2021.11.08
PMよ、コンフォートゾーンから出よ。LinkedIn 曽根原春樹が、シリコンバレーで学んだ大切なこと

PMよ、コンフォートゾーンから出よ。LinkedIn 曽根原春樹が、シリコンバレーで学んだ大切なこと

シリコンバレーで10年近くPMとしてキャリアを歩んできたLinkedInの曽根原春樹さん。エンジニアとしてキャリアをスタートし、PMになるべく渡米する...。彼がグローバルで学んだ、PMとして活躍するための条件とは?

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※2021年10月26日に開催された【Product Manager Conference 2021】のセッション「プロダクトマネージャー自身の非連続な成長とそれを実現するキャリア構築とは?」をピックアップ。LinkedIn曽根原春樹氏を迎えて、プロダクトマネージャーのキャリア支援において実績を誇る人材紹介会社クライス&カンパニー松永拓也氏がインタビュー。書き起こし形式で編集したものをお届けします。

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【プロフィール】曽根原 春樹 Senior Product Manager @ LinkedIn
2001年Cisco Systems合同会社に入社。のちに転職したスタートアップ企業が米Juniper Networks社に買収され、2006年にUS本社転籍を機に渡米。エンジニア、セールス、コンサルティング、カスタマーサポート、マーケティングと様々な役職をこなし、2012年より同社のPMに転身。その後シリコンバレーのスタートアップPMをB2B・B2Cの双方で経験。現在はLinkedIn社のシニアプロダクトマネージャーを務める。6000人の受講者を超えるUdemyでのプロダクトマネジメント講座の配信、「プロダクトマネジメントのすべて」の著者の一人としてPM啓蒙活動も展開。顧問として日本の大企業やスタートアップ企業もサポートしている。

“Take a Risk”で切り拓いた「PMのキャリア」

みなさんはじめまして、LinkedInでPMをしている曽根原春樹と申します。2006年に渡米して以来、15年ほどシリコンバレーで仕事をしています。最初のキャリアはエンジニアからスタートし、直近10年ほどはPMとして仕事をしています。

今回のPMカンファレンスのテーマが「非連続な環境、非連続な変化、非連続なプロダクト」ということで、私のキャリアを通じて、どのようにしてPMとして非連続に成長してきたかお伝えできればと思います。よろしくお願いします。

まず、これまでのキャリアヒストリーをまとめてみました。

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とくにピンクの丸をつけた箇所は、キャリアにおける「非連続点」です。言い換えれば、「自分の視野が格段に広がった瞬間」とも言えます。

そして、いま振り返るとその「非連続点」は、リスクを取って新しいチャレンジをすることによって獲得できたと感じています。

Cisco SystemsはいわゆるFortune500に載るような外資系大企業で、新卒でエンジニアとして入社しました。この時点ではまだ日本に住んでいました。

最初の「非連続点」は、そのCiscoからJuniper Networksに転職したときです。正確には、転職したスタートアップがJuniper Networksに買収され、そこで働くことになりました。

そのスタートアップは、全世界でも100人くらいしか社員がいない小さなスタートアップで。大企業からスタートアップに身を置く環境が変わったことで、ビジネスのやり方も、プロダクトの作り方も、あらゆることがガラリと変わりました。

スタートアップでは、限られたリソースのなかで、プライオリティをどう決めて、何をつくるのか。そして、どうに売っていくか。大企業とは戦い方が全く違うことに、身を置いて、はじめて気づくことができました。

次の転機は、Juniper NetworksのUS本社への転籍をきっかけに、渡米したこと。

アメリカに渡ってすぐの頃、当時のメンターに言われた言葉がいまも心に残っています。

“Take a risk to discover what you want”

「自分が知りたいもの、欲しいものを得るにはリスクをとらないといけない」という意味で。これは今振り返ると、キャリアを考える上で本当に的を得た言葉だなと思います。

「コンフォートゾーン(Comfort zone)」という言葉があるように、人間はどうしても自分にとって心地よい状態にとどまりがち。新しい環境に飛び込むことは、新しいチャレンジをすることは「怖さ」もあります。でも、とくにPMは仕事柄どんどん新しい領域に踏み込んで、新しいチャレンジをしていかなければなりません。新しい考え方を取り入れて、競合他社と差別化をしていく。ユーザーが喜ぶような新しい体験を作り出していきかなければなりません。

リスクを取るにしても、「これを失敗したら命なくなる」というのはさすがに気を付けたほうがいいと思うんですけど、そこまで身を削るようなリスクじゃなければ、むしろやったほうが絶対いい。リスクを取れば、本当に自分ができること、やりたいことが知れる。こうしたリスクのとり方をシリコンバレーではよく、”Take a calculated risk”と言ったりします。

想像以上に険しかったPMへの道

渡米してはじめて任されたのは、カスタマーサポートエンジニアでした。ですので、このときはまだPMではありませんでした。

社内でPMのポジションがオープンになるたびに応募していたのですが、なかなか叶いませんでした。

なぜなんだろうと改めて分析してみると、いままでのキャリアや経験はPre Sales SEやConsulting Engineerで。プロダクトマネジメントの世界において必要なほんの一部でしかなかったんですね。PMに求められるスキルが何か全然わかっていなかった。そんな中で、無謀なチャレンジをしていたので、壁に跳ね返されてしまうのも当然でした。

PMになるためにはよりPMに近い環境に身を置いたほうがいいのでは?と気づいて。プロダクトマーケティングのチームに異動し、テクニカルマーケティングエンジニアとして働きはじめました。

もちろんPMの仕事ができるわけではないのですが、PMと一緒に仕事をする機会が多くて。PMの仕事ぶりを真横でみれるポジションだったんです。これはぼくにとってPMの役割を学べる、非常に貴重な体験でした。

もともとカスタマーサポートをやっていた自分からすると、いかに自分がポストセールスのことしか考えてこなかったかを思い知りました。もちろんそれは大事なことですが、PMはもっと幅広い観点でものごとを考えなければなりません。社内的な予算がどのくらいあるか、エンジニアがどのくらいあるか、競合他社がどうなっているか...いろんな観点を踏まえた上で、プロダクトをつくる必要があります。

異動するまでは全くわからなかったのですが、PMと一緒に仕事をするなかで、「PMはこういうふうに仕事をするのか」と、よりクリアにイメージできるようになりました。

PMの基本を学ぶため、あらゆる手段で猛勉強

もちろんプロダクトマーケティングチームに入ったからといって、PMになることが約束されているわけではありません。

しかも、シリコンバレーではPMのポジションがとても人気で。企業で求人が出るとものすごい数のレジュメが集まります。普通に考えて、PM未経験の自分が採用されるのはむずかしい。そのなかでPMとして採用してもらうためには何が必要か。どんなアピールできるのか。戦略を考える必要がありました。

まず大前提として重要なのは、「PMとしての土台」を持っていることです。ここがないと、もう箸にも棒にもかかりません。

たとえば、PMだったら誰でも知っているような言葉を知っているかどうか。そして自分自身も自然に使いこなせるかどうか。こういうところでつまずいていたら、面接を突破するのは難しいでしょう。

まずはPMとしての土台をつくる。そのための準備として、猛勉強をしました。当時はまだオンラインで学習できる講座や、体系的に学べるものがほとんどなかったので、スタンフォード大学やUCバークレーの社会人向けのビジネスコースに申し込んで受講したり、メンターから紹介してもらった本を片っ端から読んでいったり。実際にPMとして働いている人とランチをして、活きた現場の情報をインプットしていました。

「PMとしての土台」だけでなく、自分のアピールポイントも整理して伝えることが重要です。僕の場合は、プレセールスエンジニアやカスタマーサポートエンジニアを経験してきたので、ユーザーやお客さんと直接接する機会がとても多かった。なので、ユーザーやお客さんのペインを誰よりも理解できることをアピールしました。

一流のPMたちと同じ土俵で戦うために。

実際にPMになってから、とても重要だなと感じることは「好奇心」です。PMになるためにあらゆることに興味を持って勉強をしてきた経験が、今PMとして働く上でとても活きています。

私のキャリアヒストリーを見てもらうとわかる通り、toBのPMからtoCのPMにキャリアチェンジし、現在はプラットフォームのPMをしております。こういったトランジションをしていくためには、常にいろんな情報や考え方、あらゆるテクノロジーに興味をもっていないと、対等に会話をすることができません。

シリコンバレーは土地柄、一騎当千みたいな能力の高いPMがたくさんいます。彼らと同じ土俵で戦うためには、「この部分は負けない」という自分の牙を増やし、そして磨き続けることがとても重要です。

もちろんそれでうまくいくときもあれば、うまくいかないときもあります。でも、成功している人がずっと成功しているかというと決してそうじゃない。人間なので成功もするし失敗もするんですね。

シリコンバレーでよく使われる言葉に「レジリエンス」があります。要は、ショックに対する耐性ですね。失敗からなにを学ぶか、次にどう生かすか。自分の興味を広く保ちつつ、仮にチャレンジして失敗したとしても、次うまくするためにはなにをするかっていうスタンスが大切です。

コンフォートゾーンの外に出よう

最後に、改めてみなさんにお伝えしたいのは、「コンフォートゾーンにどっぷり浸からないでください」ということです。

一歩でも二歩でも、コンフォートゾーンの外に出てください。そうすれば、絶対何かしらの学びがあります。そして、この学びが次の学びや出会い、次のチャンスを呼び込みます。

今の位置にとどまるのではなく、常に新しいフロンティアへと踏み出していく。そういった気持ちを持てると、PMとしての経験の幅も、キャリアの幅も自ずと広がっていくはずです。

(おわり)


取材 / 文 = 野村愛


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