2019.09.27
ライバルに差をつけよう! コピーライター直伝「いい目立ち方」をする技術

ライバルに差をつけよう! コピーライター直伝「いい目立ち方」をする技術

「悪目立ちはしたくないけど、尖らせたい」「自分のアウトプットを印象づけたい」…一体どうすれば? こんな悩みについて、コピーライターの阿部広太郎さんと考えました。彼が語ってくれたのは「ライバルに差をつけ、いい目立ち方をする技術」でした。

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※本記事は、大人のための街のシェアスペース・BUKATSUDOにて、コピーライターの阿部広太郎さんが主宰する連続講座「言葉の企画」の模様をキャリアハックにて再編集したものです。
(「言葉の企画」の記事一覧はこちら)

そこに「企て」はある?

阿部広太郎さんは、過去、いくつもの「公募」の賞にチャレンジしてきたコピーライター。広告賞に限らず、さまざまなコンテストに挑戦したのだとか。それはクリエイターとして自信をつけるためでもあったといいます。

2012年ですね、『NAVERまとめ』さんが主催する編集コンペ「プロフェッショナルを唸らせろ。」に挑戦したことがありました。

これはお題にあわせた「まとめ」の編集力を、その後noteもはじめる、ピースオブケイクの加藤貞顕さんなど第一線で活躍する編集者たちが審査するというもの。このコンペを通し、私が大切だと学んだのは作品をつくる前の「企て」です。

じつは僕、それまで広告賞以外のコンテストに参加したことがほとんどなかったんです。前提として、賞にエントリーする理由は、こんな考えを持っている自分という存在を見つけてほしいから。そして、思い至ったのが「コピーライターがコピーライターのたくさん集まる賞に参加しても目立たないんじゃないか」という気持ちでした。

当時、僕はコピーライターを自分の中で「言葉を扱う商人」と定義していて、だとした時に、広告の領域にとらわれずに、もっと幅広い言葉の仕事にチャレンジしていきたいという気持ちもありました。

なので「広告」の賞だけじゃなく、手がぎりぎり届く範囲にあるさまざまなコンテストに参加してみるのもいいなって思ったんです。結果がどうなるかはわからなくても、トライすることはできるなと。

今まで参加していた広告賞では、自分が所属する業界ですから、とにかく過去の名作を学びつつ、「ホームランか、総スカン、どちらかを目指す。あっと驚く、いいものを作ってやる」というギラついた気持ちで臨んでいました。

しかしながら、いつもと違うフィールドだとそもそもの“戦い方”が分からない。闇雲に取り組んでいては絶対にその道の専門家たちには敵いません。どう戦うべきか、どうしたら審査員の記憶に残るか、初心者の自分だからこそ何ができるのか、いつも以上に真剣に考えました。

まず、NAVERまとめの現状を分析。あるテーマに基づいて、いくつかの作品をピックアップしていくオムニバス形式には絶対にしないと決めました。最終的にたどり着いたのが「ただのまとめ記事のように見えて、読み進めていくとストーリーになっている」というアプローチです。

オムニバスではなくストーリーをつくる、という企てのもと、『これは映画素人の男が彼女に捧げた映画の物語』という、まとめ記事をつくりました。

真新しさが評価されて、結果、うれしいことに作品は入賞。その後、授賞式にて、ある審査員の方に推していただけたと知りました。たくさんの作品が集まる中で、誰かの特別になれるってすごく大切だと思うんです。

闇雲にいきなりつくりはじめるのではなく、作戦から考える。まずはそこから企画力を発揮する。この視点を持つことで、自分でも思っていなかったものを作れるし、想像を越えられるという、大きな発見でした。

募集要項に「裏道」は隠されている

作戦を立てる上では、真正面から戦わずあえて“裏道”を探すことも大事だと話す阿部さん。ご自身の経験から、その重要性を解説してくれた。

昨年、ミルボン×noteのコラボ企画「#美しい髪 投稿コンテスト」に作品を投稿したのですが、募集要項にこう書いてあったんです。

“「美しい髪」をテーマに、noteの投稿をお待ちしています。漫画やイラスト、コラム、エッセイ、小説など、形式は問いません。プロ・アマ問わずぜひ応募してください。”

これを見たときに、漫画やイラスト、コラム、エッセイ、小説を書いたらライバルがたくさんいるだろうなと思いました。着目したのは「など」ですね。もし誰もやらないことをやったら、それだけで一番です。選ばれる可能性が高まるかもしれない、って。だから、自分なりのテーマソングというか、「美しい髪」をテーマにした曲を作って応募したんです。

また、「美しい髪」というテーマは多くの人が「女性から見た女性の美しい髪」にトライするんじゃないかと。それで僕は、「男性から見た女性の美しい髪」を着眼点にして作詞をし、『運命の黒い糸』という曲を仲間と完成させました。

結果的にグランプリはとれませんでしたが、入選することはできました。何より自分がとても好きな作品になって。800以上ある応募作品をみても、音楽にトライしているのは僕ぐらい。ゴールに向かってたくさんの人が同じ道を走っている、そこで立ち止まって道を探すと、抜け道が見つかる。そうすることで、そんなのアリ?な方法が見つかるんだなと思いました。

他のコンテストにも応募したり、受賞作品をチェックしたりして思ったんですが、選ばれる作品って、「王道を追求する」か、「裏道を発見する」か。極端に言えばこのどちらかしかないんじゃないかなと。

というのも、コンテストって審査をしなければいけない。僕も審査員を担当した経験があるのですが、選ぶ側にも“理由”が必要なんですよね。そして理由のパターンって、そんなにいくつもあるわけじゃないなと。

真正面からいくなら、誰が見てもすごいと思わせるクオリティーが必ず求められる。それにライバルが多い手法を選んだ瞬間に、「相手の記憶に残る」ということの難易度はどうしても高くなってしまうんです。そういった意味でも、裏道を企てる力はつけておくといいと思います。

今回の講義の課題は、「映画をテーマに、“あなたなりのやり方”で『NAVERまとめ』を作ってください」というもの。阿部さん含め多くの参加者が「いい!」と評価したのが、鈴木勇輔さんの『映画のタイトルをまとめて『桃太郎』を書いてみた。』というまとめ記事。「◯◯な人におすすめの映画10選」「◯◯で観たい映画5選」といった記事が多い中で、明らかに異彩を放っていた。

「自分ならこうする」を重ねよう

最後に阿部さんは、他の人とかぶらない戦い方や作品を生み出すためのトレーニング方法を教えてくれた。

皆さん20年、30年と生きてきて、毎日毎日たくさんのものに触れていますよね。これが面白いとか、つまんないとか、あの人に勧めたいとか、こういうのだけは許せないとか…受け手として、もう数え切れないほどの感情を味わってきているのではないでしょうか。

僕たちは気づかないうちに、興味を持つ・持たないを瞬時に判断している。たとえば、面白くないと思ったらスマホをスクロールする手がはやくなっていたり。受け手としての自分って、すごく正直なんですよね。

つまり、僕たちは作り手のプロである前に、「受け手のプロ」だと思うんです。

だからこそ、新しいものに触れるたびに「自分ならこうする」「こうしたほうがもっと面白くなる」を考えることが「作り手のプロ」への第一歩になるんじゃないかなって。

結局自分自身が作り手になるのだから、「自分の“いい”という感情」に託していくしかないと僕は思います。

撮影:小田周介


文 = 長谷川純菜


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