2013.01.18
世界を見よ、そして自信を持て―未踏エンジニア・堀田創のキャリア論[3]

世界を見よ、そして自信を持て―未踏エンジニア・堀田創のキャリア論[3]

ベトナム、タイ、シンガポールとアジアを視察し、次なるWEBビジネスの可能性を探る堀田創さん。そのキャリア論・最終回では「現実と向き合いつつ、今、どのような自己投資を行なうべきか」伺った。WEB開発の海外アウトソースが増えている昨今だが、「無駄に危機感を持つ必要はない」と語る堀田さん。その真意とは?

0 0 24 0

▼インタビュー第1回はこちら
「クリエイティブ供給過多時代」を勝ち抜く―未踏エンジニア・堀田創のキャリア論[1]

▼インタビュー第2回はこちら
「協調性」こそ日本人エンジニアの武器である―未踏エンジニア・堀田創のキャリア論[2]

自分の生きる道を見つければ、危機感なんて持つ必要はない。

― 日本にいると、どうしても視野が狭くなり、キャリアに対する危機感を持ちづらいような印象があります。


そもそも、そんなに危機感を持つ必要はないと思いますよ。


― といいますと?


優秀なエンジニアと自分を比べて、できないことばかりを見ても悲観的になるだけですし、どんどん自分に自信がなくなっちゃいますよね。

だからあんまり気負わないほうがいいです。みんながみんな世界最高品質のコーディングができるわけじゃないし、自分の得意なところを見つけて、そこで勝負すればいいんだと思います。

私自身、20代半ばくらいまでは相当な危機感があって、「ビジネスにも詳しくなって、職人としても一流でなければならない」と気負っていました。

でも、後輩が書いたコードのほうが圧倒的にきれいだったりして。リーンスタートアップでいえば「コーディングできないヤツはダメ」みたいな風潮だから、自分はダメなんだ!と(笑)で、これは自分には向いてないなと思ったんです。

得意なところを絞ってやっていこうと決めて見つけたのが、あくまで技術をコアにしながらベンチャーの経営に携わったり、技術とビジネスを結びつけたりするところ。今ではここが自分のコアバリューだと思っています。



― なるほど。一方で「なにが得意かわからない」という人も多いと思います。得意分野を見つける方法があれば教えてください。


とにかくいろいろ経験して探していくのがいいと思いますね。スキル、体験、人脈、いろんな組み合わせを広げていくと、「楽しい」「楽しくない」「得意」「不得意」が判断ができるようになります。

ワーキングタイム以外にプロジェクトをやってみたり、オープンソースのプロジェクトにコミッターとして入ったり、カンファレンスやハッカソンみたいなイベントに行くとか、いくつもやってみるといいでしょう。

今やっていることから離れて違うことをやると、自分の感情が見えてきます。そうすれば、さまざまなものを比較して、結局自分は何がやりたいのか、何ができるのか、見えてくる部分があるはずです。

男性の場合は特に、「いま自分が楽しいかどうか」ってその瞬間には分からないじゃないですか。飲み会に行っても、帰り道になってやっと「あぁ今日は楽しかったな」って実感したりしませんか?


― 恋愛なんか、特にそうかもしれません…。


そうなんですよね。まあ、あまり恋愛でこういうことはしないほうがいいと思いますけど(笑)


― …話を戻しますと、比較をするためには、実際にいろいろと動いてみることが重要だと?


そうです。たとえばカンファレンスでいろんなエンジニアと話すと、自分の好きな技術が実は憧れていた会社で採用されていたなんていう発見もありますからね。

一回でもシリコンバレーにいってFacebookのハッカソンに出てみたりすると、もっと英語で話せるようになりたいと思えたり、一気にモチベーションに火がついたりします。

自分がアイデアを持っている場合は、とにかく人にしゃべってみるのもおもしろいと思います。アドバイスがもらえたり、自分では気付けていなかった弱点が分かったり、ものすごく刺激になると思いますよ。

グローイングマーケットで戦う選択肢。

― 日本のエンジニアは海外を視野に入れてキャリアを考えていくべきでしょうか?


日本で成功している企業もたくさんあるし、SIも必ず残ります。「海外」はあくまで選択肢の一つでいいと思います。別に日本の市場がなくなるわけじゃないから、そこで働きながら可能性を広げていくこともできるはずです。

国内にいながら国際的なチームをつくってみる、こんなチャレンジもありですよね。

たとえば、チャット系のアプリをつくる際、マルチプラットフォームの考え方はすごく重要ですし、最初からマルチで出すことに大きな価値があると思います。

リーンスタートアップの概念だと、「一人のエンジニアが特定のOSにターゲッティングする」といった話にもなりますが、必ずしもそれが無敵というわけではない。

はじめから多国籍なチームを組んで、いろんな人と働いてみる。そこから広がる可能性はかなり大きいはずです。



― そういった中でも堀田さんご自身は「アジア」に注目していますよね。その理由を教えてください。


日本やアメリカのマーケットがシュリンクしていくなかで、シンガポール、ベトナム、タイといったアジアがこれからグローイングマーケットになることは明らかだからです。

これが、短期的な「金融投資」だったら投資するリスクは高いですが、10年、20年というスパンの「キャリアへの投資」という観点だったら、損にはならないと考えています。

たとえば、ベトナムのエンジニアは責任感が強いから飛びぬけて使いやすいけど、デザインセンスが足りない。その点、タイはデザインセンスが抜群だったりする。こんな知識を仕入れておく、肌で感じておく、それだけでもプラスだと思います。

風潮に踊らされるのではなく、信じ抜いてやってみる。

― 最近では、「こんなことがやりたい」と、強い意志をもっているエンジニアも増えている印象があります。そんな多くのエンジニアに大切にしてほしいことがあれば教えてください。


いま私は30歳なのですが、私が社会に出た頃は、ちょうどITベンチャーの隆盛期でした。当時は、ビジネス感覚のある起業家がいて、それにエンジニアが協力するというケースが多かったように思います。

でも今のエンジニアを見ていると、純粋に「つくりたい」というピュアな気持ちがあって、モノづくりをしているように感じます。自分にはないところなので、いいなぁと思いますね。そこから何かが生まれる可能性も大きいでしょう。

お金を稼ぐというビジネス視点も、もちろん大事ではありますが、それだけに執着せず、いろんなアプローチでチャレンジしてほしいです。


― これからスタートアップを志すエンジニアも多いと思うのですが、何かアドバイスはありますか?


とにかく芯を強く持っていれば、やりやすい方法で、やりたいことをやればいいだけかと。「こうあるべき」という決まった道筋があるわけではありません。

今の風潮からすると、例えば常にTechCrunchをチェックして、最先端の情報をキャッチアップしなければならないなど、「とにかく意識を高く持て!」という雰囲気もあるように思いますが、個人的にはそんなことは全然ないと思っています。

結局、誰かと同じことをやっても模倣にしかなりません。なにもインプットしない状態でアイデアを出して、形にする段階でリファレンスしていくという手法もあります。好きなようにやってみる、それでいいんだと思います。

アイデアなんていつ思いつくか誰にも分かりません。客観的にみて「ぜんぜんセンスない」と思っていたアプリが、予想に反して大ヒットしたりもします。何が売れるかなんて誰にも分からないんです。とにかく信じてやり続けられるかどうか、それだけなんだと思います。



(おわり)


[取材協力:『co-ba library』東京都渋谷区渋谷3-26-16 第5叶ビル6F]



編集 = 白石勝也


関連記事

特集記事

お問い合わせ
取材のご依頼やサイトに関する
お問い合わせはこちらから