「いい企画書」ってどうつくる?映画プロデュースから作詞活動まで、マルチに活躍するコピーライター直伝、思わず相手が感動してしまう「伝わる企画書」の作り方をご紹介します。そもそも「いい企画」って?どうやって企画書に落とし込んだらいいの?徹底解説いただきました!
※本記事は、大人のための街のシェアスペース・BUKATSUDOにて、コピーライターの阿部広太郎さんが主宰する連続講座「言葉の企画」の模様をキャリアハックにて再編集したものです。
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企画書というと、どうしても「書き方」や「フォーマット」に目がいってしまいがち。思わず相手が「ぜひやりましょう!」と大きくうなずくような、良い企画書はどうしたらつくれるのでしょう?
これまで数々の企画に携わってきた阿部広太郎さんは、「フォーマットを埋めていく企画書は伝わらない」という。
企画書をつくる前の段階、「企画づくり」にこそエネルギーを注ぐ。そもそも「いい企画とはなにか」、企画の基本となる考え方から、講義はスタートした。
企画生のみなさんには事前に、「本当にやりたいと思う企画書を出してください」と課題を出しました。全員の企画書に目を通して思ったのは、「これ、この人の本当にやりたいことなのかな?」って。
その企画を、なにがなんでもやりたい。絶対にやったほうがいい。そんなふうに思えていますか?企画者であるあなた自身が、ワクワクしているでしょうか。
企画書をきれいにまとめたところで、企画に熱がなければ、相手にはなにも響きません。もちろんロジックも非常に大事です。だけど、規定の条件やフォーマットをただ埋めていくような企画書って、少し説教臭いというか、おもしろみに欠けますよね。
うまく言葉にしきれなくても、思わず前のめりになる「楽しさ」や「おもしろさ」が企画書に練り込まれているかどうか。言い換えれば、企画書に熱や愛を込めるということです。
実際に体験してみてここが良かったとか、ここが響いたとか、自分が感じたこと、動いたこと、つまり感動を言葉にしていく。自分の中にある本当の気持ち、本音こそが、強いメッセージになります。本音という嘘のない気持ちに辿りつくのは簡単なようでいて難しい。でも、それがあってはじめて、企画を届ける相手に、「ぜひやるべきです」「やりましょう」というような気持ちが、きちんと相手に伝わっていきます。
「正論より楽論を」というのは、僕がつくった造語なんですが、常に企画を考えるときに意識しています。
自分の好きなこと、やりたいことであれば、ワクワクできるかもしれない。けれど、もしもそうなれないときはどうしたらいいのだろう?阿部さんが実践しているのは、「企画が実現した後を妄想する」こと。
たとえば、自分の出した企画書でクライアントの社内でざわついて、評判になってほしいな、とか。今回の企画をきっかけに自分の好きなアーティストの相談がくるかもしれないな、とか。自分ごとにできるスイッチにたどり着くまで連想すると、原動力につながっていくと思います。
仕事って、「もしかして」のリレーだと思うんです。皆さん一人ひとりのキャリアだって、いままでの仕事の積み重ねによってできている。ひとつの仕事が、次の仕事に連れていってくれる可能性だってある。小さな伝説を、目の前の現場で起こしていくことが大事だと思います。
いい企画って具体的にはどう考えたらいいの?阿部さんがいつも実践している、5つのステップをご紹介します。
①企画する対象は「何者?」
まず最初に、「企画する対象は何者なのか」を考え、言葉で捉えることからはじめましょう。
たとえば、あるアイドルのキャンペーンを担当したとします。最初に考えるのは、「その、アイドルは何者なのか?」ということです。
真っ先に思いつく「枕詞」を疑いましょう。「歌って踊れる」とか「かわいらしい」とか、そういった誰もが分かることを、あなたが言っても仕方ありません。その奥にある、そのアイドル「だからこそ」の魅力はなにかを、自分なりに掘り下げて、言葉で捉えることが大事です。そうでなければ、通り一遍等の企画になってしまいます。
②調べまくる。足で稼ぐ。
ただ、自分の頭の中だけで考えても、なかなか企画の鉱脈にはたどり着きません。
僕は時間の許す限り、徹底的に調べ尽くすようにしています。ネットの情報はもちろん、過去の作品には全てに目を通す。
なかでも一番大事にしているのは、「足で稼ぐ」ことです。企画の対象がアーティストだったら実際にライブを見に行ったり、企画の対象が商品であれば実際に使ってみたり。体験は効率が良いです。五感をフルに使ってインプットできるから。その先に、一歩も、二歩も踏み込んだ魅力が見えてきます。
③「今」という時代を捉える
発掘した「魅力」の、どの部分を押し出したら勝負できるのか。スポットライトをどこに当てるべきなのか。その見極めをするための手がかりは「時代」にあります。
時代をとらえるというのは非常に難しいですし、それが必ず合っているとは限らないかもしれない。でも、「私は今、時代感をこう捉えています」と仮説を言語化する。だから、このポイントは魅力的で、他と比べて勝負できるんです!と伝えていきましょう。
④誰の人生を救える?
ここからは、発掘した「魅力」をどう届けていくのか、という視点で考えていきます。
考える助けになる問いは、「その魅力は、誰の人生を救えるのか?」です。救うと言うと、大袈裟に感じるかもしれません。その魅力は、どんな人の力になれるのかを想像します。届けるべき相手はどんな悩みを抱えていて、どんな状況に置かれていて、どんなことに関心があり、どんなことにうれしいのか。届ける相手の輪郭を明確にしていきましょう。
⑤企画をプレゼンする相手はどんな人?
企画を考えるとき、プレゼンする相手にも思いを馳せてほしいんです。
企画書を相手に渡したとき、その相手の方がどう見てくださるのか。相手の方も当然ながら、一生懸命に考えています。
たとえば、駆け出しのアーティストのプロモーションだったら、その企画を意思決定するマネージャーの人たちのことを考える。年がら年中ずっと、売れるためにはどうすればいいかというのを、めちゃくちゃ考えているわけです。
「うわあ、こういうことだったのか!」と、相手が大きくうなずくメッセージはあるかどうか。言いっぱなしで終わるのではなくて、実現までを見据えて企画に落とし込まれているか。プレゼンをしにいく前に、一呼吸おいて企画を見直して、自問自答しましょう。
講義は終盤、企画書の作り方へ。阿部さんの企画書には、いわゆる企画書の「フォーマット」というのは存在しない。すべては、いい企画をきちんと相手の心に届けていくために。1ページ1ページの構成、言葉選びをこだわり抜く。阿部さんは企画書に落とし込む際、3つのことを心がけていることを紹介してくれた。
①「合言葉」になるタイトルを
企画のタイトルは、これから企画を実現していく上で関係者の「合言葉」になります。「よし、やろう!」と、背中をドンと押されるようなタイトルを考えましょう。人は長い言葉や文章は覚えられないので、短く強いものがオススメです。
②その企画書は誰に向けて書いている?
その企画書は誰が読むのか、そして手渡されていくのか。明確にイメージしながら書きましょう。この人に向けて書く、という意識こそ、向かう先のヤジルシが強くなります。
③「ひとりプレゼン」で、磨き上げる
パソコンの画面上で、にらめっこしてスライドをつくっていても、伝わる企画書にはなりません。独り言でも、脳内でもかまいません。実際にプレゼンを何度もしてみて、人前で話すことを意識すると、「この言葉よくわからないな」とか「このページでなにが伝えたいんだっけな」と、改めて気づけることがたくさんあります。
「長い文章書くときは、音読しましょう」ってよく言われますが、企画書も同じ。いろんな方法で検証していくと、よりブラッシュアップしていけます。
取材 / 文 = 野村愛
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