「ネーミング」のプロでもあるコピーライター。商品名、サービス名、場所・スペースの名称、書籍タイトル、資料の見出し…彼らは何をどう考え、ネーミングしている? その極意を3回に分けてお届けします!
第1回 ネーミングは「ヒアリング」から始めよう
第2回 押さえておきたい3つのチェック項目
第3回 記憶に残るネーミングの5つの法則
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※本記事は、大人のための街のシェアスペース・BUKATSUDOにて、コピーライターの阿部広太郎さんが主宰する連続講座「言葉の企画」の模様をキャリアハックにて再編集したものです。
*「言葉の企画」の記事一覧はこちら
「記憶に残るネーミングには、法則があります」こう話をしてくれた阿部さん。これまでの実践から編み出した、強いネーミングの法則を5つ紹介してくれた。
【1】2つの異なる単語を組み合わせて、新しい単語を作る
2つの異なる単語を組み合わせることで、新たな意味を持つ単語が生まれます。
たとえば、「感想文」と「文庫」を組み合わせて、「感想文庫」というネーミングをしたことがあります。「感想で人をつないでいく図書館」のネーミングで、読んだ人が最後のページにあるカードに感想文を書き加えていくんです。まるで伝書鳩のように、感想で人と人とがつながり、本を読むきっかけになるのが「感想文庫」です。
ただ純粋に、2つの言葉をくっつけているわけではありません。言葉と言葉が重なる「のりしろ」も意識しています。「感想文」と「文庫」。重なる「文」という言葉がのりしろになることで、読んだときにすっと心地よく入ってきます。
【2】みんなが知ってる強い文脈を
歴史的な事実であったり、故事成語やことわざなど。「みんなが知っている強い文脈」をベースに、1文字ずらしたり、単語をずらすことで新しい響きが生まれます。
たとえば、企画生の原田龍さんは、「顔や二の腕、お腹周りのたるみをなんとかすべく、夏前に急いでジムに駆け込む女性の様子。毎年のように『夏までに◯kg』とつぶやくのが特徴」という事象を「飛んでジム行く夏の女子」と名付けてくれました。
これは、「飛んで火にいる夏の虫」をベースにしています。「火に」を「ジム」に、「虫」を「女子」に、言葉をずらすことによって、新しい意味合いが生まれている。非常に分かりやすく、そしてありそうだなと思えた言葉でした。
みんなの知る文脈をいかに引っ張ってくるか。ここが重要なポイントです。
【3】見立てて名前をつける
何かの形に似てるなという「ビジュアルの印象」に発想を得て、事象をその状況に見立てて名付けるアプローチです。
企画生の村上美里さんは、「講演会などの質疑で、 1人が手を挙げるまで時間がかかるけど、そこから一気に増えてタイムオーバーになる」という事象を「しつもんニョッキ」と名付けてくれました。これはまさに、ニョッキのゲームのビジュアルに見立てて名付けることで、聞いた人の中でイメージを広げることができています。
【4】すでにある名前に違う響きをもたせる
企画生の定作沙紀さんは、「飲み会で人数が多い、席が遠くて乾杯にいけない人への乾杯したい気持ち」という事象を、「ワイファーイ」と名付けてくれました。みんなが知っている「Wi-Fi」には、ネットワークに繋がることで「遠くの人に届く」意味合いがあります。その響きを、乾杯の場で発することで、乾杯したいという意味をもたせられますよね。
【5】真逆の言葉を同居させる
一つの言葉の中に、「違う矢印」を持った言葉を同居させると、その言葉の奥行きが広がることがあります。
企画生の松本彩さんが考えた、「進撃の老人」という名付けがそうです。この言葉からは、ゆっくりとした動作を思い浮かべる「老人」の方が、「進撃する」ということはどういうことだろうと、想像が広がります。通常であれば相容れない言葉が同居していることで、そこから見えてくる景色が広がってくる。2つの言葉の距離感が、非常に面白いなと思いました。
僕が以前、企画した番組のサブタイトルに、「優しい衝撃をもたらすダイバーシティ」と名付けました。「優しい衝撃」というのはこの真逆の言葉を同居させる考え方からくるものです。
最後に、阿部さんが「名付け」を行う上で大切にしている姿勢についてお話してくださいました。名付けには力があるからこそ大切にしたいことです。
名付けは、生命力を与えることです。何を名付けるか?それは僕らが決めることができます。ネガティブなことをわざわざ名付けて、広めることはしなくていいです。対象への敬意を忘れずに、どうすればポジティブな思いを込められるかを考え続けたいと思います。
もちろん名付けがどう世の中で受けいれてもらえるかどうかは、実際に世の中に出してみないとわかりません。反響をみながら、丁寧に検証を続けることを心がけています。
人が洋服を選び続けるように、よりフィットする言葉をまとわせることはできないか、もっといいものはないのか。ああでもないこうでもないと考え続ける。試行錯誤の数だけ、いくらでも言葉は磨かれていきます。
誰かに話してみたり、プレゼンしてみたり。一度ある程度カタチになったら、自分の考えていることを伝えることがオススメです。
第1回 ネーミングは「ヒアリング」から始めよう
第2回 押さえておきたい3つのチェック項目
撮影:小田周介
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文 = 野村愛
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