2019.08.21
ボツ企画でも出しまくれ。放送作家・竹村武司の企画術

ボツ企画でも出しまくれ。放送作家・竹村武司の企画術

『山田孝之の東京都北区赤羽』を皮切りに、謎すぎる番組をぞくぞくと企画し続けてきた放送作家・竹村武司さん。彼はなぜ、ぶっとんだ企画を連発し、カタチにできる?そこには「マジメすぎる仕事の基礎」があった!?

【プロフィール】竹村武司│放送作家
広告代理店を経て、放送作家の道へ。『山田孝之の東京都北区赤羽』『山田孝之のカンヌ映画祭』『山田孝之の元気を送るテレビ』『植物に学ぶ生存戦略 話す人・山田孝之』など、山田孝之の出演作品を手掛ける。現在は、ドラマ『サ道』の脚本、『キッチン戦隊クックルン』のアニメ脚本、『BAZOOKA!!!』『天才てれびくんYOU』『世界さまぁ〜リゾート』、『痛快TVスカッとジャパン』、『あいつ今なにしてる?』などの構成を担当している。

お偉いさんの “声なきざわざわ” で、手応えを感じた

シュールすぎる深夜番組『山田孝之の東京都北区赤羽』をご存知だろうか。

芝居でスランプに陥った山田孝之が赤羽へと移住。地元住人たちとの交流を通して「崩壊と再生」を描くドキュメンタリー(?)。

台本はあるのかないのか…出演者たちは仕込みなのか…多くの謎を視聴者に残し、番組は幕を閉じた(視聴者の好評を受けて『山田孝之のカンヌ映画祭(2017)』『山田孝之の元気を送るテレビ(2017)』が実現)。

…と書いたが、これだけの説明ではまったく意味がわからないだろう。

いずれにしてもこういったある種、狂った企画は当時、どのように受け入れられたのか?

『山田孝之の東京都北区赤羽』構成に携わった竹村武司さんは、当時をこう振り返る。

「僕と山田孝之、そして監督だけは、最初からいけると信じていました」

手応えを感じたのは、第1話の関係者を集めた試写会。

「忘れもしないですね。デカい会議室で、局のお偉いさんが十数人集まっていて。上映が終わってまわりを見渡すと、誰一人笑っていないんです。声もなくざわざわしてる感じ。笑ってたのは僕と山田孝之と監督だけ。その足で飲みに行って“これは新しい物を作った、やったな!”と。本当に新しいものって絶対賛否両論なので。ポカンとしてる人がいないと、新しいものって言えないんです。」

最高の企画とは、どれだけ自分たちが楽しめるか、それを世に送り出せるかなのかもしれない。…でも一体どうやって? 竹村さんは企画術を明かしてくれた。

気の合うディレクターを味方につける

企画が通るか通らないか、ここってけっこう運みたいこともあると思うんですよね。

『山田孝之の東京都北区赤羽』でいえば、たまたま通す権利のある人が味方になってくれて、おもしろさをわかってくれた。あと『勇者ヨシヒコシリーズ』の大ヒットがあったので、テレ東的に山田孝之案件を邪険にしにくかった。ホントにただそれだけ(笑)正直狙ってどうにかなるものではないのかもしれません。

ただ、いっぱいいるディレクター、演出家、プロデューサーたちのなかで「自分の企画で笑ってくれる人」がどれだけいるか。気の合う人は必ずいると思うんです。どこかにハマる人がいるはずだ、と信じて企画を出し続けるだけなんです。「自分を見つけてもらう」といったほうが正しいかもしれないですね。

実際、「会議にはハマらなかったけど、あの企画、個人的にはおもしろいと思ったんだよね」とあとから電話をくれる人がいる。そういう人を見つけたら、ぐいぐいすり寄っていきますね(笑)

放送作家の仕事は、ボツ企画を出しまくること

放送作家の仕事って「おもしろい企画を考えること」のように思われるのですが、僕は「いかにボツ企画をいっぱい出せるか?」だと思っていて。言ってみれば、僕らはボツ企画製造機なんですよね。

40個出しても全部ボツかもしれない。100考えても通るのは1個。そのまんま採用されることなんてほぼないわけで。とにかく「数」が必要で。

たとえば、じゃがいもが一個あるとして、誰も見たことがない変な料理を一個作れることより、じゃがいも料理のレパートリーを30個持っているほうが大事で。皮をむくのか、むかないのか。焼くのか煮るのかすりおろすのか。

どんどん企画を出せば、どんどんボツになる。ただ、その中で考える傾向が見えてくる。何でボツなのか、なぜ採用されたのか。

打率にしたら、すごく悪いかもしれません。でもまずは打席に立ってバットを振りまくる。採用されなかったからって、いちいち落ち込んでいる場合じゃないんです。

放送作家は、ディレクターの愛人みたいなもの

企画におけるポリシーとか、イズムみたいなものって、持っていてもいいんですけれど、むしろ「いつでも捨てられる柔軟性」の方が必要かなと思っています。作品とか番組って、基本的にディレクターのものだと思っているので。

放送作家って、たとえるならディレクターの愛人なんです。愛人なので、そのディレクターに呼ばれたら、そのディレクターが求めるフェチにならないといけない。「僕そういうフェチじゃないんで」って言っている場合じゃないんです。だから僕自身は、幅広く企画を出せることが必要かなと思ってやっていますね。

世の中で職人と呼ばれるようなタイプの作家もいます。コント職人、クイズ職人とか、一つの道を深く突き詰めていく人。ちょっとあこがれるんですけど、僕は全然そのタイプじゃない。一本太い柱があるというより、僕はパルテノン神殿。柱がいっぱいあって一戸の家が建つみたいなイメージです。

竹村さんが一週間で考えた企画。各局の番組企画や特番のネタ案。加えてCMやドラマの企画案から雑誌のゲラチェックまで、多岐にわたる。

スピードは質を凌駕する

もうひとつ、企画で大切なことは早めに出すこと。「スピードは質を凌駕する」という言葉もありますけれど、それは本当だと思ってて。

やることって膨大にあるわけですよ。どうせギリギリになることはわかってる。それなら早めにやって、すぐに出す。ディレクターも、早く企画をもらえた方がいろいろ考えられるわけですよね。

じゃあどうスピードをあげていくか。いつでもどこにいても、頭は常に半開き状態。いろんな頭のタブみたいなものが、いつでも開ける状態にする。たとえば、いろんな会議に出ているので、会議で色々揉んでいるじゃないですか。揉んでいると、違う番組の宿題だったり企画が思いついたりする。会議と会議の間で移動時間とかがあるのでそこで考えるものはばーっと考えてしまう。

それ以外の時間も、何かしらに触れて企画のヒントを探している気がします。移動時間も電車を使えば、本は読めるし音楽もラジオも聞けます。毎日本屋に寄るのも習慣にしていて。なにかしら本屋ってヒントが転がっている。息をすうように企画が考えられるようになれば、数も出せるし、ぜひ意識してみるといいかもしれませんね。

※本記事は、大人のための街のシェアスペース・BUKATSUDOにて開催されている連続講座、「企画でメシを食っていく」(通称・企画メシ)の講義内容をキャリアハックにて再編集したものです。
*「企画メシ」の記事一覧はこちら

撮影:加藤潤


文 = 平野潤


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