2013.04.19
日本人は“楽しむ”ことを忘れていないか―海外で起業した女性エンジニア、平野未来のキャリア論[2]

日本人は“楽しむ”ことを忘れていないか―海外で起業した女性エンジニア、平野未来のキャリア論[2]

海外エンジニアと比較した時、日本人の強みはマネジメントにあると説く『Cinnamon』CEO平野未来さん。一方で日本人エンジニアは「楽しんでいる人が少ない」とも語る。国際的な開発が当たり前となりつつある現代。これからを生き抜く上で大切な視点とは?アグレッシブに働く平野さんのキャリア論第2弾。

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ベトナム人エンジニアたちは、いつでも目がキラキラしている。

― ベトナムで起業された平野さんですが、日本人エンジニアの課題、足りないところは、どういった部分にあると感じますか?


「このプロダクトがいい」とか「とにかく仕事が楽しい」とか、めちゃくちゃ熱中して、楽しんでモノを作っている人が少ないかなとは思いますね。

どちらかというと、自分がやっていることが正しいのかどうか迷っている、そういった人が多い印象があります。

でも、一度決めたことを蒸し返して、やり切る前に悩むのは意味がないですし、はっきりいって時間の無駄ですよね。なぜなら先に一歩も進んでいかないからです。自分が進んでいる道は正しいし、仕事がめっちゃくちゃ楽しい。こう思って働ける日本人が増えるといいなと思っています。


― その点、ベトナムのエンジニアはどうなのでしょうか?


すごく目をキラキラさせて働いているんですよね。もちろん環境も影響しているんだと思います。日本だとこれからの成長をイメージしづらい閉塞感がありますが、ベトナムは成長国です。「希望にみちた未来がある」という雰囲気を、いたるところで感じられるんです。

例えば、今の日本だと数ヶ月でも貯金して絶対に手に入れたいモノなんてあまり無いじゃないですか。でもベトナム人には、憧れのアイテムがまだまだたくさんあります。それこそ、スマートフォンなんて「絶対にほしい高級アイテム」の一つ。平均月収が100ドルのところ、スマートフォンの値段は500ドルくらいです。高度経済成長期の日本でいうクルマのような存在かもしれませんね。

「これから成長することが当たり前」という空気がベトナムにはあります。そうすると、身を置くだけでテンションがあがるんですよね。私自身、視察でハノイを訪れた時、滞在5日目にはもう「ここに住むんだ!」と思ったくらいです。

「海外でつくる」を選択肢に入れる。

― 先が見えづらい日本で、わくわくして働くにはどうしたらよいのでしょう?


「海外でつくる」という選択肢を持つことがカギになってくるような気がします。

ひとりのチカラでは限界のあることも、海外で何かできることはないかと考えるだけで、可能性が一気に広がるんですよね。



私の場合も、ベトナムでなければ、いきなりエンジニアを10名集めて起業することはできませんでした。

スタートアップに10人のエンジニアがいるって、本当に心強いんですよ。「自分のパワーがいきなり10倍になった」みたいな感覚なんです。

おそらく多くの方が、無意識のうちに自分の可能性を、日本という限られた空間の中だけで考えているんじゃないかと思います。私のようにいきなり海外に行くというのは簡単ではないかもしれませんが、海外という選択肢に目を向けるだけでも目の前がひらけてくると思いますよ。

人生計画はいらない。今に集中するために衝動的であろう。

― 最後に少し視点を変えて、「WEB・IT業界での女性の活躍」という点でもお話を伺えればと思います。平野さんは、女性エンジニアのキャリアについてどのような考えをお持ちですか?


私が女子高出身だったからかもしれませんが、よく高校生のころに、

「10年、20年先も活かせるスキルを身につけよう」「安定した生活ができるよう仕事を選ぼう」

と、親や先生からアドバイスされたんですよね。

でも、この業界は1~2年ですぐに状況が変わるし、変化のスピードが速すぎてそのアドバイスはまるで役に立ちません。

「10年以上も通用するスキル」を選んでいくと、結局、やれることが限られて選択肢を狭めてしまうことになる。

将来のことを考えているのに、選択肢を狭めるのは、本当に馬鹿馬鹿しいですよね。個人的には、もっと短絡的でいいのではないかと思っています。いま目の前にあるやりたいことに、100%集中したほうがずっと良いと思う。


― 結婚や出産といったイベントを見据えた人生計画を立てて、それに併せてキャリアを考える人も少なくないですよね?


うーん、私は「そもそも人生計画は立てないほうがいい」と思いますね(笑)

私自身、もしきっちり人生計画を立てていたとしたら、きっとベトナムで起業なんてできていなかったでしょう。仕事のスケールは圧倒的に小さくなっていたはずです。

28歳で結婚して、30歳で第一子を生んで…とか、そんなことばかり考えていたらやっぱり何もできないと思います。

計画を立てるということは、選択肢を狭めること。やりたいことができなくなるということ。だから今やりたいこと、したいことに100%フォーカスして、それで例えば将来「どうしても子どもがほしい」と思ったら、それはその時に考えればいいかなぁと思っています(笑)

もっと“直感”と“衝動”を信じて生きていく。それが結果的に、キャリアの可能性を広げることにつながるはずです。


― キャリアに対する計画を重視するばかりに、逆にキャリアの幅が狭くなる。女性に限らず、男性も持っておきたい重要な視点ですね。本日は貴重なお話をありがとうございました!



(おわり)


文 = 白石勝也
編集 = CAREER HACK


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