『スヌーピー展』PRのクリエイティブディレクション・プランニング・デザインを手掛けたSemitransparent Design(通称セミトラ)。近年、あらゆる場面で「デザイン発想」の重要性が語られる。そのヒントを探るべく、インタラクティブな表現で知られるセミトラの田中氏と菅井氏にインタビューした。
近年、デザインの重要性が経営戦略でも語られるようになった。もっといえば、デザイナーに限らず、プログラマやプランナー、ディレクター、さまざまな職種でデザインの発想を取り入れる動きがある。
一方で、デザインという言葉はより広義に用いられ、その本質を捉えることが難しくなったといえるだろう。
更には、デザインを求められる場も、WEBとリアルの連動が当たり前になるなど、広がりをみせている。
果たしてデザインの本質とはどこにあるのだろうか?WEBとリアルを繋ぐデザインの発想方法とは?
そのヒントを探るべく、メディアをクロスオーバーさせたアウトプットを続けるSemitransparent Design(通称セミトラ)を訪ねた。
近年では、『東京2020オリンピック・パラリンピック』競技会場紹介映像のクリエイティブディレクション、『スヌーピー展』PRにおけるクリエイティブディレクション・プランニング・デザインを手掛けていた。
また独自のアートワーク(展覧会)を開催するなど、インターネット・リアルの概念を越えるアウトプットで注目される、田中良治氏と菅井俊之氏に全3回を通じて話を聞く。
― セミトラさんは、WEBとリアルをすごく自然な形で連動させていますが、メディアによるデザインの違いはどのような部分にあるのでしょうか?
菅井
僕自身は、あまり違いはないんじゃないかと思っています。WEBサイトをつくったとしても、WEBだけで完結しないことが多いですよね。
― WEBをつくるときでも、前後にあるリアルを考えているということですか?
菅井
そこが地続きなんです。ネットとリアルの連動とか、繋げるかと言わなくても、ケータイやスマホを持っている時点で繋がっているんですよ。
たとえば、電車に乗ったとき、みんなスマホをいじっていますよね。常に情報に触れていられる状態に、やっとなってきたと思うので、線引きをせずに考えるほうがいいと感じているんです。
― この『地続き』という発想について詳しく、例えば開催中の『スヌーピー展』を事例に教えてください。
菅井
最初に考えたのは、『スヌーピー展』は原画、フィギュアや展覧会場などいたるところに『モノがある展示』だということ。
来場した人は、写真を撮りたくなりますよね。撮影した写真がSNSを使って広がっていくことも、容易に想像できます。
そこで、会場となる六本木ヒルズで例年行なわれている『ハロウィンフォトスポット』とのコラボレーションが出来るという幸運にも恵まれたこともあり、展示会の中にある撮影可能な展示だけでなく、会場の外にも撮影スポットをつくりました。
WEBやブースをバラバラに企画するのではなく、全体のデザインを考えたときに、色々なモノが必要になるだろうと思ったわけです。
結果としてWEBやCM、ブースをつくりましたが、メディアによる違いとか線引きはなかったんですよ。
実現できるかどうかは別の話ですが、全体を考えたほうが面白いものを届けられそうですからね。
― WEBをつくるとなっても、『地続き』である以上、その前後にある事象まで考えるということなんですね。
菅井
インターネットってすごく多面的なので、見てるものだけで語れば画面に映っているモノが全てになります。
でもWEBサイトで見た印象だけではなく、ポスターやTwitterなどから得られる情報や、実態のあるモノを見て感じたことなど、色々な繋がり方や見え方をしていくことで、そもそも解釈が違ってきたりするじゃないですか。
菅井
立体的に情報を捉えておかないと、逆につくりにくいし、すごく盲目的になってしまうと思うんです。
だから『地続き』であり、初めから全体のデザインを考えています。
スヌーピー展の場合なら、写真に撮るというインタラクションからスタートして撮影のできる場所がコミュニケーションのハブとなって、現実世界にもWEBの世界にも繋がって広がっていった。これがネットワークだと思うんです。
考えた結果、現実を高めたほうがWEBにも波及するとなれば、WEBを手薄にして現実を盛るという選択も出てきますよね。
― オンラインもオフラインも含めて、一連のストーリーを描いたんですね。CMもWEBも撮影スポットも、ファンを主役に据えてつくられたように感じたのは、ストーリーがあったからだと納得できました。
― とても抽象的な質問になりますが、『デザイン』ってなんですか?この質問への回答から、デザインの本質ですとか、デザイナーに求められるものが見えてこないだろうかと思いまして。
菅井
デザインと言っても、絵をつくることが目的ではないですよね。極論を言ってしまえば、絵を作らなくていいかもしれない。
大切なのは、デザインをつくることではなく、デザインすることでどんな価値を生み出すかということじゃないでしょうか。
もしかしたらアートの領域かもしれないのですが、「いつも見ている視点と違う視点を与える」ことなのかな、と思っています。
※次回『デザインの可能性を殺すのは誰か。|Semitransparent Design[2]』に続く。
[取材・構成・文] 白石 勝也・城戸内 大介
編集 = CAREER HACK
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