リブセンスCTO平山宗介さんが考える“理想のエンジニア像”に迫るインタビュー。平山さん曰く、「本当に技術で突き抜けられる人は一握り」「それを見極めた上で自分の強みを考えることが必要」だという。エンジニアのキャリア形成にとって、大きなヒントとなるお話を語っていただいた。
▼リブセンス CTO・ 平山宗介氏へのインタビュー第1弾
CTOに問われる“組織文化”を生み出す力―リブセンス 平山宗介氏のCTO論。
企業の技術トップであるCTOが求めるエンジニア像は、エンジニアが今後のキャリアを考える上で、大きなヒントとなるはず。
ということで、今回はリブセンスCTO平山宗介さんに、ご自身の考える“理想のエンジニア”について語っていただいた。
「エンジニアたるもの、こうあるべき」という既成概念にとらわれないことが、エンジニアとして一皮剥けるきっかけになるのでは、と語る平山さん。自分のスキルを客観視し、本当の強みを見極めることが重要だという。
― 平山さんはCTOとして、エンジニア採用にも大きく関わっていると思います。今は、どんなエンジニアが理想的だと考えていますか?
そうですね、やはりバランスのとれた人でしょうか。技術もある程度きちんとあって、プロジェクト推進ができる人。言い換えれば、「自分で結果を出せる人」ということになるかと思います。
何か特定の分野で尖っている人だとしても、別の分野では誰かがその人を引き上げる必要があるかもしれません。たとえ技術的に優れたものを持っていたとしても、それをいかに使うかが見えていないと、アウトプットは出ません。
― アウトプットの出せる人と出せない人の見極めは?
面接等で少し話せば、喋っている内容で分かります。優秀な人であればあるほど、さまざまな視点に立ち、客観的な目線で物事を話す印象です。
どんな事業戦略があり、どんなプロダクトがあって、そこでどんなミッションをやっているか、というところで話ができないと、より大きな仕事はできないし、成果も出せないと思います。
― そういった視点を身につけるには、何が必要でしょう?
とにかく、いろんなことを体験するしかないと思います。
面接をしていてもたまにあるケースなのですが、10年間、あるベンダーのある技術しか触っていないとか、そういう人は選択肢が狭められますよね。
もしその技術しかできない環境なのであれば、思い切って外に出てみるのも大事だと思います。いろんな人と働き、いろんなプロダクトに関わること。それに尽きるのではないかと。
― 平山さんは、SIerからスタートアップ、WEB系の超大手まで、さまざまな環境を経験し、いろんなエンジニアをご覧になっていますよね。反面教師になるようなタイプっていましたか?
自分の枠を狭める人、でしょうか。エンジニアは技術のことだけやっていればいいんだとか、「エンジニアとはこうあるべし」という部分に固執している人は特にもったいないなと感じていました。
自分としては、これからのエンジニアってそうじゃないだろうと思っています。幅広くできる人がいいな、と。
― エンジニアって、そのあたりのこだわりが強い方も多いですよね?
仰るとおりです。もちろん技術のことだけやっていて、それが世界レベルで突破できればいいと思います。それこそ「データベースエンジンを作りました」とか、そこまで行く覚悟があるのなら何の問題もない。
でも、そこまで行けないのであれば、広い世界を知ったほうがいいと思います。今はエンジニアとして技術を突き詰めていけばいいと思っているかもしれないけど、それは本当に世界レベルなのか。冷静に見極めて、違うと思うのならうまく方向転換すべきです。自分の場合は、そこで「幅広く」という方向に振っていこうと決めました。
― 広い世界を知る、というのは転職するということですか?
いえ、一つの会社でいろんなプロジェクトを手がけられるなら、それもいいでしょう。
ただそれができないのであれば、決して転職を煽るつもりはありませんが、臆することなく違った世界に飛び出すのも一つの手だとは思いますね。やっぱり意識だけで自分を変えようとするのは難しいです。一緒に働く人を変えるとか、環境そのものを変えるのも重要だと思います。もちろん、今いる環境でやるべきことをやりきっているのが前提ですけどね。
今の御時世、環境を変えやすい時代だとも言えます。転職まではいかずとも、いろいろな技術コミュニティも立ち上がっているじゃないですか。そういうところに参加することでも目線は広がると思います。
― いま、エンジニアのキャリアも多様化しているように思います。エンジニアを経て事業責任者になったり、マーケティングのポジションに就いたり。平山さんも、エンジニアのキャリアを技術の枠の中だけにとどめていないようにも感じます。
そうですね、正しく言えば二極化かなと思っています。スペシャリストになれるなら世界を狙え、そうでなければいろんな分野を幅広くカバーしろ、このどちらかです。
とはいえ、スペシャリスト志向でないといっても、コードを書かなくて良いというわけではありません。SIerの経験をお持ちの方にはお分かりいただけるかと思うのですが、SIerって「コードを書くな」みたいな空気があるんですよ。あくまでプロジェクト管理やマネジメントがミッションだと。
でもそうじゃなくて、キャリアとして幅広さを志向するにしても、“自らコードを書いて世界を変える力を身につける”ことが前提です。コードを書きつつ他の分野も意識していこう、ということですね。スペシャリストは特定の分野で100点満点を目指すわけですけど、そうじゃなければ幅広く、あらゆる技術で70点くらいのレベルを目指す、と。
― 70点!スペシャリストを目指すよりもっと難しくないですか?
そうなんですよ、結構しんどくて。でもそこで30点くらいのレベルだと、ただのふらふらしたエンジニアになってしまうので…。
とはいえ、大事なのは、やっぱりちゃんとエンジニアリングが好きだという気持ちです。その思いさえあれば、必然的に70点までいけます。
そういう意味では、憧れのスターのようなエンジニアを見つけて、一緒に働くのがいいかもしれません。そうして技術を好きになって、70点に到達するよう努力していれば、進むべき道もいろいろと見えてくる気がします。
― 必ずしも「技術を突き詰めてこそのエンジニア」というわけではないんですね。
自分にとってエンジニアとは、アイデアをきちんとカタチにできる人を指します。
映画『ソーシャル・ネットワーク』はご覧になりましたか?「Facebookはもともと自分たちのアイデアだ」と主張するウィンクルボス兄弟に、ザッカーバーグが「だったら作ってみろよ」と怒るシーンがあったんですが、まさにその感覚です。
エンジニアは作れる人、そこを強みにしていくべき。だからこそ、逆に事業や経営も含めて技術以外のことまで理解できていれば、企業の中でもより合理的に、スピーディに作れるよね、というのが自分の考えですね。
技術をツールとして使って、事業なりプロダクトなりをちゃんと形にできるのが、理想的なエンジニア。どんなキャリアを選ぶにしても、この前提は変わらないと思います。
― 貴重なお話、ありがとうございました!
(おわり)
[取材・文]上田恭平 [撮影]梁取義宣
編集 = CAREER HACK
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