2020.11.16
飲食サービスのピンチに、インターネット的発想で挑む。カンカク 松本龍祐の視点

飲食サービスのピンチに、インターネット的発想で挑む。カンカク 松本龍祐の視点

新型コロナ感染拡大防止に伴い、打撃を受けている飲食サービス。そういった中で3.5億円を調達、攻めるのが、元メルペイの松本龍祐さん率いる『カンカク』だ。コロナ以降の「飲食」領域でどんな体験をつくる? 松本さんの視点に迫った。

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カンカク
元メルペイ 松本龍祐さん率いる飲食関連サービスのDX化、OMO、D2Cを手掛けるスタートアップ。2019年8月に完全キャッシュレスカフェ「KITASANDO COFFEE」を、2020年2月には新カフェ『TAILORED CAFE(テイラードカフェ)』をオープン。モバイルオーダーアプリ『COFFEE App』ではプレオーダー機能に加えて月額定額プランも提供。その他、夜パフェブランド「parfait✕parfait(パフェパフェ)」など新しいサービスもぞくぞくと展開。2020年9月7日、総額3.5億円を資金調達。コーヒー豆オンラインショップ『Cottea』をM&Aにより事業買収した。

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目次
・「食」は、一番身近にある小さなエンタメ
・「変化」が求められる事業者サイド
・「飲食サブスク」のメリット、デメリット
・「一貫性」がブランドをつくる

「食」は、一番身近にある小さなエンタメ

コロナを経て、人々の「食」に対する意識の変化もあったように思うのですが、松本さんはどう捉えていますか?

消費者の視点からすると、コロナを経て「食」に食べ物を口にする以上の「意味」を実感した方が多くいたのではないかなと思うんです。生活の中の一番小さなエンターテイメント、大切なコミュニケーションの手段でもありますよね。

とくに体験型の消費、わかりやすい刺激的なイベントへの参加はコロナによってしにくくなりました。もしかしたら、そういった背景もあり、より身近にある「食」への注目度が高まったのかもしれません。

テレビ番組、Netflixなどでも「食」のコンテンツがここ最近、とくに多いと感じます。

そうですね。コロナに関わらず、生活をしていたら、1日3回くらいは必ず「何を食べようか」と考えますよね。意思決定するシチュエーションが圧倒的に多く、前提として、みんなにとっての「興味がある領域」です。

たとえば、生活において「移動する」「住む」「寝る」などの時間って基本的に「意外性」は求めません。また、どのタクシーや電車に乗るか、ブランドにもこだわらない。家やベッドも一度「これ」と決めたら、しばらく意思決定しません。

一方、「食」は接触頻度が多く、何かしらこだわりもある。自分にとって価値があるか。作り手の思い、ストーリーを知りたくなることもある。

また、「食べること」は健康にも直結します。食べなければ太らない、とみんな知っているけど、食べちゃう。そういう本能的なところもある。「食」ほど、人それぞれに興味を持つポイントが多岐にわたるコンテンツも珍しいのかもしれません。

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「変化」が求められる事業者サイド

とくに外食をはじめ、事業者側の視点からすると、コロナによる経営悪化など、厳しさを増していると聞きます。

そうですね。事業者側からすると、急速にオンライン、中食、デリバリーへの対応などに迫られ、ものすごく切実です。販売チャネルを変えざるを得ない構造変化が訪れています。

取り組むべき課題も多くあります。たとえば、今来店くださっているお客様に対する利便性の向上、私達が開発しているようなアプリを活用した販売の省力化、家では味わえない新しい体験づくり…さまざまなアプローチを試している現状があると思います。

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「飲食サブスク」のメリット、デメリット

そういったなか、カンカク2店舗となる『TAILORED CAFE』では定額プラン*も導入しています。導入の背景を教えてください。

*定額プラン「メンバーシップ」月額3800円でコーヒー(1杯400円)が毎日飲め、ドリンクメニューも全品200円offになる定額サービス

いわゆる「いいお店」は美味しいものと、すばらしい空間を提供できて、自然とお客様がついてくる、というもので。それができたら素晴らしいですよね。

ただ、私自身、もともと飲食のプロではありません。だからこそ、インターネット的な発想で、違う方法を試してみようと考えて、定額プランを提供しているところです。

インターネット的というと?

たとえば、「お客様とつながること」を前提にサービスを設計する。オープン時からメンバーシップ会員になっていただいて、COFFEE Appでつながっていることができれば、お得な情報などを随時届けられます。こういったオンラインで当たり前にやっているマーケティング手法を、オフラインでもできないか。これが私たちなりのアプローチです。

実際に「店舗」というリアルでの定額プランを導入してみて感じたメリット、デメリットがあれば教えてください。

良い面は、毎日来ていただくお客様を急激に増やせたこと。これは定額プランのおかげだと思います。 デメリットは単純に利益率が下がること。今まで「1杯400円」などで提供していたスペシャルティコーヒーを1日複数回注文できて、他のドリンクも割引になっています。

それでもサブスクをやる意味とは?

まず「マーケティングにかかっていた費用」をお客様に還元している、そんな気持ちでいますね。週に数回来店いただけたら、お客様に足を運んでもらうための宣伝費用を抑えることができます。

店舗運営における飲食ビジネスだと「通行量」がかなり重要ですが、いかに「毎日通りかかってくれる人を増やすか」と考えることそのものへのコストが削減できたらいいなと考えていて。たとえば、うまくいけば、必ずしも通行量が多いところに出店しなくてもよくなるかもしれません。

原価、人件費、土地代、販促費、これらのバランスがあるわけですが、定額プランを導入することで、仮に原価率が上がっても、 他の部分が削れないか。このトライアルに取り組んでいる段階ですね。

また、オフラインである店舗でのサブスクリプションを通してお客様とつながることで、オンラインでも新たな商品を知っていただいて、ファンになってもらい、購入いただけるような機会を増やせないか。これも「つながっている」ことを前提としている意味だと思います。

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「一貫性」がブランドをつくる

そういった意味だと、オフラインでも、オンラインでも、「つながり続けたい」と思われることが重要ですね。ブランドとして好かれる、というか。

そうですね。ブランドと一言で言っても、いろんな考え方があると思っていまして。私は、お客様が感じる「サービスに対するイメージの連続したものの結果」だと捉えています。

それは基本的に、コミュニケーションの中から生まれるもの。商品だったりパッケージだったり、店舗だったり、接客だったり。いろんなもの、時間から感じ続けてもらう。そのためには「一貫性」が大切だと思っています。

なかなかその「一貫性」を具体的なカタチにし、浸透させるのは、簡単ではないように思います。

一貫性を保ち、いかにブランドをつくるか。大事にしているところでいうと、今は、なるべく自分をターゲットにしたサービスを作ることを意識しています。心からほしいと思えるものを作る。そういった気持ちが大きいかもしれません。

自分の行動をシンプルに振り返った時、インターネットで情報を得て、最終的なアウトプットはリアル、がほとんど。レストランで美味しいものを食べるのも、 服を買うのもそう。もっとインターネットとつながったらいいのに、と思うことが圧倒的に多い。

私達のブランドも、どれだけインターネットで情報を発信し、コミュニケーションができるか。徹底的に情報発信できると、それが新しいブランドのカタチになるかもしれない。思いとしては、インターネット好きに好かれるブランドになれたらいいなと思っています。

カンカクではさらに店舗を増やしていくと伺いました。たとえば、「1つの店舗」のブランドが際立つと、他の店舗との「一貫性」が見えづらくなる懸念も?

大切なのは、まずはひとつのブランドを深く知っていくなかで「透明性」があること。複数のブランドが立っていても、共通のコンセプトがあることだと思うんです。複数ある、だから他も体験したい。そんなふうにポジティブに受け取られるといいですよね。好きなブランドが「あ、このブランドとも同じグループだったんだ」と気づいた時の感覚に近いのかもしれません。個人店じゃなかった「がっかり感」と、「自分の好きなグループだった」といううれしさと、両方あるのかなと。後者の気持ち良さにできるといいですよね。

全2本立てでお送りいたします。
【1】飲食サービスのピンチに、インターネット的発想で挑む。カンカク 松本龍祐の視点
【2】オーダーアプリ、サブスク、最先端マシン導入…カンカク 松本龍祐がつくる、ウィズコロナ時代の「飲食」新体験 (11月17日(火)公開予定)


取材 / 文 = 白石勝也


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