2019.06.18
服づくり素人の僕らが、1年かけて『アロハシャツ』ブランドをつくった話

服づくり素人の僕らが、1年かけて『アロハシャツ』ブランドをつくった話

アロハシャツブランド『Eanbe』リリースまでの奮闘記をお届け!「探しても、探しても、製造工場が見つからない」 服作りに関してズブの素人だった下地希一さん、酒井大輝さん。どうしてもアロハシャツが作りたい…彼らを突き動かしたのは「アロハが好きすぎる」というシンプルかつ強い思いだった。

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「アロハシャツが好きすぎて」Eanbe 誕生秘話

「いやぁ、ついにブランドをつくってしまいました」
「アロハシャツが好きすぎて」

そう語ってくれた下地希一さん(25)と酒井大輝さん(27)。アロハシャツ専門ブランド『 Eanbe 』を立ち上げた二人組だ。

下地さんは普段、制作会社で働くWebデザイナー。酒井さんは音楽活動をしながら、古着女子で知られる『yutori』の新規事業でディレクターとして働くパラレルワーカー。

アロハシャツは「二足のわらじ」な活動だが、今回立ち上げた『Eanbe』への思い入れはハンパじゃない。

「良いものをつくる。ガチでやる。こだわり抜きました」

ブランドの立ち上げはもちろん、服作りもド素人だった2人。

「コネはもちろん、経験のある知り合いもいない」
「製造工場が見つからず、とにかく電話しまくった」
「インスタで見つけたイケてるイラストレーターさんにデザインを発注した」

などなど、持ち前の実行力でアパレルブランドを立ち上げてしまった。

「いま振り返ると無茶苦茶ですね(笑)」

幾多の困難を「自分たちでアロハシャツをつくりたい」という「アロハ愛」だけでひた走ってきた。そんな彼らの1年間にわたるブランド立ち上げ奮闘記に追った。

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下地さん(左)が2018年夏頃からブランド立ち上げを準備。2019年の年始に酒井さん(右)が加わった(※彼らの出会いについてはnoteに綴られている)

交渉した工場は100社以上。返事は全て「NG」だった。

――ブランドのリリースおめでとうございます!ただ、お二人ともまったくの素人だったと伺いました。けっこう大変だったのではないかと…。

下地:
そうですね。わかりやすいところでいうと、交渉したアパレル工場からは全て門前払い。「アロハシャツ?つくれないよ」とか「あんた、誰だよ」とか(笑)「版は?」とか聞かれても「なんすか、それ」みたいな。そもそも素人だし。だれも相手にしてくれなかったですね。

酒井:
パターンから自分たちで作った服を売ったこともないし、つくるなんてもってのほか。ただ、服が好きという気持ちだけ(笑)

下地:
これはマズいと思って調べていって。ちょっとずつ服作りの工程がわかってきたんです。そこでやっと「小ロット発注になるので、直接工場のやり取りは厳しい」と気づいた。それならOEMを使おうと製造を請け負っている100社ぐらいに電話して。あとは展示会で直接交渉したりしましたね。…ただ、やっぱり「論外」って感じでした。絶望的でした。

――結局、工場はどうされたんですか?

下地:
ダメ元で地元沖縄の工場にも連絡してみたんです。そしたら「おもしろそうだからやってもいいよ」とふたつ返事でOKしてくれた。そこの代表が下地さんって僕と同じ名字で。偶然にも高校の先輩だったんですよ。しかも自社でアロハシャツもつくっている方でノウハウもある。ただただ運が良かったですね。

もともと「工場くらい楽勝で見つかるでしょ」と思ってたんですけどね。甘かったです。じつは工場も決まっていないのに、デザイン発注は先に進めていたんですよ。つくる気満々で。『Eanbe』の世界観やイメージ、雰囲気に合うイラストレーターさんを、インスタで探して。直接オファーしました。

最高のイラストレーターさんが見つかった。肝心の工場が全く見つからなかったのは、正直、焦りましたね。

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僕らには「アロハ愛」がある。むしろそれだけ。

――全ての工場に断られ続ける…心が折れそうですが…。

下地:
いやホントに。じつは折れかけてたんですよ。大金を積めばOEMで組んでくれるなら、とにかく貯金するところからはじめようかな、とか。

――それでもやめずに交渉しつづけられたのがすごいです。なぜそこまで?

下地:
ただの「アロハ愛」ですかね(笑)アロハシャツを年中着ていると、服に対するこだわりがどんどん出てきて、なかなか「自分が着たい」って思えるかっこいいアロハに出会えなくなってきたから、じゃあ自分でつくろう、と。せっかく作るなら多くの人に「着たい」と思ってもらえる服にしたいし、アロハシャツを着る人口を増やせたら嬉しいし。そういう思いだけですね。

酒井:
あと僕は、アロハに「可能性」を感じたんですよ。

下地:
可能性…大げさな気もするけど(笑)でも、確かにあるよね。

酒井:
あるある。アロハシャツのリブランディングというか。

いま古着女子というメディアを運営する『yutori』に関わっているのですが、Tシャツとか、パーカーとかって競合が多いんですよ。ただ、若い人たちに受け入れられてるアロハブランドってほとんどない。これは戦える土俵があるぞ、と。

たとえば、旅や音楽が好きだったり、気負わなさだったり、アロハって「自由な感じ」にすごくマッチする。そういう空気が好きな「僕らにしかできない感」があった。そこがすごいおもしろいと思ったんです。

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…え?完売?

――ブランドをオープンしてみて約半月ですが、反響はいかがでしょうか?

下地:
ありがたいことに想定以上でしたね。結構売れていて、Sサイズは全ルック完売しました。(※)

酒井:
正直、ここまで売れるとは思ってなかったよね。

下地:
そうそう。「自分はアロハ好きだけど、みんなは受け入れてくれるんだろうか…」と怖すぎた。リリース直前まで売れる気しないって震えてたんですよ(笑)

酒井:
ただ、フタをあけてみたらTwitterでも好感触だったし。驚いたのが、女性からの声も多かったこと。もともと買ってくれる人の男女比は9:1くらいで考えていたのですが、実際は5:5くらいでした。かわいい、そしていいものと思ってもらえたら、2万円とか出して買ってくれる女性もいる。それが今回の大きな気付きでした。

下地:
あとから言うと「本当かよ」みたいな感じはありますが、じつは女性にも受け入れられるんじゃないか、という期待はあったんですよね。メンズサイズの古着をダボッと着てる女性のファッションもトレンドじゃないですか。だから「両方いけますよ」的な見せ方にしていて。完全に狙っていた…というと言い過ぎかなぁ(笑)

※…6月18日に少量再入荷予定

人とカブらない「価値」

――完売しているものも…ということは、もっと製造を増やしていく?

下地:
あまり流通量を増やすつもりはないです。アロハって、ユニークな柄であることがアイデンティティみたいなところもあるし。人とカブりまくるのはイヤだなって思うんです。だから今回のものも再販する予定はないし、今後も小ロット展開を軸に進めていきたいですね。

酒井:
そういうと聞こえはいいけど、「初めて」ということで塩梅がわからず、ただただ、少なく作りすぎた(笑)

下地:
それは本当にそう(笑)やっぱりある程度、枚数は売っていかないといけないですよね。そうしないとただの趣味みたいになってしまう。バランスはちゃんと見ていきたいです。

人生を、気持ちよく、自由に楽しむ人たちへ

――これから『Eanbe』はどういったブランドを目指す?

酒井:
それでいうと『Eanbe』を着ていると「気持ちよく人生を楽しんでる」とか、消費に流されるんじゃなくて「自分の感性で自由に生きてる」という感じを代弁してあげたくて。だから「これを着ている人たちって自由だよね」みたいなブランディングはしたいですね。

あと僕個人で言えば、人からどう思われようが、自分たちが心から誇れるものを世に出そう。そういう思いでやっています。

これまでの僕は「まわりからどう見られるか」ばかり気にしてしまっていました。飾ってたんですかね(笑)でも、それって本当にダサいなって。だから『Eanbe』にしろ音楽にしろ、これからはそういうものを全部取っ払って、自分の感性そのものをアウトプットしていきたいです。

下地:
僕としてもブランドを本気で事業としてやっていくつもりです。最初からガチ。ただ、ブランドの成功は、金銭的な成功じゃない。理想的なライフスタイルが実現できれば、成功だと思います。

あとは『Eanbe』が大切にしている「いい気分だな」が感じられる人が増えていったら最高ですよね。これって自分の中での喜びだし、成功なのかもしれない。もちろん継続していくためにはお金を稼ぐことも必要です。そのあたりは、どうしていこうかな。

でも、まぁこれから夏が本番で。アロハが似合う「いーあんべぇ」な季節を、まずは楽しんで、ぼちぼち考えていきます(笑)

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撮影協力:小杉湯


編集 = 白石勝也
取材 / 文 = 大塚康平


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