メルカリ(開発:ソウゾウ)が旅行領域に参入する。なぜ、今このタイミングで旅行領域なのか。プレーヤーが多い市場でどう戦っていくのか。ソウゾウ取締役CTOの鶴岡達也さんに、参入背景と勝算について伺った。
メルカリが「旅行領域」に参入するーー7月27日にこんなニュースが飛び込んできた。
なぜ、旅行領域なのか。
どのように戦って行くのか。
勝算はあるのだろうか。
メルカリ創業期から代表である山田進太郎さんを支え、ユニコーン企業への成長に貢献した鶴岡達也さんに話を伺った。
※7月27日、メルカリが旅行領域へ参入することが明らかになった。2018年秋頃にサービスリリースされる予定。旅行領域での新規事業はグループ会社のソウゾウが企画開発する。鶴岡達也さんがソウゾウ取締役CTOとして開発組織を牽引していく。また8月7日に開催されるイベントでは参入意図について語られるという。
[プロフィール] 株式会社ソウゾウ 取締役CTO 鶴岡達也
ソウゾウの経営と開発組織のマネジメントを担当。2005年よりウノウ株式会社で写真共有サービスの開発を担当し、その後二度の起業を経験。2013年、メルカリ代表の山田進太郎氏からのオファーを受けて、メルカリ創業を技術的に支援。ソウゾウ設立後は新規サービスの技術選定、設計・開発・運用を担当し、現在は新規サービスを生み出せる開発組織のマネジメントに注力。
なぜメルカリは旅行領域で勝負しようとしているのか。
その疑問に対し、鶴岡さんは語ってくれた。
「メルカリは“ネクストユニコーン”を生み出そうとしています。そのためには『メルカリ』に匹敵する大きな事業を作っていく必要がある。それが旅行領域だと判断しました」
検討の土台には「コミュニケーション」「VR/AR」「旅行」などがあがっていたそうだ。最終的に絞り込んでいくなかで重要視したことは、メルカリの事業の柱になり得るか。
「長期的なスケールを考慮した上で、旅行領域へ挑むことを決めました。また、まだ手がけられていないところの穴を埋めていきたいといった考えも。これまでメルカリが扱ってきたのは“モノ”。そしてメルペイでは”お金”。旅行領域の新規事業では、“体験”や“コト”を扱っていく。そんな3本柱を築いていきたいと考えました」
垣間見える狙いとしては『メルカリ』がこれまでリーチできていなかったユーザー層を狙いにいくというもの。それは「モノより思い出を大切にする人たち」といってもいい。つまり旅行領域のサービスによってより多くの人々に「価値」を提供していくということ。
ただ、ひとつ気になるのが「勝算」はあるのか。
2018年、スタートアップをはじめ、旅行領域への事業参入が目立つ。10年以上存続する大手の既存プレイヤーも多い。まさにレッドオーシャン、メルカリの戦い方に迫った。
メルカリ、最大の強みは「人」といっていいだろう。
メルカリ経営陣は、新しい事業を生み出し成功させるといった観点で、最強のチームと言っても過言ではない。
起業経験者や新規事業の成功体験を持つ者はもちろん、名だたるPMやエンジニア、さらに投資家…それぞれの「叡智」が集結する。もしかしたら、VCよりも成功する事業を見極める精度は高いかもしれない。
旅行領域の事業に関して伺えたのは、そんなメルカリの経営陣がブレインとしてコミットしていくということだ。
具体的には、月に数回おこなわれるブレイントラスト(※)にて、どんな事業領域で、どんなプロダクトを作るのか。なにを目指すのか、「WHAT」について議論されている。
「ブレイントラストは、スタートアップが投資家に向けてプレゼンしているような緊張感があります。メルカリの経営陣が一堂に会し、意見が交わされる場。良いものを生み出そうとする一体感もあります」
ここで導き出されたプロダクトの方向性や戦略などは、非常に確度の高いものになっているだろう。
そこから、どのように実装し、実現していくのか。現場の開発メンバーが「HOW」を担っていく。
「なにをやるかを間違えないことが成功の鍵です。間違えた方向を選ぶと、その先の2年が無駄になることもあります。だからこそ「WHAT」を考えることにリソースを割いていく」
(※)ピクサーが実践しているとして知られる「ブレイントラスト」。経営陣が一堂に会し、過去の自らの経験や知識に基づいて意見を交わす。イグジット経験やスタートアップへの投資経験など、彼らの知見を最大限に活かし、新規事業のブレインを加速させていく。
注目したいのは、2018年4月から、ソウゾウは新体制に変化していること。前代表の松本龍祐さんはメルペイへ。新たに原田大作さんが代表取締役社長に就任している。
さらにメルカリやメルペイに異動したエンジニアやPMたちも多い。そして、新規事業に強い一部のメンバーがソウゾウに残り、再スタートを切る。もちろん注力するのが「旅行領域」だ。
『メルカリメゾンズ』『メルカリNOW』『teacha』の3サービスをクローズしたことも、経営リソースの再配置によるところが大きい。
「サービスが長期的によくならないのであれば、できるだけはやく止める判断をしたほうがいい。インパクトの大きな事業をつくることに絞り、リソースを集中させる」
これまでのソウゾウの方針は「メルカリIDを拡張させていく事業開発」にあったという。ところが、2018年4月から再スタートした新生ソウゾウは、「メルカリとは独立した事業を開発していく」という方針へ。
さらに先にあげた「ブレイントラスト」を取り入れ、その名の通りメルカリグループ全体の首脳陣がソウゾウの「脳」となり、事業の成長を図っていく。
進むべき道は示された。新生ソウゾウは「旅行」を軸にネクストユニコーンになれるか。
今後の動向に注目したい。
文 = 大塚康平
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