2019.10.17
テクニックを捨てよ、自分を紡ごう。コピーライター 阿部広太郎さんと考える「書くこと」の本質

テクニックを捨てよ、自分を紡ごう。コピーライター 阿部広太郎さんと考える「書くこと」の本質

コピーライターの阿部広太郎さんが、約半年間にわたって行なってきた講座『言葉の企画2019』最終回の様子をお届けします。そこで語られたのは「テクニック」のことではありません。「言葉を選ぶことは、その人の生き方そのものを選ぶこと」。当日の熱量そのままに、阿部さんからの魂のメッセージをお届けします。

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世の中は、誰かの「テクニック」で埋め尽くされている

仕事術、考え方、成功例…

誰かのテクニックを見た時「これが正しいやり方なんだ」「自分が間違っていた」と焦ることがある。

「こうならねば」「この人の思考と行動を真似しよう」となんとか取り込んだところで、息苦しく何も楽しくない。

そんな時、コピーライターの阿部広太郎さんのある言葉と出会った。

「あなたは何者にもなれない。あなたは、あなたになるんです」

なんだか救われた、と感じた。

「自分」になるために、何からはじめればいいのか。どうやって「自分」になっていくのか。

6ヶ月にわたり開催された『言葉の企画2019』を締めくくる最後の講座、阿部さんの言葉に耳を傾けてみよう。

言葉を選ぶことは、自分の生き方を選ぶこと

今からお伝えする言葉は、一説によるとマザー・テレサが言ったとされているものです。

すごくいい言葉ですよね。ただ、1つだけ。この言葉に喧嘩を売る訳じゃありませんが、僕は「思考」よりも先に、「言葉」があると思っているんです。つまり、その人の持つ言葉というものが、その人の暮らしや、その先のあり方すら変えてしまうんじゃないかと思っています。

思考をしている時、ぼーっとなにかを思っている時も、心の中では言葉を使っていると思うんです。独り言のように。たとえば、「うわー今日だるいなぁ…」とテンションが上がらない時、落ち込むことに身を任せずに、「いっそ今日は充電する日にしよう」とか、「それでも1つだけはやれることをやろう」とか、言葉で思考の行き先を見つけてあげられると気分がだいぶちがいます。

それってコピーライターだろうがプランナーだろうが関係なく、すべての人にとって同じこと。言葉を選ぶことは、生き方を選ぶことにつながっていくと思うんです。

自問自答が、言葉を濃くする

言葉について考える時に大事なこと。その一つが、自分が「いい」と思うものを自覚することだと考えています。

人って、日々ものすごい数の選択をしながら生きてます。今着ている服も、本屋で手に取る本もそうで、無自覚に「これはいいな」「これは好きじゃないな」という選択をしていると思うんです。

「なぜだろう?」と問うことが重要だと思うんです。答えに目を向けるその前に、問うことからはじめたい。どうしてそれを選んだのか。何がいいのか、何に惹かれて、どこをおすすめしたいと思ったのか、自問自答していく。いちいち問うこと、そして答えることは、面倒でもあります。でもそこに、自分なりの美学や価値観、判断基準というものが隠れているはずです。

自問自答の数で、その人が持つ言葉の密度が変わってくるのではないかと思います。

「自分」という他人を育てていく

「自問自答」の中に「自」って2回出てきますよね。問うのも答えるのも、自分次第。何かを考える時に、「どこまでいっても自分という存在を抜け出すことはできない」と思うんです。

自分に自信がない、ネガティブな自分がいる、悪い方向に考えてしまう…など、これまでたくさんの相談を受けてきました。すごくわかります、僕もかつてそうだったから。でも、自分という存在を、自分から切り離して考えられるようになってから気持ちが楽になれたんです。

「自分」という他人を育てていく感覚ですね。甘やかしすぎず、厳しくしすぎず、どうすれば「自分」という他人が前を向けるのか、考えてみるんです。今ここで楽をしたい自分もいるけど、目標に向かってがんばるぞと思っていた前の自分も知っている。そんな時、どう折り合いをつけて選んでいくのか。

それは客観的に、自分を他人として見るとも言えます。俯瞰するために、たとえば、過去の自分のツイートを遡ってみるのもその感覚を知る一つの手だと思います。

「こんなことを思っていたのか」

「この言い方、言葉尻が強くてあまり好きじゃないな」

「今の自分だったらこういうふうに伝えたいな」

1年前のツイートでも、何かしらの変化はきっとあるはずで。自分なんだけど、自分じゃない感覚ってありますよね。

自分の発言を、他人のものとして見る感覚があると、むしろ自分が浮き彫りになっていく感覚があると思います。

人は「自分の答え」を生きるしかない

「自分」

結局、すべてここに行き着くという思いがあるんです。

今って、あらゆるところで「誰かの答え」が語られていると思います。セミナーだったりトークイベントも毎日開かれている。「こういうふうにやったら上手く行った」という答えって、みんなすごく知りたいですよね。

「他問他答」を聞きながら「自分ならどうするか?」をたぐり寄せてほしいんです。本当に考えなくちゃいけないのは「自分の問い」「自分の答え」なんじゃないかなと。なぜなら、いま自分に起きている状況は、世界で「自分」の目の前にしかないから。

誰かの答えが、自分の目の前の仕事や生活、人間関係にすべて当てはまるとは限らない。

だからこそ、自分が心の底から信じられる、本当にいいと思う答えがあるなら、どんどんやるべきだし、つまづいたらまたそこで問うてみればいい。

言葉を選ぶというのは、「こういう風に文を、コピーを書きましょう」というテクニックの話ではなくて、どう生きるかを選ぶという話。何者にもなれない。なる必要もない。ほんとうに納得した人生を生きるためにも、自分で問い、自分の答えを言葉にして、あなたはあなたになっていく。そのことだけは忘れずにいてほしいと思います。

  

※本記事は、大人のための街のシェアスペース・BUKATSUDOにて、コピーライターの阿部広太郎さんが主宰する連続講座「言葉の企画」の模様をキャリアハックにて再編集したものです。
(「言葉の企画」の記事一覧はこちら

撮影:小田周介


文 = 平野潤


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