2019.10.18
「山里亮太の140」などお笑いライブを超満員にする男。片山勝三の企画術

「山里亮太の140」などお笑いライブを超満員にする男。片山勝三の企画術

元吉本興業のマネージャーで、現在はお笑いライブの「企画屋」として知られる片山勝三さん。「山里亮太の140」、「共感百景」など、業界注目のお笑いイベントを次々と手がけている。群衆を惹きつけるライブを企画する秘訣は「組み合わせの妙」。多くの人の心を惹きつける企画の極意があった。

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【プロフィール】片山勝三 (かたやま・しょうぞう)/ 株式会社スラッシュパイル 代表取締役

1997年吉本興業入社。今田耕司、極楽とんぼ、南海キャンディーズ、キングコングなどのマネージャーを担当。退職後、2009年6月11日に独立。「山里亮太の140」や「共感百景」など話題のお笑いライブを次々と企画しながら、犬山紙子などのマネージメントも手がける。スラッシュパイルは、「ボツ原稿の山」の意。

吉本興業マネージャー時代に培った、組み合わせの極意

僕はもともと吉本興業で今田耕司さんや極楽とんぼ、南海キャンディーズ、キングコングといったお笑い芸人を担当するマネージャーでした。

僕個人の意見ですが、誤解を恐れずに申しますと、お笑い芸人のマネージャーは「新しい仕事をゼロイチで生み出すことはできない」と思っています。芸人さんはいずれもすごいクリエイターたち。僕のような凡人が手を差し伸べる必要は基本的にはない。それよりも、その他の優秀な才能との新たな出会いをつくることこそがマネージャーの役割だと捉えています。

たとえば、南海キャンディーズの山ちゃん。当時は「ブサイク」とか「モテない」とか言われていましたけど、僕にとって南海キャンディーズはすごくスタイリッシュなコンビで、山ちゃんにはテレビの世界でいい司会者になる佇まいがあるように感じました。

もともと山ちゃんは、コントで役に入るというよりも言葉で勝負するタイプなので、テレビ局の優秀なディレクターの方には単純に売り込むだけではなく「どう取り扱ったら輝くのか」をプラスアルファで説明して……そこで共感してもらえたディレクターの方には何度も起用していただけて、長いお付き合いになっています。

今でも山ちゃんとは「司会者という生き方を意識したほうが他の芸人さんと差別化が図れるんじゃないか」という話をよくしていますよ。大橋巨泉さんじゃないですけど、いわゆる「MC」というニュアンスではなく「名司会者」として活躍するようになったらおもしろいと思っています。

僕にとって吉本興業での経験は、まぎれもなく大きな財産ですね。マネージャー時代は「吉本に人を残す」ことで貢献していきたいとずっと考えていて、実際に既に売れている芸人たちの考え方を僕は若手にフィードバックしていきたいと思っていました。

「芸人×○○」で笑いを増幅させる

基本的に、僕がイベントを企画するときのキーワードは「組み合わせ」です。

お笑いイベントというと、ネタとか寄席とかをイメージされがちですけど、もっとライブならではの楽しみ方を見出したかった。だから、単にネタを1本やるというより、お客さんが楽しめるような切り口や角度を組み合わせることは意識していましたね。

たとえば、2019年10月8日に開催したおぎやはぎ・矢作さんMCの「ブチコミ」というイベント。「大物はどこでキレるのか」といった限界のフレーズを検証する企画です。

もともとは一緒に考えている作家が、ケンドーコバヤシさんがご自身のラジオ番組内で「普段は温厚な野性爆弾のくっきー!が、唯一『ガシャドクロ』と言われると怒って背中を叩いてくる」という話をしていたのを耳にしたのがきっかけです。どんな温厚な人にも「言ったらアカンひと言」ってあるんだろうな、ギリギリのラインを検証してみたいな、と(笑)。

自分が日常生活を送るなかで思わず笑ってしまうことってありますよね。そういうときに「なぜ笑いが起こったのか」と原因を分析して、企画のタネにするわけです。

もうひとつ。切り口や角度を考えるうえでのポイントが人の組み合わせ、つまりキャスティングです。

絶対に納得いくキャスティングでやりたいので、妥協はしません。あるあるネタを共感詩として発表するイベント「共感百景」を不定期で開催しているのですが、直近はキャストの発表が本番1週間前だったんですね。

常日頃から「スラッシュパイルのイベントはキャスティングの発表も遅すぎるんだよ」というクレームをよくいただいて申し訳ないとは思っているんですが、ずっと議論を重ねていまして……。でも、見せ方としては「情報開示のタイミングで3人! 追加で2人!! ラストで3人!!!」と徐々に発表するよりも、全員揃えて発表する方が圧倒的にインパクトが強いんですよね。だから、納得する出演者を全員揃えるまでに時間がかかる。発表のタイミングも含めて、キャスティングにはむちゃくちゃこだわっています。

逆に、具体的な内容に関してガチガチに固めることはありませんね。ざっくりと線引きだけして、芸人にお任せしています。

劇場がお笑い芸人の「帰る場所」であるために

僕「天下を獲る」という言葉がすごく好きだったんですよ。芸人さんが「天下を獲る」ために芸能界に入るってすごく夢がある。

ところが、テレビ以外の楽しみ方が増えてきて、テレビの視聴率がゆるゆると下がってきた今の時代、考え方が変化してきています。昔は芸能界というひとつの高い山があって、頂上に明石家さんまさんやダウンタウンさんが君臨していて、みんなでそこを目指して登っていましたが、今は自分たちがそれぞれ山をつくる時代になってきている。高かろうが低かろうが関係ない。誰もが平等に挑戦できて、評価される時代にはなってきています。

テレビの倫理観が強まって、芸人との相性も決していいとは言い切れない時代だからこそ、ライブの果たすべき役割は大きい。ライブ、つまり劇場だけは何があっても芸人さんを受け入れる場所でありたいと思います。それが劇場の「優しさ」ですよ。

ただ、ライブだけで食べていくことには限界があります。ステージの規模を大きくしたら稼げるかもしれないけど、音楽と違ってお笑いライブのベストなキャパは500人くらいなんですよ。公演数を増やしたとしても、動員数はそこまで多くはなりません。

今後は新しい取り組みにもチャレンジしていくべきだと思っています。内村さんやバカリズム、東京03、ナイツ……といったそうそうたるメンバーのライブに触れる機会が増えれば、もっと劇場に足を運ぼう、これからの若い才能にも目を向けてみようという人も絶対に増えるはずです。

結果として、お笑い業界全体の盛り上がりにつながると思うんですよね。今までのやり方だといつか限界に直面するので、より多くの方に笑いを楽しんでもらう方法を検討することが僕の役目だと思っています。

※本記事は、大人のための街のシェアスペース・BUKATSUDOにて開催されている連続講座、「企画でメシを食っていく」(通称・企画メシ)の講義内容をキャリアハックにて再編集したものです。
*「企画メシ」の記事一覧はこちら

撮影:友田和俊


文 = 田中嘉人
編集 = 野村愛


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時代は平成から令和へ。そして訪れる「2020年以降」の世界。2020年からの「10年」をいかに生きていくか。より具体的に起こすべきアクションのヒントを探る連載企画です。お話を伺うのは、常に時代・社会の変化を捉え、スタートアップと共に"一歩先”を見据えて歩まれてきた投資家のみなさんや、未来を切り拓く有志者のみなさん。それぞれが抱く「これから10年間で現実的に起こり得ること」と「新しい生き方」の思索に

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