オンラインのセレクトショップ『TASTE LOCAL』を立ち上げた篠塚孝哉さん(Loco Partners創業社長)を4月10日にリモート取材。直近で「旅行はどうなるか」の見立てについて伺った。
TASTE LOCAL
一流宿の美味しい味を、食卓でたのしめるECサービス、オンラインセレクトショップ。おうちにいながら、魅力的な一流宿のこだわりの食事からデザートまで楽しむことができる。
全3回
[1]旅館・ホテルを「お土産購入」で応援
[2]リモート時代の最小スタートアップ
[3]どうなる、旅行のこれから
※写真は2020年2月取材時に撮影したものを使用。
ここまで、直近の宿泊施設への支援などについて伺ってきました。ここからは少し先の話ですが、旅行業界の直近1、2年についてどう考えているか。篠塚さんのお考えを聞きたいです。
まず国内旅行と海外旅行に区分けすると、海外旅行はかなり長い間沈むと仮説を立てています。理由としては、人の流動性の話になりますが、国境を横断するような流動性が生まれづらくなるため。
ウイルスに対する考え方が各国でバラバラですよね。たとえば中国ならウイルスの封じ込めはほぼ終わりましたが、入国する場合は14日間隔離されないと入れないんです。
また、アメリカも現在入国できませんが、今後もすごく入りづらい国の1つになると考えています。
※2020年4月10日時点
ブラジルではウイルス対策よりも経済を優先しました。結果的に多くの人がブラジルへは入国したがらなくなってしまった。逆に語弊があるかもしれませんが、ブラジル人を各国は入国させたくない、という風潮にもつながっていて。これはどこの国にも言えることで、たとえば、これまでアフリカに行く時、黄熱病のワクチンを打たないといけないのと同じですよね。ワクチンが出てこない限り、各国のウイルスのスタンスによって入手国のしやすさが変わる。そうなると、海外旅行の流動性は当分上がらないだろうなと思っています。つまり、日本の訪日旅行も当面元通りにはならないです。
ただ、国内旅行はものすごく増えていく可能性があると捉えています。急速に回復していく可能性が高い。
じつは3月の気が緩んだと揶揄されている3連休も、関東の旅館はかなり賑わいを見せており、高速道路は大渋滞ですごいことになっていたと聞きました。たとえば、5月中にコロナの死亡者数や感染者数が天井を迎え、収束に向かっていくムードになったら、多くの人たちが国内旅行に出かけるはず。終息宣言を出した後、国内旅行の需要は爆発すると思います。とくに海外旅行をしていた層も行き場を失い、国内リゾートなどに振り向くはず。かつみんな家で我慢している分、飲食店に行ったり、国内旅行にいったりが、急増すると予想しています。
ただ、東京都内や大阪がどうなるかは見えづらい。Zoomの打ち合わせ、商談などがこれだけ普及したので「出張」のニーズは当面無くなっていくかもしれない。多くの企業では利益も圧迫されているので、経費削減も起こりそうですよね。だから、出張、リアルイベントは長期間落ち込み続けると思っています。
そう考えると、首都圏のビジネスホテルや宴会場を持つシティホテルやイベント会場などは長い間苦戦していくかもしれない。海外出張者や訪日外国人が減り、ビジネス需要も減少していくからです。
ただ、本当にそうなるかわからないですよね…。
そうですね。誰もわかりません。この話は楽観論すぎるので。収束が遅れたら話はガラッと変わります。このままだらだらとコロナ自粛の状況は続いていくかもしれない。
同時に、中国を参考にすると3ヶ月で収束に向かっていて、ニューヨークも頭打ちを始めていると報道にありました。株式市場も多少落ち着いてきている。
楽観的観測ですが、日本に置き換えると5〜6月頃には一時の波は落ち着く可能性がある。悲観的に見ても旅館・リゾートホテルの稼働は夏頃には7割くらいには戻っていくと個人的には考えています。
歴史で見ても、人類がウイルスに敗北したことは一度もないんですよね。ウイルスが流行ると同じように世界が混乱するのですが、スペイン風邪、黒死病、ペスト、SARS、MARSなど、封じ込め、共存をしながらやってきた。つらい時期をのりこえれば、また必ず未来がある。そう信じています。
あとは、しゃがんでいる時にこそできること、準備していくこと。これが強くなるきっかけになるはずです。それがマーケットが戻ってきた時、一気に吹き返す価値になるのではないか。これは宿に限らず、すべてに言える話、スタートアップにも共通する話だと思います。今だからこそできること、潜りながらやれることもあるはずです。
最後に、これからやっていこうと考えていることがあれば教えて下さい。
今回は『TASTE LOCAL』というショップを1週間でリリースしましたが、解決策は決して一つじゃないですよね。課題が存在した時に、ミクロな視点、マクロな視点で、全部やっていこうと思っています。
まず前提のお話をすると、コロナショックで景気が悪くなったとありますが、マクロでみるとお金の「量」そのものは減っているわけではなくて。景気って「貨幣の流動性によって決まる」と当たり前のことに気付かされたんですよね。
要は、お金を使える人が使わなくなっている。使いたいのに使える場所がない。そうして貨幣の流動性が悪化し、どこかで資金ショートが起き、倒産などの負の連鎖が起こっていくのだと捉えています。だからお金のある人が、きちんと流動性を作っていかないといけないと思っています。
ジャック・ドーシーが資産の3分の1を寄付したり、AppleもAmazonも経営陣はたくさん寄付している。慈善事業の観点もありますが、なによりも「お金をきちんと流動させる」ための取り組みですよね。僕も寄付をするなどしていますが、国からも流動性を作らないといけない。
もうひとつ、「ビジネス」も重要な柱だと改めて気づきました。リアルでの流動性が落ちているなかで、Eコマースなら流動性が作れます。いつも外食していたところを、Eコマースにすればいい。もっとお金を使わないと、社会がよくなっていかない。この視点でよりお金が動くことをやっていければと考えています。
[1]旅館・ホテルを「お土産購入」で応援
[2]リモート時代の最小スタートアップ
[3]どうなる、旅行のこれから
取材 / 文 = 白石勝也
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