2020.04.23
1週間でECサービス立ち上げ。篠塚孝哉と考える、リモート時代の最小スタートアップ

1週間でECサービス立ち上げ。篠塚孝哉と考える、リモート時代の最小スタートアップ

オンラインのセレクトショップ『TASTE LOCAL』を約1週間で立ち上げた篠塚孝哉さん(Loco Partners創業社長)。聞けば、仲間とSlackのテキストコミュニケーションのみでリリースさせたそうだ。またボランティアスタッフ30名も1日で集結。コロナ状況下、いかにクイックでサービスローンチさせたのか。

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TASTE LOCAL
一流宿の美味しい味を、食卓でたのしめるECサービス、オンラインセレクトショップ。おうちにいながら、魅力的な一流宿のこだわりの食事からデザートまで楽しむことができる。

全3回
[1]旅館・ホテルを「お土産購入」で応援
[2]リモート時代の最小スタートアップ
[3]どうなる、旅行のこれから

Zoomすらしていない

『TASTE LOCAL』のリリースも非常にスピーディーで驚きました。

じつは思いついてから、Slackだけでやりました。ミーティングを一回もしていない史上初のEコマースかもしれないです(笑)電話も、Zoomもせず、チャットだけ。

募集した時に2人、真っ先に手を挙げてくれた運営メンバーがいて。サイト名、キャッチコピー、ロゴデザイン、商品セレクトもすべてオンライン。販売した時の送料のばらつきの調整、在庫の管理も、全部テキストコミュニケーション、チャットのみですね。

これって意外と「ウィズコロナ」のスタートアップスタイルなのかもしれないですね。オフィスもないし、メンバーとは会ってすらいない。出品いただいているクライアントとの契約も、紙ベースから全てメールやオンラインでのエビデンス、Googleフォームで代用できるものはしています。

商品に関しても、生産側から送られるので、自分たちで在庫を持つ必要はありません。リーガルチェックをしたところ、自分たちで在庫を預かると販売免許が必要になってしまうが、あくまで取次であれば免許も問題ない。品質管理の難易度や賞味期限があるものも多いので、宿から直送にして全国の食卓に届けています。

その中間に入り、コンセプトや見せ方、セレクトによる付加価値をつけて届けていく。モール型のサービスがかなりスモールでつくれた感覚があります。『Relux』を立ち上げた時と規模は違いますが、かなり似ていますね。

リモートボランティア30名が集結。集まる「応援」の思い

noteでボランティアスタッフも募集されたいましたよね。どのくらい応募があったのでしょうか。

1日で30~40人以上から連絡が来てびっくりしました。専門性がある人も、ない人もいて。みんなかなりサポートティブで、FacebookグループやSlackグループをつくって参加してもらっています。

震災などだと現場に行き、ボランティアに行くこともありましたが、それが今はオンラインになっている。新しいカタチですね。

じつは震災時も旅館の稼働率は落ちましたが、行って応援することはできたんですよね。訪問すればお金が落とせて、サポートもできた。そういうことができると思って『Relux』を始めた経緯もあります。だけど今は、物理的に行っても、応援ができないんです。

そもそも通販をやっていない宿も多い。すでにやっていたとしても電話やメールでしか買えないといった販売をしていたりもする。まだまだネットが活用できていない。ただ、買うことはできる。またリモートでボランティアができるので、応援のカタチも変わっていっていると思います。

モノを売っていく、という手触り。

「ネットで実際のモノを売る」というサービスを立ち上げられてみての感想があれば教えて下さい。

経営という観点でいえば、あまり宿泊契約サービス(OTA)との差は感じていないんですよね。Eコマースは宿泊予約サイトと構造がほとんど一緒で、事業戦略や経営戦略という観点では共通している。商品とユーザーをリボン図のように集める事業は同じだなと感じました。宿泊予約は体験で、ECは物が届くだけです

ただ、サービスの種類は違うし、ゼロからやっている新鮮さはすごくあります。というのは、ここ数年は現場の実務をまったく見ていなかったんですよ。メンバーに戻って手を動かしているのは創業期を思い出す。すごく懐かしい気持ちです。

写真を選んだり、もっとキレイに撮りたいとか、ストーリーのある商品説明はどんなものかとか、細かいこともボランティアチームと一緒にやったりして。1週間でリリースしたので、会社すら設立できていない。商標登録も先日したばかり(笑)優先順位の最上位を「とにかく最速で宿を助ける方法は何か」と模索した結果でした。

いかに「ネット」の外に届けるか

あとは認知が重要になってくると思います。SNSでのシェアはもちろんですが、いかにネットの外に広げていくか。考えていることがあれば教えて下さい。

まず1つはギフト系ですよね。

すでに発生しているのですが、ITリテラシーの高い若い人たちが、親に送る。ギフトの用途で使ってくれています。親やおばあちゃんにも会えないじゃないですか。だからプレゼントとして送り、楽しんでもらう。ここは重要なラインだと思っています。たとえば、すでに海外に住んでいる方が送ったというメッセージも集まっています。ここが広まれば、マーケットは広がりますよね。

とはいえ、普通に食品コマースとしてのマーケットが大きいので、まずはTwitter上でリーチできるよう、あれこれやっています。とにかく利益が出ていないので、広告も当分回せないはず。いま複雑な気持ちがありますね。サステナビリティがあるのか。最低限の運営手数料は頂いているが、非営利のままで持続できるか。

同時にnoteには「役割が終わったら無くなってもいい」と。

そうですね。「役目を果たしたから、解散します」はあると思います。最低限の手数料は運営に必要なものであり、このサービスで儲ける気はありません。

宿泊施設の稼働率が上がれば、それが収益源になり不必要な日は来るかもしれない。

もちろんこれ自体が宿泊に繋がるプロモーションやマーケティングの手法になっていると宿泊施設側が認識してくれれば、稼働率が100%になっても、ECをやった方がいいなとは思っていますし、売上のポートフォリオを宿泊以外で持つことの重要性は間違いなくあります

もしこのサービスがうまくいったら、宿側が自分たちでネットショップを作ってもいいですよね。

少しおこがましいような話に聞こえてしまうかもしれませんが、いま宿泊施設に人はいてもキャッシュの状況は非常に厳しい。このタイミングで新しくお金をかけて商品化はできない。インターネット上での売り方もわからない。人員もみなさんが予想されるようなIT系の人材はほとんどいない。『STORES』でショップをつくるのも難しいし、コストベースで見ても、それならば『TASTE LOCAL』に頼んだほうが安いレベルです。どちらにしても、しばらくは社会全体からのサポートが必要だと思っています。

[1]旅館・ホテルを「お土産購入」で応援
[2]リモート時代の最小スタートアップ
[3]どうなる、旅行のこれから


取材 / 文 = 白石勝也


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