2020.03.27
外泊するほど安く住める家をつくった話|unito 近藤佑太朗

外泊するほど安く住める家をつくった話|unito 近藤佑太朗

外泊するほど家賃が安くなる住居「unito(ユニット)」。にわかに信じがたいサービスを手掛けるのは、近藤佑太朗さん(25歳)。多拠点生活を送るなかで、「家賃払いの違和感」に目をつけた。働き方が多様になった今こそ、住まいをアップデートしたい――彼の志をお届けしたい。

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僕らにフィットした住居を探し求めて。

「月の半分以上家に帰らないのに、家賃全額払うのっておかしくないですか?」

もともと宿泊施設やCo-living施設を経営していた、近藤佑太朗さん(25歳)。仕事柄、東京と地方を行き来するなかで、ふと疑問を抱いたという。

「毎月当たり前のように固定の家賃を払っているけれど、家にいる人と家にほとんど帰らない人と同じ家賃を払うのって理にかなってないよなって」

そんな「家賃への違和感」をきっかけに、彼は半年後、”外泊するほど家賃が安くなる”家をつくる。

千代田と渋谷の2拠点でオープンを予定している、「unito(ユニット)」。外泊すると、部屋は自動的にホテルに切り替わり、外泊した日数分、家賃から差し引かれる。リリース直後から問い合わせが殺到し、現時点*で部屋の半数がすでに埋まっているという。(*3月25日時点)

「テクノロジーによってあらゆる領域が最適化されているのに、暮らしの領域だけが手つかず。僕らにとって最適な住まいが求められているはずです」

レガシーな不動産業に新しい風を吹き込む、unitoの勝算に迫った。

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【プロフィール】近藤佑太朗 unito,Inc CEO 1994年11月生まれ。東京出身。東欧ルーマニア育ち。幼少期の3年間、父の仕事の都合上、東ヨーロッパのルーマニアで育つ。大学1年次、国際交流を軸に活動する“学生団体 NEIGHBOR”を設立。明治学院大学在学中にクロアチアのビジネススクールZSEMで観光学を勉強。帰国後、国内スタートアップ、Airbnb Japanで修行し、起業。創業1年半で、国内5拠点(伊豆大島・六本木・代々木上原・成田・雑色)、海外1拠点(Cambodia,SiemReap)で宿泊施設・Co-livingを展開。MakersUniversity3期生 / EO主催 GSEA2018 日本2位

「家賃、もったいなくない?」

ー「外泊した分だけ家賃が安くなる」という発想、いままでになくとてもユニークだなと思いました。着想の経緯から教えてください。

もともと僕自身が仕事の都合で出張が多く、1ヶ月の半分しか家に帰っていなかったんです。そんな生活を続けているなかで、ふと疑問に思ったんですよね。半分しか家に帰っていない人間と毎日帰っている人間が同じ家賃払うって理にかなってない。

家賃って、支出の中で一番大きいじゃないですか。毎月給料の3分の1が目安といわれていますけど、けっこうな金額ですよね。

周りの友達も、同じように住居に対して課題を持っている人がたくさんいました。スタートアップの経営者の友人は、会社の近くに住みたいけれど都心での一人暮らしは高いから住めないとか。個人事業主、フリーランスの友人は、引っ越しのときに保証会社の審査で落ちてしまうとか。

もっとぼくらにフィットしたあり方があってもいいんじゃないかなって思ったんです。働き方もライフスタイルも多様になっているのに、住居のあり方だけが昔から変わっていない。

たとえば「礼金」も、じつは江戸時代からはじまったもの。当時は士農工商という社会的なヒエラルキーが背景にあって、地主に対して「住まわせてくれてありがとう」というお礼が必要だった。でも、いまは江戸時代じゃないし、そういう時代ではない。。なのに、強制的に払わなきゃいけないのっておかしいですよね。

ー たしかに、住居のあり方ってもっとフレキシブルでもいいし、礼金や敷金もないのが理想ですよね。どうして、いままでunitoのような、新しい料金システムがなかったのでしょう?

単純にホテル業をしたり家賃を払ってもらったほうが儲かるからですね。不動産は利回りがとても大事だし、ディベロッパーも大手ばかり。なかなかイノベーションが起きづらかったんだと思います。

でも、僕たちはめんどくさくても、儲からなくても、世の中をちょっとでも前に進めるためにリスクをとって新しいことにチャレンジしていきたい。ちゃんとマネタイズできる方法を見つけて、「こんなやり方もできるんだ」と証明していきたいですね。

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暮らしに課題を抱える、3つのターゲット

ー すでに問い合わせを多数集まっているとのことですが、実際にどんな人が使うのでしょうか?

大きく3つの属性があるのかなと思っています。

1つ目は、仕事場の近く住みたい人。unitoは山手線を中心に展開していく予定なので、都内近辺に務める方はオフィスから徒歩圏内、あるいは自転車通勤が可能になると思います。僕自身も赤坂に一度住んで、通勤時間が10~20分くらいになったら劇的にQOLが上がったことがあって。1日最大限に活動したい、楽しみたいと思っている、若い世代は増えていると思います。

2つ目は、東京と地方を行き来する2拠点で活動している人です。経営者やクリエイター、セールスサイドの方に多いんですけど、大阪から東京に週1で通うとか、月に1週間は地方に出張するとか。そういう人たちって、マンスリーマンションも借りれないし家も借りれないし、ベストな住居がいままでなかったんです。潜在的にマーケットとしても大きいと思っています。

3つ目は、都心の仮住まい層。郊外に家を持っていて、平日は都心で働いている人ってけっこういるんです。通勤には1時間以上かかるし、時間的にも体力的にも、平日の何日間は都内で住める場所があれば、もっと仕事に集中できる環境がつくれるんじゃないかなって思いました。

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「そんなのできっこない」苦戦した資金調達

ー 着想から半年でオープン、ものすごいスピード感ですね。リリースまでに苦労した点はありましたか?

めちゃくちゃありました...(笑) なかでも苦労したのは資金調達です。銀行に融資をもらいにいったとき、「そんなのできる?」といわれて断られまくりました。「ホテルなら貸せるけど、なんだかよくわからないから出せない」と。

僕らのやろうとしていることは、たしかに普通の不動産業でも宿泊業でもない。誰もやったことのない新しいことだからこそ、理解してもらうことに苦戦しましたね。エンジェル投資家の方々に支援いただきつつも、半分以上は自己キャッシュをつぎ込みました。

あとは、社員は僕一人でやってきたので、メンタル的にきついときもありましたね。ポシャったら全部自分の責任ですし。

ー 心が折れそうになることはなかったんですか?

それは全くないですね。たしかに失敗できないプレッシャーはあるけど、暮らしの領域でイノベーションを起こしたいんですよね。

今って地球史上一番時代の流れも早いじゃないですか。色んなものが同時多発的に動いていて、いろんな産業がアップデートしようとしている。これまでの宿泊業や不動産業の経験も糧にできますし、運良くお金を投資していただいて、チャンスもいただいている。だからこそ、強い意志をもって取り組まないといけないなと思っています。

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世界中の都市に、最適化された暮らしを

ー最後に、今後の展望を教えてください。

まずは、無事にオープンすることですね。もともと3月末にオープン予定だったのが、コロナの影響で遅れているので、お待たせしている入居予定の方に満足していただけるように急ピッチで準備進めています。

今後については、東京に限らず、世界の大都市にも展開していきたいですね。先進国・途上国関係なく、シンガポールとかジャカルタとか、都市として人口が増えていくエリアで、ミニマムで快適な住居を提供していきたいです。

その時に、ハードウェアだけじゃなくって、パーソナライズされた暮らしを、顧客データを分析し活用することで提供できたらと思っています。料金システムだけでなく、最適化された備品とか家具家電とか、洋服とか。たとえば、僕カルピスめっちゃ好きなんですけど、着いたら冷蔵庫にカルピス入ってるとうれしいじゃないですか(笑)

ひとり一人にとって「暮らし」は違うからこそ、フィットする仕組みを今後もあらゆる方法で仕掛けていきたいです。

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左から、Unito Inc. PM タマキ リョウジさん、Unito Inc. CEO 近藤佑太朗さん、 Unito Inc. CDO / CIAL Inc. CEO Yuta Totzさん


取材 / 文 = 野村愛


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