わりえもんこと割石裕太さん(@wariemon)は、じつは整理オタクだった?Macのツール管理からノイズを極限まで減らす情報収集、デザイナーとしてのアイデア発想法まで必見です!
今をときめく注目のデザイナー「わりえもん」こと割石裕太さんをご存知でしょうか?
フリマアプリ「フリル(FRIL)」運営会社のFablicでアートディレクター / UIデザイナーとして働く27歳。ロゴリニューアルの背景を綴ったブログ「フリルのロゴができるまで」が反響を集め、記憶に残っている方も多いはず。
変化めまぐるしいインターネットの世界で、常に質の高いアウトプットを続ける割石さん。彼が大切にしているのは常に整理すること、情報の取捨選択を効率化するということ。
いったい割石さんはどんな風に仕事をしているのでしょうか?彼の仕事術に迫ります!
[プロフィール]
割石裕太 (@wariemon)/ Fablic, inc. : Art Director, UI Deisigner
成安造形大学卒業。2012年に面白法人カヤックに入社後、クライアントワークを経て Lobi を始めとする サービス設計・アートディレクション・UIデザインを担当。 2016年9月にFablicに入社後、フリルのデザインを担当している。人と接する温度感を意識したUIデザインを心がけている。
また、“「わ!」より「お!」となる体験を。” をコンセプトに OH という個人プロジェクト名で ロゴ・ブランディング・webデザインを中心に幅広く活動中。
― 本日は割石さんの仕事術に迫る企画なのですが、いきなり目に飛び込んできたのでツッコむと…MacのDockにアプリが少なすぎませんか?
そうですかね?(笑)
― 取材用にキレイにしたわけではなく?
はい(笑)いつもDockにはこれだけしか置いてないんです。たしかに整理したがりというのはあるかもしれませんね。
― なぜ、こんなに少なくしているのでしょうか?
ぼくのなかでは、シンプルかつ明確に目的とツールを紐付けるようにしていて。
いつも使うツールってだいたい決まっているじゃないですか。Dockにあるものと、SketchとPhotoshop、Illustrator、あと情報収集もChromeひとつで完結してますし。本来そこまでDockに置く必要はありません。
たとえば、部屋や机の上にしてもそうですが、散らかっているということは、結局何をやりたいのかが自分の中で決まってないってことだと思うんです。
集中できること、意識を割けるものには限度があります。なので、まずは選択肢を絞ることで、頭のスイッチの切り替えをしやすくしていますね。
― デザイナーとしてこういった整理整頓も大事に?
すごく重要なことだと思います。
情報整理ってデザインの重要な要素ですよね。デザインというと「画面上」にフォーカスしがちですが、机の上も、頭の中も、じつは一緒。自分自身の行動や思考をデザインするというか。
Dockの整理みたいな些細なことも「なぜ」を発見するトレーニングになっていて。本当に必要なのかどうか。それが必要なのはなぜか。いらないとしたらそれはなぜか。意図的に「なぜ」を増やす。
この「なぜ」を発見するというプロセスはデザインにおける問題発見にとても良く似ているし、課題解決の大きな足がかりになると思うんです。
― より具体的にツールの整理について伺いたいのですが、ご自身のなかにルールなどを設けているのでしょうか?
使用するツールに関して、ぼくは頭のなかでは「スタンダードエリア」というエリアを設けていて、そこに何を置くか決めています。
イメージを画にするとこんな感じ。
いろんなものを試してみるのですが、同じ役割のものは二つはいらない。スタンダードエリアにあるツールに置き換わらないものは基本消して数を増やさないようにしています。
デザインにおける作業上はもちろん、スケジュールやリサーチという目的においても「自分のスタンダード」を決めています。まわりのエリア(斜線部分)には、代わりになりそうなアプリやサービスがいっぱいある。試してみて、良さそうなら採用。やっぱり使わない場合には、また元のエリアに戻す、みたいな思考で取捨選択しています。そのように整理をして、関わるものを増やさないようにしています。
たとえば「プロトタイピング」という目的の場合、PhotoshopよりもSketchのほうが優れていると思ったので、すぐSketchを取り入れました。
― 整理にも自分ルールがあるんですね。やはりMacだけではなくiPhoneも?
していますね(笑)
アプリを目的別にカテゴライズ。本当によく触るアプリだけは Standard フォルダにまとめています。先ほどと同じで、不要なものは消して、インストールしてあるアプリの数を増やさないようにしています。
C2CのECならShoppingフォルダ内に、見ていく順番に並べています。フリル → メルカリ → ヤフオク といった感じで、スムーズに探せるようにしています。買い物するときは「買い物するぞ」というモードに入って、その時間はその目的が満たされるアプリしか見ないです。
― 選択肢を絞って頭のスイッチの切り替えをしやすくする。さらに目的別に整理する。これはいろいろなシーンで大切になりそうですね。
そうなんですよ。それは情報のインプットでも同じ。情報収集は「Feedly」「Twitter」、そして管理は「Wunderlist」を使っています。
Feedlyにはブランディング事例やライフスタイル、ファッション系の新着の記事を流すようにしています。Twitterだと、話題になっている記事やネタをキャッチアップして。
ただ、ここではタイトルと見出しを読むだけ。気になった記事をWunderlistにすべて追加してTODO化します。このリストは通勤時間などの空き時間に消化しています。
じつは業務や日常でのタスク、欲しいもの、やりたいことも全部、Wunderlistで管理しているので、「これだけみればOK!」という状態を作っています。
過去に読んで勉強になった記事を他人に紹介するときがあると思うんですけど、Wunderlistの中にリストが残っているので、あとから振り返るのにすごく便利ですね。
― 調べものをしていたはずが、SNSをダラダラみてしまうことは一般的によくあることだと思って…(笑)。作業に集中するために気をつけていることはありますか?
ネット上には興味を引くコンテンツがたくさんありますし、つい見てしまうこともあると思います。なので、「見る」と決めた時間以外は、他のアプリやブラウザを開かないようにしています。
あとは、プッシュ通知をきっかけに別のアプリに意識が移動してしまうこともあるので、基本的には全部オフにするのがコツです。
― インターネット記事以外に、意識してインプットされているものはありますか?
Pinterest と Instagram は眺めているだけで、新たな発見やアイデアの種が見つかったりするので、"あえて"なんとなく見るようにもしています。そういう時間も大事な気がして。
Pinterest活用方法でいえば、「自分のアイデアの裏取りするぞ」というときに重宝していますよね。
たとえば、フリルのロゴの色の組み合わせを確認するためにも使いました。頭の中に思い浮かんでいる組み合わせの色の作品を集めて、「実際にできあがっているものとして見たら、どんな印象を受けるのだろう」と調べる。すると「意外とアリだな」みたいのとか、逆に「予想外にどうにもならなそうだ」とかわかるんです。
作り始めのアイデアボードにも優秀ですが、裏付けとして使うのにも優れています。
また、Instagramは、撮影したひとの視点が色濃くでていて、自分と異なる視点が得られるのでよく見ています。たとえば、ファッションブランドのデザイナーが日常での気づきをアップしていたんです。ドイツのトイレットタオル(ロールになっていて、使い捨てではない)なんですけど、よくみると左右にロゴが入っていて邪魔しない程度に宣伝になっていたり。
普段何気なく生活している中にも、ちょっと異質なもの。発想のフックになるようなものがある。Instagramをきっかけに知って、そういうものを記録したり、自分でも写真を撮ったりするようになりました。
例えば、ある歩道橋の名前が書かれた看板なんですけど、読めそうで読めないものがあって(笑)
すごく気になりませんか?後から設置された手すりによって絶妙に隠れていたり。
こういうのって意識的にデザインしようとしてもできない。でも、人の頭には意外と残ったりする。こういう「整理されていない」を見つけると記録するようにしています。自分のデザインや思考とは反対の場所にあるもの。いつか、自分に足りないものを補ってくれる気がします。
― 日常における「偶然の発見」も大切にされているんですね。
今まで生きてきて目にしたもの、記憶に残っているものの中からつなぎ合わせてデザインしていることがほとんど、そういってもいいくらいです。
”ひと”が日常で触れているものをフックにしてデザインするほうが理にかなっているんですよね。デスクで目の前の案件のことばかり考え、悩んでいるときには何も生み出せないことのほうが多い。デザイナーが頭を抱えて悩んで、ストーリーを勝手に作ったところで、実はユーザーに伝わらないモノになってしまうことも少なくありません。一見よさそうに見えたとしても。
当たり前ですが、ロゴやデザインの背景ってユーザーと直接会って口で説明できないですよね。だからこそ、ビジュアルやロゴ・アイデンティティにおいては「共感してもらえるところ」が重要なんだと思います。
― 説明しなくても共感される、そのアイデアを探していくって難しくないですか?
あまり難しいことだとは捉えていないかもしれません。ユーザーの日常と、自分の日常を近づけていくことで少しずつ見えるものだと思っています。
たとえば、今まではテレビを置かずに、デザイナーっぽいシンプルでおしゃれな部屋を意識したりしたんです(笑)でも、たくさんの人たちが何に興味を持っているのか、なにを面白がるのか、ちゃんと知っていたほうがいいなと思って、改めてテレビを買ったんです。
他にも、毎日料理をして弁当をつくるようにしたり。もっとたくさんの人に受け入れられるデザインをつくるために、いろいろな人の日常や生活を知ろうとしています。
― なるほど。ちなみに出たアイデアはすぐデザインに落とし込めるものですか?
アイデアをカタチにする感覚、その勘所はカヤックにいたとき、すごく学ばせていただいたところで。 すぐラフスケッチしたり、メモしたり、得意かもしれません。
サクッと思いついた案を投げたり、「◯と△をくっつけたら面白くなるんじゃない?」みたいなコミュニケーションがすごく多い環境だったんですよね。たとえ実現しなくても「ここがわかりにくかったから、次はこうしてみよう」みたいにアドバイスをくれる人がたくさんいて。「思いつく」「やってみる」ことの早さや感覚が身についたと思います。
― 最後の質問なのですが、最近だと、わりえもんさんはアウトプットにもチカラを入れていますよね?
そうですね、発信から仕事をつくっていく、それもデザイナーにとって大切なことだと思うんです。外ともちゃんとつながって、自分自身や、自分がつくったものを知ってもらう。デザイナーとして生きていくために。
以前、ある社長さんに「一発屋と芸能生命が長い人の差って何かわかる?」と聞かれたことがありました。その答えとして「一発屋はただ突き進んでいたら偶然、時代とぶつかっただけ。あとはすれ違い続けるから終わってしまう」と教えていただきました。
一方、芸能生命が長い人の場合、「自分が時代とぶつかるタイミングをちゃんと見計らって、ずっとマッチし続けられるんだよ」と。これってすごく的を射ていると思ったんです。
ぼくはTwitterをよく使っていて、しょうもないこともつぶやいているのですが、リリース情報の発信頻度やタイミングはすごく意識して行なっています。発信の頻度が多すぎるとお互いの情報を食い合ってしますし。少なすぎると忘れられてしまうかもしれない。
受け手の側に立ち、受け取られ方を想像しながら発信すること、そしてより多くの人に届けるための努力。どちらも良いデザインをつくるために必要なものです。
― ツールや情報などの整理が、デザイナーのアウトプットの質を高めるためにも重要なんですね。若いデザイナーはじめ、いろいろな人にとって参考になるお話だったと思います。本日はありがとうございました!
文 = 大塚康平
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