2020.09.29
10秒で読める小説!? 「54字の物語」仕掛け人、企画作家・氏田雄介(氏くん)のアタマの中

10秒で読める小説!? 「54字の物語」仕掛け人、企画作家・氏田雄介(氏くん)のアタマの中

たった54字で書かれた小説『54字の物語』。Twitterでは多くの人がハッシュタグをつけてこの超短編小説を投稿したり、読んだり、楽しんでいる。仕掛け人は、思わず「やられた…!」と唸る企画でファンを集める氏田雄介さん(氏くん)。その発想を知れば、日常がちょっと楽しくなる!?

116 98 2 5

※TOP画像「54字の物語ジェネレーター #54字の文学賞」より

Twitter「氏くん」ナカの人、氏田雄介ってなにもの?

「企画作家」

これは氏田雄介さん(氏くん:@ujiqn)が自分で名付けた肩書きだ。

"どうしたら人が乗っかりたくなるか"、という仕組みや、遊びのルールを考えています。いわゆる小説家やプランナーともすこし違うので、企画作家を名乗るようになりました」

自身が立ち上げた会社で活動しつつ、CHOCOLATE Inc.に所属する氏田さんだが、面白法人カヤックに入社後、「企画作家」として独立。インターネット・SNSを主戦場に、書籍やゲームなどの企画制作を手がけている。

今までには、至極「あたりまえ」のことをロマンチックな詩的に描く『あたりまえポエム』。

また、よくある「迷惑行為」をかわいい図鑑にまとめた 『カサうしろに振るやつ絶滅しろ!〜絶滅してほしい!?迷惑生物図鑑〜』などを手掛けてきた。

日常のちょっとしたスキマに潜むおもしろ、あるあるを発見し、企画化する。

素朴な疑問として浮かんできたのが、

「なんでそんなおもしろいこと、思いつくんですか?」

ということ。彼の発想を知れば、ちょっと日々が楽しくなるかも?そんな思いを胸に、氏田さんにお話を伺った。

+++ 氏田 雄介 :平成元年生まれ。早稲田大学を卒業後、面白法人カヤックに入社。2018年、株式会社考え中を設立し企画作家として独立。著書は、『意味がわかるとゾクゾクする超短編小説 54字の物語』シリーズ(PHP研究所)、『あたりまえポエム』(講談社)など。また『ツッコミかるた』など、つくったゲームはYouTubeでも人気。

フタをしがちな「ネガティブ感情」こそ、企画の源泉

まず『54字の物語』おもしろいですよね。とくにTwitterでみんなが新作を考えて投稿してて。大喜利やゲームにも近いのかも、と感じました。どうやって思いついたんですか?

実は、出発点はマイナスというか。「ネガティブな感情」をどうしたら作品にできるかな、というのがきっかけだったんです。

たとえば、自分にとって「できないこと」っていろいろありますよね。

小説とか書いてみたいけど、そんなに長い文章は書けないかもしれない…。そういう自信のなさから「逆に、短すぎる小説ってどうだろう」と生まれたのが、『54字の物語』でした。


+++ 『54字の物語』(PHP研究所)9マス×6行の「正方形の原稿用紙」に収められた超短編小説。テレビでもたびたび取り上げられ、シリーズ累計で35万部突破。2020年夏には最新作『54字の百物語』が発売された。


ネガティブな感情って、時には原動力になりうると思うんです。日常の中のブレ、揺らぎみたいな。そういうものが何もないより、マイナスでもプラスでも何かあった方が、自分らしい作品が作れるはずだと思って。

ネガティブな出来事があった時は「ネタができた」と思うようにしていて。

たとえば誰かに嫌なことを言われてしまった時は、「この人だったら他にどんな嫌なことを言うんだろう?」とか考える。1回きりだったらただ嫌なことですけど、それを100個集めたらもう作品ですよね(笑)

前提として、何か作品を作って表現したいというのが根本にあるから、ネガティブな感情も原動力になっているのかもしれません。

誰でも70点が取れる「仕組み」を作りたい

『54字の物語』では、本の読者やTwitterユーザーが作品を投稿していますよね?どうやってみんなを巻き込んでいますか?

意識しているのが、参加のハードルを下げることです。誰がやっても及第点の70点が取れる仕組みを作ろうと意識していて。

というのも、もともと自分が「小説を書きたいけど、できない」というところからはじまっているので、できるだけ誰でもできる仕組みにしたいんです。

『54字の物語』でいうと、54字ぴったりで書けたら、大成功。話が面白くなくてもよくて。

これがもし「何文字でもいいので、54字以内で書いてください」というルールだったら、急にハードルが上がってしまう。自由度が増えちゃって、迷っちゃう人も出てくると思います。

ルールがシンプルだと、その分参加しやすいし、広がりやすいのかなと。実際に、54字でクイズっぽい作品を作ったり、読者同士お題を出し合って盛り上がってくれていたりもします。

さっき、「『54字の物語』はゲームに近いと感じた」と言っていただきましたが、ゲームのおもしろいところって、「普段できないけど、やってみたいこと」を体験できる部分だと思っていて。一人でも楽しいけど、みんなでやるともっと楽しい。だから、「どうしたらみんなでできるか?」は特に考えているところです。

たとえば他の作品だと『ツッコミかるた』というものがあるんですけど。

僕はお笑いが大好きで、やっぱり芸人さんとか、しゃべりの達者な方の軽快なツッコミに憧れるんです。けど、できない。日常生活でそんなにボケることもないし、気持ちよくツッコめることもなくて。

それをやりたくて『ツッコミかるた』を作ったんです。これで思う存分ツッコめるぞと。

別にツッコミが合っていても、間違っていてもいい。まずは大きな声でツッコミを言えれば大成功。それだけで面白いんですよ。それも複数人の声が揃うと、それだけで笑えるんです。


+++ 『ツッコミかるた』(CHOCOLATE Inc.)「忍者か!」「お前はお母さんか!」といったツッコミが書かれたカードを使って、他の人のボケにツッコむゲーム。もとは氏田さんの「気持ちよくツッコミを入れてみたい!」という願望からはじまった企画だった。

じぶんの「違和感」を観察してみよう

もうひとつ『あたりまえポエム』も大好きです。これはどうやって思いついたんですか?


+++ 『あたりまえポエム』(講談社)心に響きそうで、響かない。あたりまえのことを、ラブソングの歌詞のような文体で美しい写真とともに綴っている。Twitterからはじまり、2017年に書籍化された。


『あたり前ポエム』は、ラブソングの詞を見て「冷静に考えると、結構当たり前のことを言ってるんだな」「なんか変だな」と思ったことがきっかけです。

そこから、これを極端にしたらどうなるかな?…と、その場で画像を作って投稿したところから拡散されて、最終的には本になりました。

その企画、温めすぎてない?


+++ 『カサうしろに振るやつ絶滅しろ!〜絶滅してほしい!?迷惑生物図鑑〜』(小学館)カサの尖った先端を後ろに向けて振る翼竜、「カサウシロフルス」。SNS上で他人に石を投げて炎上させる「イシナ原人」など、へんてこかわいいキャラクターを通してマナーを学ぶことができる


ちょっと大きな質問ですが…どうすれば日常のなかのおもしろを見つけたり、楽しめたりするのでしょうか。

自分でハードルを上げすぎないことは大事かもしれませんね。「おもしろいことをしよう」って思うと大変だし、イチから考えるって難しい。だから、「これおもしろいかも?」って思いついたことはすぐ試します。温めすぎない。ぜんぜん完成してなくても、いいんだと思います。

まずは出してみんなの反応を見てみる。Twitterでつぶやくのでもいいと思います。ダメだったらブラッシュアップすればいいですよね。

むしろ、どう伝えたらおもしろいか、共感してもらえるか。少しずつ考えていくイメージです。

『絶滅してほしい!?迷惑生物図鑑』誕生のきっかけは、氏田さんのこのツイートだった。


具体的に、アイデアを書き留めていたりもしますか?

アイデア…とまでは行かないかもですが、モヤモヤしたことや違和感を抱いたことは些細なことでもその場でスマホにメモしています。

たとえば、一番最近のメモには「ピアノ線ってそんなに万能か?」とありますね(笑)。

名探偵コナンとか推理小説とかのトリックで、ピアノ線がよく出てくるんです。犯人から凶器としてすごく信頼されている。でも僕は日常生活でピアノ線を見たことなくて。本当にそんなに使えるのかなぁ…と思って書いたんですね。

メモの内容は大して面白くないし、何にも活きないことがほとんど。ただ、そこから企画につながることもあって。

「変だな」っていう違和感だったり、「もやもやするな」ってところに、おもしろいことの種が隠れているとも思うんです。だからメモに残すようにしています。

企画は、「武器」になる

企画って意味が広いし、なかなか定義が難しいですよね。氏田さんはどう考えていますか?

企画って、普通の自分だったらできないところに食い込むためのツール、方法、武器なのかなと思うんです。

企画があれば、軽快なおしゃべりが苦手でも、お笑いのゲームが作れる。気持ちのいいツッコミを体験できる。企画があれば、小説を書けなくても本が出せる。

僕が「ネガティブさ」だったり、「できない」っていうことから発想していることにもつながるんですけど、企画って僕の中では、弱いものが持てる武器というか。弱くても勝てる武器みたいなもので。

そう考えると、企画って、すごく夢があることに思えてきますよね。


取材 / 文 = 平野潤


特集記事

リモートワーク時代の戦い方

新型コロナウイルスの影響によって進むリモートワーク。とくにテック企業でいち早く導入され、日々アップデートされている。リモートワークが当たり前となるなかで、いかに働き方を変え、さらに組織として戦っていくか。各社の取り組み、工夫、リモートワークのやり方などに迫ります。

AFTER 2020

時代は平成から令和へ。そして訪れる「2020年以降」の世界。2020年からの「10年」をいかに生きていくか。より具体的に起こすべきアクションのヒントを探る連載企画です。お話を伺うのは、常に時代・社会の変化を捉え、スタートアップと共に"一歩先”を見据えて歩まれてきた投資家のみなさんや、未来を切り拓く有志者のみなさん。それぞれが抱く「これから10年間で現実的に起こり得ること」と「新しい生き方」の思索に

お問い合わせ
取材のご依頼やサイトに関する
お問い合わせはこちらから