2020.04.23
旅館・ホテルを「お土産購入」で応援。篠塚孝哉が『TASTE LOCAL』を立ち上げるまで

旅館・ホテルを「お土産購入」で応援。篠塚孝哉が『TASTE LOCAL』を立ち上げるまで

2020年4月10日、「地域のごちそう」が家でも楽しめるECサービス『TASTE LOCAL』が立ち上がった。発起人は『Relux』運営のLoco Partners創業社長、篠塚孝哉さん。同社の代表退任直後にサービスローンチへ。その裏側を追った。

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TASTE LOCAL
一流宿の美味しい味を、食卓でたのしめるECサービス、オンラインセレクトショップ。おうちにいながら、魅力的な一流宿のこだわりの食事からデザートまで楽しむことができる。

全3回
[1]旅館・ホテルを「お土産購入」で応援
[2]リモート時代の最小スタートアップ
[3]どうなる、旅行のこれから

「苦しくない宿泊施設」はひとつもない

『TASTE LOCAL』立ち上げの経緯から教えてください。

まずLoco Partners退任を発表したのが3月後半なのですが、そこから何社かの宿泊施設さんと連絡を取り合っていたんですよね。よくよく聞いていくと「厳しい」の次元が違った。とんでもない状況だぞ、と。現場から離れていたせいもあるが、なんでこれまでこんな重大な情報を把握できていなかったのかと悔やみました。

そもそもPLの構造が「宿泊施設」と「飲食店」は似ている。宿泊施設はさらに規模を大きくしたバージョンです。

たとえば、50室の旅館なら、50人くらいの社員がいて、人件費が重い。とはいえ、お客さんが1組でも宿泊していたら、全館の暖房をつけたり、温泉のボイラーも稼働しないといけない。飲食店よりも光熱費がとんでもなくかかるんです。日々食材の仕入れもしないといけないので食品ロスも激しい。キャッシュフローがとんでもないことになっている、と。

良くも悪くも、経営のスタイルがどんぶり勘定の施設さんも多い。ある分は使い、回収しつつ、借金で経営していくところもかなりあって。そういった苦が重なり、経営が危ないという声が聞こえてきました。それが3月の末くらいでした。遅すぎました。

4月1日になりLoco Partnersの代表は退任し、ゆっくり新しい事業を考えようと思っていたのですが、それらの話が忘れられなくて。

このコロナの状況下でできることがないか、脳内をぐるぐる回っていた。ふと電話をした一人でもある『浜の湯』さんは「金目鯛の煮つけがすごくおいしいし、あれはお土産をやっていたな」と思い出したんです。

パッケージ化もされているし、販売免許もあるし、あれをオンラインで販売したら何かの助けになるかもしれない、と。僕が行ったことのある旅館・ホテルだけでもかなりお土産はいっぱいある。それらをプチモールみたいに集められたら、美味しいし、見た目もきれいだし、セレクトショップとして面白くなるかもと考えました。

何より、自粛在宅で多くの人は食卓への課題が爆発しているなと。それが4月1日で、すぐに飲み仲間でもあるheyの佐藤裕介くんに相談をしました。ショップは「STORES」を活用し、すぐに販売したい商品を宿側で押さえてもらい、売れたら現地から送ってもらう形で進めました。

人は「What」よりも「Why」で動く

とくに意識されたことは?

『Relux』での経験が活きていて、地方の名産品をたくさん食べてきたので、それを活かしながらセレクトして、どれを食べても大丈夫だという安心感を提供していくこと。新鮮でない、美味しくないものが食卓に並んでも意味がないですよね。

あとはただ1つのお土産を並べただけだと、やっぱり弱いんですよね。人は、WhatよりもWhyで動くと強く思っていて。みんなが支援したい気持ち、僕自身がエモーショナルに感じる、地域を助けたい気持ち、買うことが応援になる仕組み。そのあたりがクロスして、結果的に支援者の輪になっていくのではないかと考えています。

今、感じているのが「コンテンツ」よりも「コミュニティ」の方が大事になってきている、ということ。もちろん楽しいコンテンツは今後も必要で。ただ、結局それを投下するコミュニティがないと真の幸福が生まれないんじゃないか。コンテンツを消費しているだけだと、社会は豊かにならないと今回の件で感じました。自粛によりみんなのコミュニティに対する渇望感が増幅されており、みんな何かを探しているように思えます。

宿泊に勝る収益にはならないが「買う」は応援になる。

立ち上げから1週間ほどが立ちましたが、見えてきたことでいうと?

少し売れるだけでも、宿泊施設側のみなさんがものすごく喜んでくれるんです。たとえば、先ほどご紹介した『浜の湯』さんも「暗いニュースばかりだったけど、ECサイトで金目鯛が数百匹も売れた。光が見えたよ、ありがとう」と言ってくださった。従業員のモチベーション、コンディションが急激に上がったと聞きました。私たちも本当に嬉しかったです。

宿泊施設はお客さんがいないとやることがなく、手持ち無沙汰になってしまう。だけど今は「金目鯛のパッケージを全国に配送するために金目を仕入れ、煮付け、梱包しと職人さんたちが手を動かしているから、調理場はざわざわしている」と。

やってみるまで気づきませんでしたが、すごく嬉しい声ですよね。本当にやって良かったなと思っています。

浜の湯名物「金目鯛姿煮」#食べるお宿浜の湯

兵庫の『西村屋』の但馬牛しぐれ煮や蟹山椒は、料理長が手間ひまかけて、すべて手作りで作っています。しかし、コロナの影響で休館となり、せっかく作ったものも廃棄せざる負えない状況であると伺いました。その数100個近く。そんな中で皆さんにたくさんご購入いただき、料理長も喜んでくださっているとメッセージをいただいています。

たしかに、金額のインパクトでいえば宿泊と比べたらかなり少ない。それでもコミュニティやつながりにより、喜んでくださっている。みんながそういった「光」が必要なんだと後で気づいたんです。

「地域のごちそう」は、食卓をデザインできる。

もう1つやってみて気づいたのは、地域のごちそうと食卓の相性は非常に良いこと。

食卓に届いたお土産を食べてると、家族で会話になるんですよね。「浜の湯の金目鯛、おいしいね。泊まりに行ってみたいね」とか。「西村屋の料理長が作ったおかずは絶対にスーパーで売っていないよね。兵庫に行ってみたいね」といった会話につながるんです。普通のECサイトではあまりない、食卓をデザインしている感覚がありました。

今後、協力を得たいことなどあれば教えて下さい。

一番は買ってSNSでシェアしていただくことです。現状、『TASTE LOCAL』として、うちの利益は全く出ない仕組みですが、「買っていただくこと」が宿にとっての喜びになります。何よりも自分たちの商品を買ってもらい、食卓に並ぶ体験は、宿泊施設側にとっても、すごく新しい。それを増やしたいので、とにかく「地域」を味わってほしいです。そしてみんなで会話をしてもらいたい。自宅にいても暇じゃないですか。食卓を彩るものとして、週に1回くらい地域を食べても損はないし、楽しい。継続的に購入してくれる世界観になればいいなと思います。

もうひとつ、かなり急激に引き合いがきていて。たとえば、販売商品のレコメンドもほしいです。「一度行った宿にこんなお土産がある」とか「あのデザートが美味しかった」とか。それが聞けたら、他にもいろいろできそうですよね。

[1]旅館・ホテルを「お土産購入」で応援
[2]リモート時代の最小スタートアップ
[3]どうなる、旅行のこれから


取材 / 文 = 白石勝也


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