近年、注目を集めるアドテク業界。そこで活躍するエンジニアの要件とは一体どのようなものなのか。Fringe81 CTOの東山友さんに話を伺った。
▼Fringe81 CTO 東山友さんへのインタビュー第1弾企業の文化づくりがCTOに求められる!?―Fringe81 東山友氏のCTO論。
WEB・IT業界の中でも、特に注目を集めるアドテクノロジー業界。先端のテクノロジーを駆使し、日々、新しいシステム・サービスが生み出されている。
アドテク分野で、活躍するエンジニアとは一体どんな人物なのか。そんな問いを、第3者配信システムやタグマネジメントなどで、存在感を高めるFringe81のCTO 東山友さんにぶつけてみた。
アドテク業界でエンジニアとして働く魅力、アドテクのCTOからみた優秀なエンジニアの要件とは。
― まず、アドテク企業が他のWEB・IT企業と異なる点はどこにあるのでしょうか。
『1msでも「早く」「正確に」「安全に」「最適に」レスポンスするWebの仕組みの追及やその実際の検証/構築など、普通の開発業務では味わえないスリル満点な世界』
ということでしょうか。
私自身は、アドテク、アドテクと言われ始めたのはここ数年で、アドテク業界だからといって急に何か思うことはないんですが(笑)
でも確かに、“スピード感”“スリル”を感じることはできますね。レスポンスにこだわっているシステムだと、ほんとに0.0X秒~0.00X秒単位の戦いなんです。
ユーザーからは目には見えないところで、配信システムサービスを運用しているのですが、インターネットは24時間365日ずっと動き続けている。夜中でもサーバーを落とすことができない、という使命感は常に感じます。
― アドテク企業のエンジニアには、他業界と比べても高い技術力が求められるのでしょうか?
他社のことはあまりわかりませんが、特異というほどでもないと思います。イメージで言うと、玄人が多くいるといいますか(笑)
そもそも、アドテクのエンジニアはただコードを書いていればいいというワケにはいかないんです。
― というと?
例えば、レスポンスのスピードを高めるには、アプリケーションのプログラミングだけでは解決できない領域まで考えなければいけないんです。例えばミドルウェアなり、仕組み全体の設計であったり。
― より俯瞰的な視点でサービスを作るというイメージですね。
仰るとおりです。アドテク業界のエンジニアは、アプリケーションを作るというより、サービス全体を設計して作っていくという考えが合っているかもしれません。
実は仕組みを考えると、少し違った考え方もできるんですよ。先ほどサーバーを落とせないという話をしましたが、全体を俯瞰した上で、「落ちてもいい」と考えるんです。
― …それは結構マズいのでは?
落ちてほしくないのは当然です(笑)でも、「絶対に落とさない」と考えるより「落ちても大丈夫」な仕組みを考えるんです。コスト的に考えても、サーバーに張り付いたり、堅牢過ぎるほど大規模なシステムを構築するより、パフォーマンスは優れているんです。
開発と運用、両面から考える。いま流行りのDevOpsの概念に近いですね。例えば、メインのサーバーが落ちたとしても、別のサーバーに流すシステムを組んで、最長でも5秒で復帰できるように設計開発する。
開発と運用を一体化し、システム全体を柔軟なものにする。アプリケーションを作って終わり、ではなく運用面も考慮した、ほんとうに使えるもの。どれだけ負荷がかかって動くのかなど、動いている場面を想像しながら作れる。こうした点も考えられるのはエンジニアとして楽しめるポイントかもしれませんね。
― CTOの重要な職務の一つに、技術部門の採用も挙げられると思います。東山さんの考える、共に働きたくなるような優秀なエンジニアとは?
採用でみるポイントでもあるのが、ひねりなく単純に、勉強しているかどうか。「自分はこれができます」に留まらず、自主的に学ぶ姿勢を常に持っているかどうかだと思います。
やるときはやる。そういう素養のあるエンジニアであれば、アドテク出身ではなくとも適応していけるし、分野に限らずどこでも成功すると思います。
優秀の定義とは少し外れるかもしれませんが、これまで採用して活躍している人は、現場のエンジニア・クリエイター、みんなが面接の段階で「この人いいね。」っていう人。企業で働くとなれば、相性というものも、少なからずあるのではと考えています。
マインド面だと、変化を楽しめる人かな。アドテク業界は技術もサービスも進化がとても早いので、Fringe81でも毎年違うことをしています。そういった意味でも、常に前を向けるエンジニアはいつだってどこでも求められるのではないでしょうか。
(おわり)
[取材・文] 松尾彰大
編集 = 松尾彰大
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