「ネーミング」のプロでもあるコピーライター。商品名、サービス名、場所・スペースの名称、書籍タイトル、資料の見出し…彼らは何をどう考え、ネーミングしている? その極意を3回に分けてお届けします!
第1回 ネーミングは「ヒアリング」から始めよう
第2回 押さえておきたい3つのチェック項目
第3回 記憶に残るネーミングの5つの法則
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※本記事は、大人のための街のシェアスペース・BUKATSUDOにて、コピーライターの阿部広太郎さんが主宰する連続講座「言葉の企画」の模様をキャリアハックにて再編集したものです。
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ビジネスのさまざまな場面で直面する「ネーミング」。そもそも「いいネーミング」とは?コピーライターの阿部広太郎さんは、前提となる考え方を教えてくれた。
いきなりネーミングを考えはじめる前に、おすすめしたいのが「そもそもなぜ名付ける必要があるのか?」をしっかりと考えることです。
「そもそも」を考える。言い換えれば、「意志」を見つけることです。
「その商品はどうして誕生したのか?」
「なぜ世の中に必要なのか?」
「意志」こそが、名付けの土台になります。名付けには、モノ・コトに輪郭をはっきりさせ、生命力を与えていく力があります。大量生産・大量消費の時代、「モノ」があふれている結果、「名前」すらも溢れかえっています。だからこそ、「なぜ名付けるのか?」という問い掛けはネーミングの手がかりとなるはず。
具体的にイメージを掴んでいただくために、僕の仕事を例にご紹介させてください。
2016年春、恵比寿にスタートした「恵比寿じもと食堂」のネーミングを担当しました。恵比寿新聞の編集長・高橋ケンジさんから相談されたのがきっかけでした。
現在、月に2回、渋谷区恵比寿にある「景丘の家」で、地元の方々と一緒にごはんをつくり、1食500円で食事を提供しています。
いわば「こども食堂」ですね。
共働きの家庭が増えているなか、子どもたちに向けて安い価格で食事を提供する取り組み。現在、さまざまな地域で活発に行われています。「こども食堂」を恵比寿につくりたいと思った末岡真理子さんが高橋編集長と出会い、僕に名前の相談をしてくださったんです。
末岡さんと子どもたち。恵比寿じもと食堂の様子。
「こども食堂」という名前を、皆さんもニュースで聞いたことがある人も多いと思います。普通に名付けを考えるのであれば、「恵比寿こども食堂」でもいい。
それではなぜ、僕にバトンが回ってきたのか?
このプロジェクトに込められた「意志」を知ることからはじめました。調べられることは、しっかり調べます。高橋編集長からお話を伺ったことや、末岡さんのfacebookでの投稿でわかったこと。
つくろうとしているのは「子どもの貧困をなくすための場所」ではなく、「21世紀型のご近所づきあいをする場所」。親も子も一緒に食卓を囲んで、近くに住む人同士で知り合って、隣近所で助け合えるような関係性をつくれるような場にしていきたい。そのことがひしひしと伝わってきました。
その考えに触れた時、ハッとしました。「こども食堂は、地域の人間関係に灯りをともしていく場所でもあるんだ」と。
取り組みの根底にある志にふれたからこそ、名付けの「核心」を掴むことができました。
いくつか提案させていただいて、最終的に決まったのが「恵比寿じもと食堂」でした。
お二人がこれからやろうとしていることは「地元」をつくる活動なのではないですか、と伝えたんです。地元というと自分が生まれ育った街のことを一般的に指します。けれど、今住んでいる街で、自分のことを知る顔馴染みの人がどんどん増えていけば、そこはその人にとって帰るべき地元になるはずです。
いいネーミングには、必ず「意志」がある。その意志にふれる。ここを大切にしてみてほしいと思います。
阿部さんがネーミングにあわせて作成したステートメント。
第2回 押さえておきたい3つのチェック項目
第3回 記憶に残るネーミングの5つの法則
撮影:小田周介
文 = 野村愛
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