マネーフォワードの新・グループ会社 MF KESSAI にて技術責任者を務める篠原祐貴さん(30歳)。25歳でSchoo初代CTOに就任。その後も数々の技術組織を率いてきたエンジニアだ。そんな彼に質問をしてみた。「篠原さん。もし、いま25歳だったら何をしますか?」
[記事ハイライト]
・「もし、いま25歳だったら何を学ぶ?」
・篠原祐貴さんが重視するのは「アーキテクチャ設計」と「英語力」
・25歳。冒険できる時に冒険できて楽しかった
・いまだから実感するアーキテクチャの重要性
・もし25歳に戻るなら、ガチで英語やります
・動きながら身につけるべきスキルを考えてみる
「もし、今、25歳だったら何をしますか?何を学びますか?」
テック業界のトップランナーに、こんな質問を投げかけてみる特集企画! 「25歳」は大学卒業後の新卒であれば社会人2~4年目くらい。新人時代を経て、仕事の幅、キャリアの可能性が広がる時期。テック業界ではキャリアの節目になることも多いはず。いったい何を学べばいい? どう過ごすといい? CAREER HACK編集部が独自に取材し、直接いただけたアドバイスをお届けします。
今回取材に訪れたのは、MF KESSAIの篠原祐貴さん(30歳)。
エンジニアとしてWebの最前線をひた走ってきた篠原さん。ヤフーでの新規事業立ち上げ、Schooの初代CTO、メドピアにて技術部長を経て、2016年12月にマネーフォワードに入社。現在はマネーフォワードのグループ会社 MF KESSAI(※)の技術責任者を担う。
もし自身が25歳だったら、篠原さんが学びたいと語ってくれたのはこの2つ。
・アーキテクチャ設計能力
・英語力(技術の話が読解できるレベル)
なぜ、このようなスキルがエンジニアとして大事に? ご自身が25歳だったときのこと、キャリアのターニングポイントを振り返りながら伺った。
※MF KESSAI(サービス)とは、取引データを入力するだけで、売上金の回収までが行われる新たな企業間後払い決済サービス。
[プロフィール]MF KESSAI株式会社 技術責任者 篠原祐貴
ヤフーにて新規サービス立ち上げ、Schooの初代CTO、メドピアでの技術部長などを経験。その後、合弁会社で新規サービスをリリースした後、2016年12月にマネーフォワード入社。2017年2月よりMF KESSAIで技術責任者として開発に従事。
▽過去のインタビュー記事
・スモールチームのCTOに求められるサービス設計能力―schoo 篠原祐貴氏のCTO論
・“手”が先に動くか?“頭”が先に動くか?―schoo CTO篠原氏の考える優秀なエンジニアとは
― 「もしいま25歳だったら何をするか」について伺っていきたいと思います。その前に、篠原さんの25歳の頃について教えてください。
24歳から25歳にかけては、創業間もないSchooにジョインした頃ですね。新卒で入社したヤフーを辞めて。環境や待遇などが恵まれていたヤフーから、本当になにもないといっていいベンチャーに。
結果、自分が大きく成長できた実感があります。なんでもあった大企業から本当に何も無い創業期に加わった事で視野も広がりました。なんでもゼロから自分でやらなくちゃいけない。追い込まれた状況を経験できて良かったです。
もうひとつ、大きかったのは自分がどの領域に興味があるのか気づけたこと。Schooでの体験をキッカケに「開発」が好きになりました。起業する感覚にも近くて、冒険できるときに冒険できたことはやっぱり楽しかったですね。
― 逆にヤフーを辞めて、後悔したことはないですか?
後悔はありませんが、環境はガラッと変わりました。ゼロからモノを作れる楽しさにばかり目がいっていたかもしれません。
ただ、「スタートアップで働くというのは、そういうこと」と受け入れつつも、現実として、給料は大幅に下がりましたし、労働時間はめっちゃ増えて、お金と時間が無くなり、つらいと感じる時期もあったことは事実です。
どこかで「人生の大切な時間を犠牲にしているのかな」と捉えてしまう時もあって。当時Facebookがちょうど流行りだした頃。みんなが充実したプライベートを投稿していて、羨ましく感じていました(笑)
とはいえ、貴重な経験ができましたし、飛び込んだことに後悔はありません。乗り越えるには、「時間もお金も投資だ」と捉えられる感覚があった方が良いと思います。ただ、今思うと自分のタイプ的に「ゼロからのどベンチャーは自分には合わない。ただ、そこで得られる経験はかけがえのないもの。」ということに気づけたので、それもまた得られたことのひとつですね。
― ここから本題なのですが、もし今、篠原さんが25歳だったらどんなスキルを磨きますか?
中長期目線でいえば「アーキテクチャ設計能力」です。
新卒3年目は「新しいコードを書きたい」という気持ちが強かった時期。その頃に書いたコードに関して、中長期的に運用しやすいコードか?と問われるとNOなんですよね。
昔に組んだ設計が甘く、改修コストの方がかかってしまう。負債になってしまう。そういったことをあとから経験しました。
たとえば、過去に開発していた”あるサービス”はアプリケーションファーストで、インフラはアプリケーションを動作させる為の環境という形でした。なので「スケールする仕組み」を前提に作られておらず、あとから苦労しました。新しい仕様を追加する時に時間がかかってしまったり、他のチームに影響を与えるようなバグを仕込んでしまったり。インフラチームメンバーが勘で解決することになってしまったり。
予算が限られる事はしかたが無いです。その限られた範囲内で、アプリケーション・インフラ・セキュリティなども含めて、全体的にどのような設計をすると最適か。求めるパフォーマンスを発揮させることができるのか。開発のしやすさを損なわない仕組みってどんなんだろう?と本気で考え抜く。その必要性が今なら理解でき、違った結果を生み出せると思います。
― その他のスキルについてはどうでしょうか?
技術以外になりますが、英語ですね。もし今、25歳だったら、セブやカナダなど語学留学に行って本気で英語を身につけますね。
ぼくが25歳だった5年前と比べても、さらに英語修得の重要度が高まっていると考えています。
新しい技術はやはり海外で生まれて、海外で育つことが多い。ドキュメントや事例なども英語ですし、主要なカンファレンスも海外で行われます。最近だと、海外を含めて、Google GroupやSlackといったコミュニケーションツール上で、技術ごとにコミュニティができています。英語で情報を仕入れることは必須になっているんです。
― 自動翻訳では追いつかないのでしょうか?
もちろん、かなり精度は高くなっていると思います。ぼくもよくGoogle翻訳に頼っています。ですが、まだまだ難しいと思っていて……。
たとえば、変数名・関数名、そしてコメントに。当たり前ですが英語が使われており、抽象的表現が用いられていることもあります。ネイティブの英語表現がわからないと、ニュアンスが捉えられないことも多いです。さらに技術的な話題が絡んでくると、自動翻訳に頼りきらず、自身で勉強したほうがいいと思います。
― 最後に、スキル習得において大切な考え方があれば教えてください。
いま何したら良いか分からないとか、出来ることが少ないとか、悩みって誰にでもあると思います。ただ、そのときどき、「目の前の仕事に必要なスキル」を身につけるのが結果的には最短ルートなのかもしれません。
ぼくの場合、ヤフーでは新規サービス開発や運用をメインとするサーバサイドエンジニアでしたので、サーバサイドエンジニアとしてのキャリアを考えていたんです。しかし、AWSについて詳しくなれたタイミングがあり、そこからキャリアの可能性が広がりました。
時期的には、スタートアップ界隈でAWSの導入が広まっていた頃、Schooにいたとき。結果的にも、クラウドサービスに対する知見が増えたので「クラウドインフラエンジニア」を名乗るようになったんですよね。
今もってるカードで戦えそうなら戦って、カードが足りないなら、カードを増やしていく。そういった目的で、技術書、ビジネス書を読んだり、手を動かしていく。あとは、比較的積極的に勉強会に参加したり、IT系交流会に言ったりしていました。
そういった行動の中で自分に合わないと思えばやめればいいし、合うと思うものに出会えたら深めていく。それが結果として「カード」になっていくのではないでしょうか。
(おわり)
文 = 大塚康平
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