパース)と言われる仕組み。「日本でiPaaSが普及するのは必然」と語るのは、Anyflow 坂本蓮氏。その勝算に迫った。

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iPaaS(※)「Anyflow」とは?
・プログラミングなしで複数のSaaSをつなぎ合わせる
・業務を自動化・効率化できる
・RPAでは止まるアプリでも、Anyflowなら止まらない
・日本語UI、日本語サポート、日本アプリケーションに対応
※…iPaaS(アイパース)は、integration Platform as a Serviceの略。SaaSに代表されるようなクラウドサービスとオンプレミス型のサービスを統合する。

+++プログラミングレスで複数のアプリを連携。エクセルのマクロがわかる程度のスキルがあれば、エンジニアでなくても業務を効率化・自動化できる。従来のRPAではアプリの画面変更に弱く、外部要因でロボットが壊れてしまう。Anyflowは公式的に用意されているAPIを活用しているので、アプリの画面変更があってもワークフローが止まることはない。現在200社から問い合わせがあり、トライアル含め約10社に導入されている。

iPaaSを完全にクラウド化していく

 ――そもそも「iPaaS」は聞きなれない言葉ですよね。

iPaasは integration Platform as a Serviceの略で、シンプルに言うと、さまざまなクラウドサービスを連携、効率化するシステムです。

たとえば、
Salesforce
Slack
Dropbox

これらを連携し、使えるようにもできます。

具体的には、

▼新しい商談情報をSalesforce上に作成したら契約書の電子締結が行われる
▼Dropboxに添付ファイルがアップロードされる
▼SlackにSalesfoceのURLを貼れば、取引先情報をSlackに自動でポストさせる

などが可能です。

また、社内的な使い方でいえば、

SmartHR
Gmail

SmartHRの従業員データをマスターにし、広報事項を従業員全員にGmailが送る。

などといったことができます。これまで個別に存在していたアプリケーションをつないで、業務を最適化、自動化ができるのです。

+++【プロフィール】坂本蓮1992年山梨県生まれ。中学生の時からプログラミングを始め、経済産業省主催のU-20/U-22プログラミングコンテストの受賞、KDDI∞Laboの採択、シリコンバレーでのインターンを経験。大学卒業後、株式会社サイバーエージェントに入社。サーバーサイドエンジニアとして、API基盤開発に従事するも1年で退職。その後Anyflow株式会社を創業。数多くのピボットを繰り返し今に至る。

日本での「iPaaS普及」は必然

 ――「Anyflow」の特徴とは?

「Anyflow」はクラウドネイティブ型のサービス。完全にiPaaSをクラウド化しているのは、僕らが観測している限りだと国内初だと思います。

iPaaS自体は20年ほど前からあり、概念的には決して新しいものではありません。ただ、ずっと国内ではオンプレミス型のサービスでした。

海外だとクラウドネイティブiPaaSは当たり前。iPaaS事業を展開するスタートアップも多い。アメリカをはじめ、海外だと日本と比較にならないほどSaaSの普及率が高い。SaaSが増えれば増えるほど、iPaaSはプロダクトの価値が上がっていく。

2018年、世界屈指のiPaaSベンダーである「Mulesoft」をSalesforceが約7000億円で買収していて。数兆円規模の市場がないとそんなバリュエーションはつきませんよね。それだけ海外には大きな市場が存在していることになります。

労働人口が減る未来が確定している日本では、生産性を高めることが急務。日本での「iPaaS普及」も必然だと考えています。

+++ここ6年でiPaaS市場は165%ほど伸長。2019年10月にβ版のAnyflowをリリースし、問い合わせは200件ほど。トライアルを含めた導入が進んでいる。「プロダクト単体では国内iPaaS市場は大きくないが、 ETL とEAI などの領域を含めると150億円ほど、RPAを含めると1000億円はあると考えています」と坂本さん。

テック企業には「RPAのクラウド化」のニーズが薄かった

ーiPaaSに目をつけた背景はどうしてだったんですか?

偶然の産物、とも言えるかもしれません。

もともとは「クラウド型の RPA」を展開しようと、プロトタイプを作っていたんです。とくに日本を代表するようなテック企業にヒアリングしていたのですが、全然刺さらなかった(笑)ニーズがなかったんです。知り合いの紹介でターゲット企業にアポをとっても、「何がいいのかわからない」とボロクソに言われることもありました。

そもそもイケてるテック企業は、SaaS をたくさん使っていて、RPAはあまり導入していない。RPAによってSaaSのサービスを自動化しても、UIの変更によってロボットが壊れてしまったり、保守やメンテナンスコストが高くなるので敬遠されていて。RPAを入れてるとしても、一部レガシーシステムとのつなぎこみとか。

で、どう業務を自動化していたか。代替手段として「Zapier」などのiPaaSが使われていることが多かったのですが、

「UIが日本語じゃなくて社内に展開しづらい」
「エラーが起きた時にサポートがない」
「国内サービスに連携が対応してない」
「企業が使うにはセキュリティが不安」

と、インサイトが得られ、クラウド型のiPaaSへとピボットしました。

Googleにないデータが、僕らの強み

――類似サービスが出てきた際の勝算とは?

先行利益はあると思います。「Anyflow」は特性上、かなりエンベットされるプロダクト。一度入り込んでしまえば、クライアントは類似サービスに乗り換えるメリットがほとんどありません。

また、導入社数が増えれば増えるほどデータも蓄積される。どんな会社が、どんなSaaSを使い、どのようなワークフローで、何を自動をしているか。ベストプラクティスのデータが活用できれば、クライアントにもワークフローが提案できると考えています。営業先で事例の紹介をすると反応がいいんですよね。

そのデータは、Googleでも持っていないはず。SaaSの集合的データを保有できることは強みだと思います。

とくに、ひたすらC向けのプロダクトをつくってきた過去があり、使い勝手にはこだわりがあります。「Anyflow」はB向けの業務システムですが、知見は活かせるはず。さらにプログラミングが一切できない人にも使ってもらえるプロダクトに進化させていく。

もうひとつ、クラウド型を軸としながらオンプレとつながったほうが価値は出せる場面もある。ここにも対応していきたいですね。

+++リリース直後から多数の問い合わせがきた「Anyflow」。「自動化へのニーズの高さが実感できた」と坂本さんとくに「エンジニアの時間を割きたい」という声が多い。

>>>【2】俺はマーク・ザッカーバーグじゃなかった。事業アイデアに迷走して気づいたこと


文 = 田尻亨太
取材 / 編集 = 野村愛


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