『TikTok』を企業アカウントとしてどう使う? コツについて宿泊予約サービス『Relux』に聞きました。彼らは開設5ヶ月、総再生数2000万を突破。狙っている「15秒間のTikTok映え」とは?TikTok運用チームを束ねる持田史樹さん(27)にお話を伺いました。
・TikTokアカウント:@relux_travel
・2018年11月から運用スタート。5ヶ月後に総再生数2000万を突破
・ファン数:1万8500
・総いいね数:45万5800
※2019年4月24日時点
2018年11月にスタートさせた公式アカウントのフォロワー数はまもなく1万9千人に到達。さらに累計再生回数は2,000万回を突破。景色や宿泊施設など「映える」旅行先選びの参考になるショートムービーを毎日投稿し、TikTok内での旅行コンテンツの人気が上昇している今、注目の存在に。
[プロフィール] 持田史樹(もちだふみき)|株式会社Loco Partners 事業企画部
1992年生まれ。新卒でトヨタ自動車株式会社に入社、空力技術の開発業務に従事。たまたま旅行の際に使用した『Relux』に興味を持ち、2018年にLoco Partnersにジョイン。事業企画部にて他社との連携やセールスプロモーション、TikTokをはじめとした新規事業推進を担当。
─ TikTokをマーケティングツールとして使いたい企業は多いかと。とくに大切なこととは?
ぼくらは「TikTok映え」と呼んでいるのですが、TikTokに投稿できる15秒間で起承転結、ストーリーを伝えること。
まずは「起」はインパクト。最初の数秒で「おっ!」とユーザーを惹きつける驚きを与え、メリハリをつけて展開させていく。ユーザーがスクロールしやすい設計なので、この2点を意識しないとユーザーはあっという間に次の動画に移ってしまいます。
動画の冒頭には美しい一枚写真を使うか、被写体を普段とは違う目線から見せるなどして、最後まで動画を視聴してもらえるようにしました。ドローンを使ってリゾートを上から撮影してみたら、まだ見ぬ景色を見られそうでわくわくしますよね。
部屋の中に庭がある部屋を取り上げた投稿には、大きな反響がありました。その動画の始まりは襖を開けるシーン。開けたその先を期待できて、「こんな宿泊施設があるんだ」って驚きを引き出せたのがよかったのだと思います。
─ 『Relux』ではFacebookとInstagramも運用されていますが、この2つとTikTokでは投稿にどのような差をつけていますか?
TikTokはユーザー層も用途も他のSNSと違うので、FacebookやInstagramのノウハウをそのまま持ってきて成功するわけではありません。ユーザーが「やってみたい」と思える参加型コンテンツへのエンゲージメントが高い点が、TikTokの大きな特徴ではないでしょうか。
TikTokのユーザー層は10代が最も多く、学校でも「あのTikTok見た?」と話題になるそう。ただし話題になる「おすすめ」のピックアップに規則性を見出せず、どんな動画が人気になるか予想しにくい点が私たちも苦戦しているところです。
単にきれいな動画を掲載するだけでは見てもらえない点が、特に意外でした。
次々に動画が流れていくTikTokでは、最初の1秒にも満たない時間で動画の続きを見てもらえるかが決まる。瞬間でわくわくを届けられないと、すぐに離脱してしまう。当初Instagramでリーチが伸びそうな動画を投稿したらビュー数が伸びず、TikTok独特の難しさを実感しました。
ー すでに運用されているSNSがある状態で、なぜTikTok導入を決めたんでしょうか?
『Relux』を使っていない若い世代にもっと宿泊体験を楽しんでいただきたいと考えています。
もともと『Relux』は高価格帯の宿泊施設が掲載されているイメージが強いですが、最近では低価格な民泊やホステルの掲載もスタートしています。コンセプトが魅力的でお客様の満足度が高い施設に関しては、価格にとらわれずにご紹介しているんです。
TikTokのメインユーザー層は10代から20代の若年層。これから『Relux』を広めていきたい年齢層とTikTokのユーザーがマッチしているのではないか、と判断しました。そのような若い世代を中心に、動画で旅行先を選ぶ時代が到来するのではないかと考えているんです。
今、旅行先選びにInstagramを使う人が多いですが、写真よりも動画のほうが旅先や宿泊施設の様子がわかりやすい。
旅行を動画で記録してアップする人も増えているので、将来的にはTikTokで旅行先を決めるユーザーが確実に増えるだろうと予測しています。旅行先を選ぶ方法の変化への備えが今から必要だ、との考えも導入理由の一つでした。
ー この5ヶ月間、公式アカウントをどのような体制で運用してきたのでしょうか?
TikTok専任のメンバーが2人と私で計3名の運用チームを組んでいます。
全員男性で。実は導入が決まるまで、私も他のメンバーもTikTokに触れた経験がありませんでした……。TikTokを当たり前のように使っている10代からすれば、おじさんですよね(笑)
詳しい人が社内に誰もいなかったんですよね。しかもTikTok全体として女性の投稿が多い中で私たちのチームは全員男性なので、最初の頃は「なんで口パク動画を投稿したくなるんだろう?」と若い世代の感覚を理解するのが難しかったです(笑)。
アカウント公開前の事前リサーチから始め、最も難航する素材集め、ハッシュタグでのデータ収集、現在は1日1~2回以上の投稿、1週間に1回のネタ会議など一貫してチーム内で行なっています。
TikTokを始めた頃のリサーチでは旅行のハッシュタグを中心に、たくさんの投稿に目を通すことから始めました。撮り方や見せ方を知るために、数で言えば100人分以上のアカウントをチェックして。運用を開始した当初は1日3投稿を続けていました。
今でも旅行関係の投稿チェックは続けていて、プラスして『Relux』でアップした1投稿に対する視聴回数、コメント数、いいね数、そしてフォロワー数の変動を毎日記録しています。毎日の数値チェックは欠かせません。
当初は15秒間の動画制作に思ったより手間がかかるな……と戸惑いました。それでも続けてきた結果、こうして少しずつ注目していただけている手応えがあって嬉しいですね。
特に累計2,000万回再生は期待以上の数値でした。
─ これからTikTokを使って、どのようなチャレンジをしていきたいのでしょうか?
TikTokが誕生した中国では月間アクティブユーザーが5億人にのぼり、決済サービスが搭載されてECサイトとして商品を購入できる機能を持っています。
企業もどんどんマーケティングに使っていますし、日本でInstagramのタグ検索を使って友だちと一緒に行くカフェを決めるように、中国ではTikTokを使って旅行先を決めるプラットフォームにまで成長しているんです。
私たちがアカウント運用を開始して5ヶ月、現段階ではまだ『Relux』のユーザー数や予約数増加といった直接的な成果には結びついていません。まだリンクを掲載できないので、日本ではマーケティングの効果をすぐに求められるほどプラットフォームとして成熟していないと言えるでしょう。
ただ、弊社におけるTikTokマーケティングは当初から長期的な投資と認識しています。
いずれは中国のような動きが日本にも入ってくると想定しているので、その変化を見据えて今はTikTokでの『Relux』ファンを増やしていきたいですね。
僕自身全く馴染みがなかったTikTokに挑戦してみて、「変化に対応できる柔軟さ」の重要性を痛感する毎日です。
TikTokってどのユーザーが投稿しているのかは重要じゃないので、フォロワー数を増やすことが難しいんですよね。確かにこれまでのSNSよりノウハウ化しにくいですが、日々発見がたくさんあるのでおもしろがりながら運用しています。
4月から新社会人となるみなさんに、仕事にとって大切なこと、役立つ体験談などをお届けします。どんなに活躍している人もはじめはみんな新人。新たなスタートラインに立つ時、壁にぶつかったとき、ぜひこれらの記事を参考にしてみてください!
経営者たちの「現在に至るまでの困難=ハードシングス」をテーマにした連載特集。HARD THINGS STORY(リーダーたちの迷いと決断)と題し、経営者たちが経験したさまざまな壁、困難、そして試練に迫ります。
Notionナシでは生きられない!そんなNotionを愛する人々、チームのケースをお届け。