2020.05.18
最後に部下と雑談したのはいつですか?ロジカルな上司ほど陥りやすいリモートマネジメントの落とし穴

最後に部下と雑談したのはいつですか?ロジカルな上司ほど陥りやすいリモートマネジメントの落とし穴

リモートワークでも、メンバーをモチベートし、成果につなげていくために。いまリーダーに求められるマネジメントとは?オンラインカウンセリングサービス「cotree」を手掛ける、櫻本真理さんに伺いました。

メンバーの不調に気づけてますか?

メンバーがなにしているのかわからない...
メンバーからの相談が減ったな...
メンバーのモチベーション引き出せているだろうか...

リモートワークのなか、こんな悩みやもやもやを抱えているリーダーも多いのではないでしょうか。私(筆者)自身も、数名のチームを率いるリーダーとして、メンバーとのコミュニケーションも模索しているひとりです。

リモートワークでも、メンバーをモチベートし、成果につなげていくために。一体いまリーダーはどんな役割を担い、メンバーとコミュニケーションをとるといいのでしょう。

そこで今回、お話を伺ったのは、オンラインカウンセリング/コーチングサービス「cotree(コトリー)」と人を生かしチームを育てるリーダーになるためのコーチングプログラム「CoachEd(コーチェット)」を手掛けている、櫻本真理さん。ご自身もエグゼクティブコーチとしてさまざまなリーダーの悩みに向き合っている方です。

リモートワークも長期化し「少し慣れてきた」というリーダーも、絶賛壁にぶつかり中なリーダーもぜひ読んでみてください。自分自身のマネジメントを省みるきっかけになるはずです。


【プロフィール】櫻本真理(さくらもとまり)
京都大学教育学部卒業後、モルガン・スタンレー証券、ゴールドマン・サックス証券にて勤務。証券アナリストとして2009年日経アナリストランキングその他素材部門20位、2010年同10位にランクイン。同社退社後複数のスタートアップやプロジェクトに携わり、2014年5月に株式会社cotree、2020年1月に株式会社コーチェットを設立。NPO法人Soar理事、株式会社CAMPFIRE社外取締役、産業カウンセラー、エグゼクティブコーチ、システムコーチ。

ロジカルなリーダーほど、雑談の重要性に気づけていない

ーリモートワークすることも、そのなかでマネジメントをすることも、はじめてのリーダーが多くいると思います。今回は櫻本さんにとくにリモートワークでリーダーが心がけておくとよいこと、実践するとよいことをぜひ教えてください。

まず最初に、「雑談」はとっても大切です。とくに、オンラインでのコミュニケーションは、目的志向性の強い会話になりがち。意識して機会をつくらないと、雑談しなくなってしまいます。

もちろん雑談をしなくても平気な人もいますが、メンバーの中には「雑談を必要としている人」がきっといるはずです。とくに空気を読む人や、周りに気を遣う人。「返信が来ないけど、相手はどんな気持ちでいるんだろうか」とか「いま話しかけていいんだろうか」とか、気疲れしてしんどくなってしまうんです。

一方、経営者やリーダーはオンラインコミュニケーションに適応できる人が多く、雑談の重要性を理解できてないケースも多い。とくにタスク重視の人やロジカルにものごとを考える人は雑談がなくても平気なことも多い。そういったリーダーが「雑談は必要ない」と思い込んでしまうと、チームの一定数は孤独を感じてしまい、働きづらくなってしまうのです。

+++櫻本さん執筆のnote「コロナうつにならないために、リーダーが最低限知っておきたいメンタルヘルスの基礎知識」より引用。

ーそもそも「雑談」には、どんな効果があるのでしょうか?

雑談の効果は、大きく2つあります。ひとつは、「人と人のつながりを感じられる」こと。動物が毛づくろいをするのと一緒で、雑談は温かな関係性を感じられる源泉になります。信頼関係の構築にもつながりますし、業務に紐づいた目的志向性の強い会話とは全く違う役割があるんです。

2つめは「ここにいてもいいんだ」という安心感をつくれること。仕事に関する会話は、「役割」に関するものなので、役に立てている限りはいいですが、生産性が落ちてくると「自分が単なる労働力としての存在」「価値のない存在なんじゃないか」と自己肯定感が下がっていく危険性もあります。メンバーが安全・安心感を持ちながら働くためにも、雑談は重要です。安心して話せる環境を作ることで、新たな視点や創造性につながることも多くあります。

「雑談タイム」を形骸化させないためには?

ーただ、忙しくなってしまうとどうしても参加するのが億劫になってしまいます。

たしかに雑談する目的や意味を感じられなければ参加しなくなってしまいます。なので、まず前提として「雑談の重要性」をみんなに共有できていることが大切です。チームの生産性を維持するために必要な施策として時間を確保してもいいのかもしれません。

あとは、きっちりフォーマットや型を決めずに、「雑談自体」を目的にすること。ちょっとした不安感や心配事、うまくいっていないことを共有できるようになります。

ちなみに私のチームではリモートワークになってから、毎朝9時から15分間の「チェックイン」と夕方5時から「チェックアウト」の時間をとり、業務の確認だけではなく、気持ち(嬉しかったことや辛かったこと等)の共有をするようにしています。

業務の話だけをしているとメンバーが疲弊してしまい、気持ちの共有だけをしていると継続しなくなりがちなので、そのバランスが重要です。

私のチームでは、このバランスがうまくとれはじめてから雑談が生まれやすくなり、ちょっとした会話に笑いあったり、ツッコみしあったりできるようになりました。

+++

いきなり細かくスケジュール管理してませんか?

ーリモートワークのなかで、メンバーがうまくパフォーマンスできているかどうか、把握するのもむずかしくなったように思います。とくにオンラインではどのようにマネジメントしたらよいのでしょうか?

リモートワークになったからといって、細かくスケジュールやタスク管理をしはじめると逆効果です。メンバーからすると、「信用されていないんだな」と思います。より一層つながりが薄くなり、仕事に対するコミットメントも生まれづらくなってしまうと思います。

大切なのは細かく管理することではなく、メンバーを信じることです。そして、メンバーのパフォーマンスがあがるように、あくまでも「支える姿勢」が大切です。

たとえば、こんな質問をしてみるのはいかがでしょう。

・なにか手伝えることはないか。
・いま苦労していることはないか。
・どんなことに困っているのか。
・まだ報告できてないこと、相談できていないことはないか。

メンバーが気持ちよく仕事を終えるためには、どんなサポートが必要なのか。そんなことをイメージすることが本質だと思います。

あとは、メンバーの状況を把握するだけでなく、リーダーからも自分の状況を積極的に開示すること。信頼関係はお互いにお互いのことをわかっていることによって成り立ちます。1日のTODO、成果物、助けて欲しいことなどを開示してみましょう。リーダーの状態を知れることで、きっとメンバーも共有しやすくなります。

「生産性が下がるのは当然」と捉えよう

ー リモートワークになって生産性があがっているかどうか。こちらをひとつの指標にしている組織やチームもありますが、リーダーは「生産性」についてどう捉えるといいと思いますか?

リモートワークという文脈以前に、とくにいまコロナの影響で状況が大きくかわっていく中で、「生産性が下がるのは当然のこと」だとリーダーは認識したほうがいいと思います。

コロナにまつわるストレス・メンタルヘルスの悪化要因はじつはたくさんあるんです。はじめての在宅勤務で、人によってはお子さんがいて集中できる環境ではない人もいるし、家の中にずっといることが苦手な人もいる。きっと生活リズムが変わった人もいるし、なにかしらの不安でメンタルを崩している人もいるはずです。

+++櫻本さん執筆のnote「コロナうつにならないために、リーダーが最低限知っておきたいメンタルヘルスの基礎知識」より引用。

そんな状況のなかで、「生産性が下がっている、怠けているのではないか」と指摘してしまえば、メンバーはリーダーに対する信頼感が一気に落ちてしまいます。

リーダーが心がけるべきは「メンバーのストレス要因」をイメージすること。そして、ケアすることです。

今メンバーはどんなストレスを抱えているのか。たとえば、ちゃんと眠れているのか、仕事環境はどうか。椅子もいつもとちがって肩こりや腰痛のあるメンバーもいるかもしれないですよね。ほんとにちょっとしたことがストレス要因になるからこそ、ケアする姿勢が重要です。「心配しているよ」「あなたが元気でいるのが必要だよ」というメッセージに、メンバーを自然とモチベートされていきます。

「私たちは今ここに向かっている」という北極星を示しましょう

ーメンバーの「目標管理」についても、気を付けるべきことはありますか?

これだけ大きく社会が変化し、不確定要素が増えるときは、目標値に基づいた管理は機能しません

目の前の業績が悪化しているケースも多いと思います。未達になれば不安は増大し、「この仕事って、一体なんのためにやっているんだろう」と目的を見失いがちです。自己効力感のなさは、モチベーション低下につながります。

だからこそ大切になるのは、目標の先にある「目的」。目的は、「私たちはここに向かっている」という北極星のようなもの。不確定要素はあるけれど、そのなかでなにを成し遂げようとしているのか。メンバーになにを期待しているのか。目的を明確にし、しっかりコミュニケーションをとることで、メンバーが安心して前に進めるようになります。

それに、変化にさらされている状況だからこそ、全員で考えて答えを探していかないといけない場面が増えています。いままでだったら同じやり方をしていれば前に進みました。でも過去の成功パターンが通用しなくなっているからこそ、メンバーが自分で問題を特定し、解決していく力が求められます。

目的をきちんと共有できていれば、メンバーは自分でやるべきことを考えるようになります。過去の成功パターンが通用しなくなっている今だからこそ、メンバーが自分で問題を特定し、解決していく必要があります。そのためにも主体性を引き出し、モチベートしていくことがリーダーの重要な役割になります。

チームのためにも、まずは自分自身を大切に。

ー最後にはじめてのリモートワークでマネジメントにチャレンジしているリーダーに向けて、メッセージをお願いします!

リーダー自身が抱えているストレスをそのままにせず、疲弊しないこともとても大切です。

コロナ後に経営者の方やリーダーの方からもご相談いただくことが増えていて、苦しんでおられるケースが多いです。

リーダー自身が抱えているストレスをそのままにしておくと、自分の悪いところがコミュニケーションの中で出がちになってしまうと思うんです。ストレスがなければコントロールできていたものが、イライラしてしまったり、相手を攻撃してしまったり。そんな不本意なコミュニケーションにつながる可能性があるので、まずはリーダー自身が自分の状態に気づくことが大切です。

いま自分はどんな気持ちなのか。その気持ちの原因はなにか。その気持ちは相手に由来しているのか、それとも自分が悪いだけなのか。まずは自分が心地よく今の環境に適用するためにできることはないか。そんなイメージを持ちながら、日々自分自身の状態を把握しておくのが、他のメンバーの状態にも敏感になるきっかけになります。

それから、課題解決をリーダーが背負いすぎないことも大切です。とくに責任感のあるリーダーに多いのは、ひとりで課題解決をしようとすること。コーチングでも、「なにかいい方法はないか」と相談いただくことが多いです。

たとえば、困りごとをみんなに共有してみるのもひとつですよね。みんなの問題として考えられば、メンバーも積極的にコミットするはず。ぜひチームとしての問題、いま起こっていること、難しいことをみんなに委ねてみるのにチャレンジしてみると、リーダーが疲弊せずにすむのかなと思います。


取材 / 文 = 野村愛


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